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異端の継承者  作者: bunz0u
第二章
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首都到着

「よく来てくれた! わしはこの地域を預かる隊長、クラールだ!」


 キーツ達の前には、大柄で筋骨隆々の立派な髭をたくわえた中年の男、クラールが立っていた。腰には二本の太刀を差している。


 その前にアクシャが一歩踏み出した。


「アクシャだ、よろしく」


 そしてアクシャは胸ポケットから一角獣を出し、それを元のサイズに戻した。それを見たクラールは一瞬目を見張ったが、すぐに満面に笑みを浮かべる。


「おお! こんな動物は初めてだ!」


 クラールは一角獣に近づいてその首を撫でた。


「しかし、こいつはいい馬だ。どこまでも駆けていけそうな風格がある」

「へえ、中々見る目があるねえ。あんたの言う通り、この子だったらこの大陸のどこにだって行けるよ」

「そうだろう。是非乗せてもらいたいものだ」


 アクシャとクラールは友好的に盛り上がっていたが、そこにハイガルが一歩踏み出す。


「隊長、時間もあまりないですから」

「おお、そうだったな! では他の者も紹介してもらおう」

「ん、じゃあ少年から」


 言われた通り、キーツが一歩前に出た。


「僕はキーツ、ノーデルシア王国の王立学院に通っています」

「マーガレットから聞いているぞ、大変優秀だとな」


 次はジンが前に出る。


「ジンだ。世話になる」

「お主は超能力者というものだな、中々いい面構えだ!」


 そしてクラールはその隣のレウスに視線を移すと、手を叩いた。


「君がレウスか。アテリイから見所のある若者がいると聞いていたが、確かに只者ではない雰囲気があるな」

「よろしくお願いします」


 レウスは軽く頭を下げただけだった。トーラはその横に勢いよく踏み込む。


「いよいよあたしの番ね!」

「あー、これがトーラ、聖剣の継承者ね」


 アクシャがあっさりそう言うと、トーラは勢いあまってその場で転んだ。その場の空気が少しの間固まるが、それはクラールの大笑いで破られた。


「なるほど、伝説の聖剣使いとはこんな可憐な少女だったのだな!」


 トーラは立ち上がると、髪をかきあげてなんとかその場を取り繕った。


「ま、まあね。まあこのあたしが来たからには、何があっても安心よ」

「その力、明日にでも見せてもらいたいものだ」

「見世物じゃないけど、あなた達だけに見せるなら、まあ特別にいいかな」

「そうか! それなら後で是非見せてもらいたい!」


 それからクラールは狼の前で片膝をついた。


「ふむ、美しい狼だな。一匹で人と行動をするとは面白い」


 そうして狼の頭を軽く撫でると立ち上がる。


「さて、わしはこれから巡回がある。ハイガル、戻るまでは頼んだぞ」

「はい」


 クラールはハイガルの肩を力強く叩くと、大股でその場から離れていった。それを見送ったハイガルはすぐにキーツ達に向き直る。


「では、ご案内します」


 ハイガルに先導され支部に入ったキーツ達一行を迎えたのは、忙しく働く職員達だった。


「いやあ、よく働くもんだねえ」

「違法な魔道具の製造組織に関しての情報が集まっていますから。その整理と調査に全員が追われています」

「それだったら、少年は詳しいよな」


 アクシャがそう言ってキーツの背中を叩くと、ハイガルは目を細めてそこに視線を向けた。


「マーガレット部長が言っていたのはあなたでしたね。そういうことでしたら、ここの技術の責任者を紹介しますから、会ってみてください」

「はい、わかりました」


 ハイガルは一度その場から離れると、まだ若い白衣をまとった女性を一人連れてきた。


「この支部の技術責任者、アナスタです」


 ハイガルに紹介されたアナスタという女性はキーツに目を向けると、軽くうなずいた。


「君が部長の言っていた…」


 それだけ言うとアナスタはすぐに背を向けて歩き出した。


「こっちに」

「はい」


 キーツはその後について歩き出し、狼もついていった。トーラは何か聞きたそうにアクシャに顔を向ける。


「少年はあっちでいいんだよ、難しーいことをやるんだから」


 そう言われたトーラは少し首をかしげて、手を叩いた。


「じゃあ、後で見に行ってみる」

「好きにしなよ。じゃ、ハイガル君、続けて案内よろしく」

「はい、ではこちらに」


 ハイガルは表情を変えずに体の向きを変えると、キーツ達とは反対方向に歩き出した。そして到着したのは、机が並ぶ地味な部屋だった。


「ここが我々実働部隊の部屋です。見ての通り、基本的には事務室ですね」


 それからハイガルはホワイトボードに歩み寄り、その脇にある地図を張り付けた。


「これはこの街の地図です、何か気づくことはありませんか?」


 アクシャたちはそれぞれその地図の近くまで移動すると、それに注目する。その中で最初に口を開いたのはアクシャだった。


「街の西の赤い丸は何だい?」

「それが魔道具の密造工場があると思われる場所です」

「へえ、ずいぶん範囲が広いんだね。それに、ここは行政府の近くに見えるけど、そんなところにそういうもんがあるもんかね?」

「政府中枢に近いのなら、パイロフィストでも簡単には調べたり、立ち入ったりはできないんじゃないですか?」


 レウスがアクシャのあとをついて言うと、ハイガルはうなずいた。


「その通りです。我々がパイロフィストとはいっても、場所が場所なので、公式には簡単に手が出せません。情報だけはなんとかすることができても、実際に行動はできない。それに、我々をよく思わない存在もいるのが厄介です」

「つまり、どっかお偉い人の中に密造に関わってる人物がいて、あんたらを邪魔してるっていうのかい?」


 アクシャの言葉には、ハイガルは少しだけ満足そうな表情を一瞬浮かべた。


「そういうことです。さらに問題なのは、我々は皆知られていて、こちらが動けば少なからず相手にもそれがわかるということです。それに、密造工場とは離れた場所で狙ったように事件が起こっていて、中々集中できません」

「そこまでわかっているのなら、なぜ強引にでも動かないんだ。お前達の実力なら、たとえ一人でもなんとかできるはずだ。特にあの隊長ならな」


 ジンの疑問にはハイガルでなく、アクシャが答える。


「下手なことしたら、この国が大混乱に陥るくらい微妙な状況なんだろうよ。そうなったらパイロフィストでも厳しい。だから、あたし達がこれだけ歓迎されてるわけ、な?」


 それにハイガルは今度こそはっきりと、にやりと笑った。


「話が早くて助かります。皆さんの実力は聞いていますし、そちらのトーラさんは聖剣使い。この街では顔も知られていない少数精鋭、これが我々が待ち望んでいた、状況を変えられる一手になります」


 そして、ハイガルはホワイトボードの上の棒を手に取り、それを伸ばした。


「では皆さん、てきとうにかけてください。現在のこの国の状況と、これからの方針を説明します」


 レウスとジンはすぐに手近な椅子に座り、アクシャはあくびをしていたトーラを引っ張って椅子に座らせると、自分はその後ろの席に陣取った。

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