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異端の継承者  作者: bunz0u
第二章
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悪魔の脅威

「まさかここまでとは…」


 レウスが攻撃、エトラが守りという形でビジルデーモンと戦っていたが、エトラはすでにかなり消耗し、その横では剣を構えるレウスも傷ついている。


「再生能力もかなり上がってます、深い傷でも一瞬で再生してますね」


 ビジルデーモンはその二人を見下ろしていたが、そこから攻撃は加えず、ゆっくりと地面に降り立った。


「お前達のおかげでこの体にも慣れてきた」


 そして、左右の手に氷と炎をまとわせる。レウスは剣を正面中段に構えると、半歩左に動き、エトラに視線で合図をした。エトラはうなずくと、右に一歩踏み出し、剣を下段に構える。


「モードアイス!」


 剣が振り上げられると、その軌道から氷の刃がビジルデーモンに向かって飛んだ。ビジルデーモンは一歩も動かずに、左手の氷でそれを打ち砕いた。


 レウスは地面を蹴り、そのままビジルデーモンの右手に回り込むように走りこむ。だが、ビジルデーモンはそれには反応せず、エトラから続けて放たれる氷の刃を左手だけで防ぎ続けている。


 そしてレウスがちょうどその斜め後方に到達した瞬間、炎をまとった右手が後方に振るわれた。炎は空中を高速で真っ直ぐ進み、レウスを貫こうとする。


「っ!」


 レウスは急制動をかけると同時に、剣を斜めに振り上げた。青い刃が赤い炎を切り裂き、その先端を霧散させた。それでも炎は伸びてくるが、そのままレウスは前に走り、炎を切り散らしながら進んでいく。


「ここだ!」


 エトラは振り上げていた剣を地面に突き立てると、手のひらを胸の前で打ち合わせた。


「ジャベリン!」


 エトラの周囲に十本の氷の槍が形成され、それが連続でビジルデーモンに向かって撃ち出された。最初の一本は氷の刃と同じように打ち砕かれたが、その衝撃はビジルデーモンの腕をわずかに弾いた。


 そうして残りの八本が次々と飛来し、ビジルデーモンの腕が完全に弾かれると、最後の一本がその胴体に突き刺さった。衝撃で体が後方に流れると、そこにレウスが走りこむ。


 魔剣は青い炎をまとい、ビジルデーモンの胴を薙ぎ払うようにして振るわれた。その一撃はビジルデーモンを真っ二つに切り裂き、その傷口から青い炎が広がって両方の半身を焼き尽くそうとする。


 しかし、一瞬で炎が吹き飛ぶと、次の瞬間には両方の半身は足りない部分を再生していた。


「分裂!?」


 エトラは驚きながらも剣を手に取り、攻撃を続行しようとしたが、それよりも早く片方のビジルデーモンが再生分裂した体を空に向かって放り投げた。


 それが頂点に達した瞬間、背後の空間が歪むと、その体は空中にとどまったまま、激しくバラバラに手足を動かし始めた。


 レウスとエトラはそれに危険を感じるが、二人が動く前にビジルデーモンは地面を右足で踏みつけ、そこから炎が広がる。


 レウスは素早く下がってそこから逃れたが、その直後、広がった炎がビジルデーモンを中心として火柱を形成し、空中の分裂した体も隠されてしまった。


「なんだ?」


 大きく跳躍しながら移動するアライアルは、目指す場所に立つ火柱に何とも言えない嫌な予感を覚えた。それを首を振って振り払うと、下を見て次の着地点を探そうとする。そこで、最高速度で走るパイロフィストの車両が目に入った。


「目的地は同じか、まあ俺が先行だ」


 アライアルはそれだけつぶやくと、合流は考えずに火柱の元に急ぐことにした。


 そして、アライアルが目にした車両の中でも火柱は見えていて、トーラがハンドルを握るアナスタの座席の背を叩いていた。


「あれ、急がないとまずいんじゃないの!?」


 隣に狼と一緒に座るキーツはとりあえずその手をつかんで止めた。


「トーラさん、落ち着いてください。レウスさん達ならきっと大丈夫ですよ」

「そう、もうすぐだから」


 そこまで言うとアナスタは上空に何か見つけたようだった。


「それに、先に到着する隊員がいるみたい」


 アナスタはとにかく急ぐために車の速度を維持した。


 その頃、レウスとエトラの目の前の火柱は徐々に細くなり始めていた。とりあえず合流した二人は、並んでそれを見上げながらも警戒は怠っていない。


「これはなんでしょうか? 気配も消えています」

「わかりません。でも、逃げたわけではないと思いますよ」

「そうですね、応援が間に合ってくれればいいのですが…」


 エトラの言葉に、レウスは空を見上げ、それから振り返った。


「どうやら来たみたいですよ」


 エトラもつられて振り向くと、空から人間が落ちてくるのが見えた。


 それはすぐに二人の近くに着地すると、火柱を見ながら早足で近づいてくる。


「状況は?」


 その問いにエトラは火柱を見上げて答える。


「魔族と同化した悪魔と戦闘になりました。ダメージを与えたと思われますが、そこで分裂してから火柱を発生させて動きがありません」

「そうか」


 うなずいたアライアルは火柱からレウスに視線を移すと、その顔をじっと見た。そして何かを思い出したような表情を互いに浮かべたが、そこで火柱が揺らめく。アライアルを中心として三人はすぐに散開した。


「さあ、何が出てくる…」


 アライアルは何が起こってもいいように覚悟を決め、消えていく火柱を見つめる。そして、火柱が消えると、地面に立つビジルデーモンの姿があった。


「あいつは?」

「ビジルデーモンです」

「もう一体はどこだ」

「ここだ」


 エトラの返事よりも早く声が響く。そして、ビジルデーモンと同じ姿形だったが、全身に灰色の毛を生やしているのが違った。その気配にアライアルは舌打ちをする。


「アロンデーモン、あれでも大したダメージは無しかよ」

「いいや、あれは効果があった。だから、お前はここで消しておこう」

「言ってくれるな。下は頼むぞ、エトラ、レウス!」

「はい!」


 エトラは淀みのない返事をし、レウスは自分の名が呼ばれたことに少し驚いたようだが、ビジルデーモンに向かって剣を構えた。


 そして、そこから少し離れた場所に車両が急停止し、すぐにトーラとキーツに狼が外に出てくる。


「ここにいて!」


 二人と一匹を置いて、トーラは聖剣を抜いてすぐに走り始めた。狼も走り出そうとしたが、キーツはその首に腕をまわして動きを止める。


「落ち着いて、今はまだ駄目だよ」


 その言葉に狼は落ち着きを取り戻し、後ろに下がってキーツの腕から頭を抜いた。アナスタはその横に立って、腕を組み空を見上げた。


「あれ? 何か空から…」


 キーツも釣られて空を見上げると、二人の人間が組み合ったまま落ちてくるのが見えた。それはそのままキーツ達のすぐ近くに墜落する。


「シガッドさん!?」


 キーツは障壁で飛んでくる瓦礫を防ぎ、その落ちてきた二人のうちの一人がシガッドであるのを確認した。もう一人の女はすぐにその場から飛び退く。


 少し遅れて立ち上がったシガッドは、周囲の状況を確認してからキーツに目を向けた。


「悪魔が三体ということでいいのか?」

「はい、そうです」

「そうか」


 シガッドはそれだけ言って、自分の相手であるイエイズデーモンに視線を向けた。そのイエイズデーモンは二体の悪魔を見てから、シガッドに向き合う。


「終わらせる」


 それに対し、シガッドは無言で右手を前に突き出した。

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