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異端の継承者  作者: bunz0u
第二章
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防衛

 クラールは支部への道を急いでいた。その移動方は魔法によって大きく跳躍していくというもので、大柄な体は非常に目立っている。


「状況はどうだ!?」


 クラールはアナスタに連絡を入れる。


「あのキーツ君と、戦える者で食い止めてるところ。隊長が来るまでは大丈夫そう」

「そうか! 何か発見はあったか!?」

「近くに強力な魔力が存在してる。正体は不明」

「魔族の可能性があるな。わしが行くまで無理はするなよ、場合によっては支部を放棄してもかまわん!」

「了解」


 通信はそこで終わり、クラールは速度を上げた。


 その頃、支部ではキーツと狼に、四人が襲撃に対応していた。キーツは主に防御にまわっていて、他の四人は反撃をしていた。


 しかし、キーツの最初の反撃以降は、敵方もそれに対応していて、大した効果は上げられていない。そこに一斉に攻撃が来ると、キーツは少し遅れながらも、勢いよく一歩前に出て手をかざした。


「プロテクション!」


 かざした手から広範囲に障壁が展開され、危ないタイミングで魔道具からの攻撃を全て防いだ。


「すまん、助かった!」


 一番前に出ていたアルドという事務員が慌ててキーツの横まで下がる。


「まだ来ます!」


 キーツはさらに踏み出すと、さらに障壁を展開して二重の防護壁を作った。そこにさらに攻撃が降り注ぐが、新しく張った障壁によってそれを防ぎきることはできた。


 だが、二重の障壁は崩れてしまい、キーツは後ずさる。その前に狼が走りこむと、さらなる攻撃を咆哮によって散らした。


「下がるぞ!」


 アルドはキーツを引っ張って後ろに下がり、そこに残りの三人が入って反撃を開始した。その隙にキーツとアルドは即席のバリケードの後ろに隠れ、一息つく。


「敵はしつこいですね」


 キーツがそう言うと、アルドは魔道具のメイスを抱えてバリケードから顔を出して様子を見る。


「でも、これなら持ちこたえられる。すぐにクラール隊長が来てくれるさ。それよりも、ここに来ていきなり災難だったな」

「はい。でも、役に立ててるみたいで良かったです」


 キーツはそう言って笑顔を浮かべる。アルドはその動じていない様子に感心のため息をついた。そこに残りの三人も飛び込んできて、入れ違いにキーツはバリケードを乗り越えて前に出た。


 そこには狼だけが残っていて、攻撃を避けていた。キーツは一発だけ火の玉を威嚇のために撃ってから、その横に並ぶ。


「押し返さないと」


 キーツはつぶやくと、杖の握る部分を変える。


「カートリッジの残量はまだいけるし、時間稼ぎならこれかな。被害は出るけど」


 杖の前に雷の球が発生し、それが大きくなっていく。そして、それが人の頭よりも一回りほど大きくなった瞬間、そこから雷が一斉に放たれる。その雷は無差別に襲撃者がいると思われる建物を削った。


「チャンスです!」


 キーツが声をかけると、バリケードの向こうの四人が一斉に飛び出した。それぞれがこのチャンスに、出し惜しみなく反撃をする。キーツはそれに反撃が来るかと身構えるが、すぐには何も起こらない。


 だが、狼が突然低くうなりだし、少ししてからキーツも何か雰囲気が変わったのに気がついた。


「皆さん!」


 キーツが振り向いた瞬間、パイロフィスト支部の最上階の壁が弾け飛んだ。キーツはとっさに障壁を展開して、降り注ぐ瓦礫を防ぐが、そこに何か強烈な衝撃が加えられて障壁は崩れ去ってしまう。


 そして、その頭上に現れたのは、闇をまとう魔族、アエチディードだった。


「なんだあれは…」


 その圧力にアルドは絶句する。


「魔族です。話だけ聞いてましたけど、これは間違いありません」


 キーツは断言し、狼はそれに応じるようにして短く吼えた。


「ここにいたのね」


 アエチディードは狼に視線を注ぐとうなずく。しかし、それはキーツが遮り、杖を向ける。


「いけ!」


 声と同時に杖の先端に槍の穂先のように鋭い氷が生成され、それはアエチディードに向かって凄まじい速度で撃ち出された。その一撃は目で追える速度ではなかったが、アエチディードはそれを目の前でつかんで止めていた。


 キーツはそれがわかっていたかのように、すぐに火の玉を放つ。それはアエチディードの前で爆発し、一瞬だが視界を奪う。その爆発が収まる頃には、キーツはアエチディードの真下に移動して雷の球を作り出していた。


「ライトニング!」


 前回とは違い雷は一撃、空気を裂く轟音と共にアエチディードを直撃した。


「俺達もだ!」


 さらに、アルドの号令で残りの四人も一斉にアエチディードに向かって攻撃を放つ。


「休むな!」


 続けて攻撃が加えられ、アエチディードの姿が爆煙に巻かれていく。だが、それは突然巻き起こった闇の波動によって打ち消されてしまう。その中心には、傷一つないアエチディードの姿があった。


「頑張るわね」


 そうつぶやいたアエチディードは、瞬時に攻撃を加えていたアルド達四人の中心に移動していた。そこから闇の波動が広がると、四人は吹き飛ばされてしまう。


 キーツにもそれは及ぼうとしたが、狼がその前に躍り出ると同時に前足を振るい、その波動をかき消した。


「大丈夫ですか!」


 キーツは吹き飛ばされたアルド達に声をかけるが、返答はない。


「…厳しいな」


 そうつぶやいたが、キーツはまだあきらめた様子は微塵も見せず、再び杖を構えた。狼はその横に移動していて、アエチディードに向かって牙をむいている。


「大した力もないというのに、まだ抵抗する気力があるなんて、少し変わった人間ね」


 そう言いながら、アエチディードはキーツを値踏みするように眺めた。その雰囲気から、すぐには追撃がこないと感じたキーツは、狼を抑えて数歩前に踏み出す。


「あなたには聞きたいことがあります。この子、狼を狙っているようですけど、それはなぜなんですか?」

「教える義理はないし、必要も感じないわ」

「いいえ、僕はあなた達が襲撃をした時にノーデルシア王国にいましたし、今もこうしてここにいます。それに、今はあなた達が狙っているものと一緒に行動しているんですから、無関係ではありません」

「だから?」

「僕の持っている情報が欲しいとは思わないんですか? それに、もしかしたら味方に引き込めるかもしれませんよ。あなた達は人間だって使っていますよね」


 キーツの言うことに、アエチディードは空を見上げて、なにか考えるような様子を見せた。


「…手間が省けるか? いいや、そういうわけにはいかないわね」


 何か結論が出たらしいアエチディードはキーツを射抜くように見た。


「消えてもらうわ」


 軽く手を動かすと、キーツに向けて闇が覆いかぶさるように立ち上がった。キーツはすぐに障壁を展開しようとしたが、それは発動直前に闇に飲まれて何も起こらない。


 キーツと狼はそれに飲み込まれそうになったが、直前でその一人と一匹の前に人影が飛び込んできた。


「フンッ!」


 気合一閃、闇は十字に切り裂かれて消え去っていた。


「遅くなってすまなかった!」


 キーツの前には大柄なパイロフィストの隊長、太刀を握ったクラールの姿があった。

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