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異端の継承者  作者: bunz0u
第二章
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道なき道

 車は町の車庫に預け、荷物は一角獣に背負わせたキーツ達一行は、森の中を歩いていた。そこは人が通っているような様子もなく、まさに獣道という様子だった。


「アクシャさん、そろそろ休みませんか」

「ああ、そうだね。歩きならちゃんと休憩をとるのは大切だ」


 アクシャはそう言うと、一角獣を止めて近くの木の根元に腰をおろし、飴玉を取り出した。


「ほら、これでも食べな」


 そして飴玉を三人に放り投げる。それを受け取ったレウスは口に入れる前に手でそれを軽く握った。


「ずっとこんな調子なんですか」

「まあ、三日はこんなもんだね。そこからはちょっと楽しいことになる」


 そして狼に視線を向けた。


「そこの獣君。あんたもきっと楽しめるぞ」


 狼はそれには反応せず、体を伏せると鼻から息を吐き出した。それを見てアクシャは微笑を浮かべる。


「つれないねえ」


 それから十分後、一行は再び出発した。


「ところでアクシャさん。この森は基本的に立ち入り禁止にされていて、詳しいことも地図に載っていませんよね」

「ああ、まあ普通はこの森に入っても何も見つからないし。遭難以外の脅威もないしねえ」

「それも、進んでいけばわかるんですか?」

「そういうこと」


 そして順調に進んで夕方、一行は足を止めると少し開けた場所でテントの設営をしていた。


「ほらほら、さっさとやらないと日が暮れちまうよ」


 アクシャはキーツと一緒にテントを組み立てながら、レウスとジンに声をかけた。レウスはそうでもなかったが、ジンは不慣れな様子でぎこちない手つきだった。


「お前の超能力を使ったらどうなんだ」


 レウスにそう言われるとジンは手を止め、パイプを地面に置いた。


「そうだな、やってみよう」


 ジンがパイプに手をかざすと、それは一斉に動き出した。だが、それはうまく組みあがらずに地面に転がってしまう。


「一度は手でやらないとわかるわけないだろうに。ほら、手抜きしないできりきり働く。少しは少年を見習いな」


 アクシャの言葉通り、キーツは順調にテントを組み立てていた。


「僕はやったことがありますから。ジンさんもすぐに慣れますよ」

「そうか、やってみよう」


 ジンはそう言うと、キーツの方を見ながら、テントに取りかかった。


 そして日が落ちた頃、携帯用コンロに鍋を乗せ、四人と一匹はそれを囲んで座っていた。一角獣は周囲を歩き、木の皮を食べたりしている。


「さてさて、そろそろ食べられるかね」


 アクシャはお玉でその鍋をかき回すと、薄く透明なシートを張った器を手にとってそこによそう。


「ほら」


 器を差し出されたジンは黙ってそれを受け取ると、パンをちぎってそれに浸しながら食べ始めた。レウスとキーツも同じように器を受け取り、食事を始める。


 それが終わると、シートを処分して食器をしまい。スプーンだけは水で洗った。そして、レウスとジンはテントに入り、キーツとアクシャはまだ外に残っていた。


「少年、あのおじさんとはいつ出会ったんだい?」

「四年前です。僕の住んでる村にふらっとやってきて、しばらくしたら僕を学院に入れたいって言い出したんですよ」

「へえ、それで」

「僕はずっと学院に行きたかったですし、学費から生活費まで面倒を見てくれるという条件だったので 、両親も賛成してくれました」


 それにアクシャはうなずいてみせる。


「いい親御さんじゃないの」

「祖父は王都で家具職人をやっていたらしいんですけど、本当は学者になりたかったとよく言ってたらしいです。だから、いい機会があったら僕にしっかり勉強してもらいたかったみたいでした」

「なるほどなるほど。確かにノーデルシア王国の王立学院でいい成績を残せたら、どんな職でもよりどりみどりだもんねえ。で、少年は何になりたいわけ?」

「僕は、強いて言えば発明家になりたいです。基礎理論だけでなく、開発だけでもない。その両方をできるくらいの発明家に」


 キーツの言葉にアクシャは笑みを浮かべて空を見上げた。


「少年の夢は大きいな。そのためにはあたしの技術も必要か」

「はい。今まで教えてもらった限りでは僕に使えるようなものではありませんけど、でもその技術体系は非常に独特で、必ず役に立つものだと思います」

「少年は先生と話が合いそうだ」

「僕も会ってみたいですね」

「それなら、王都に戻った時に会えるかもね」

「そういう予定があるんですか?」

「いや、決まってるわけじゃないけどね。何しろ気まぐれでなんだかよくわからない人だ」


 そしてアクシャは立ち上がる。


「少年はそろそろ寝たほうがいい。見張りはあたしがやっておくから」

「はい。何かあったら起こしてください」


 それからキーツがテントに入っていくと、それを見送ったアクシャは一角獣に歩み寄って、その首筋に手を置いた。


「まったく、あの少年はいい子だねえ。先生の知り合いのおじさんとやらは大した人らしい」

「それはどういう意味だ」


 一角獣の口が動き、不自然な声が響いた。


「おっと、先生聞いてたの」

「今繋いだところだ。何を話していた」

「別に、少年が発明家になりたいっていう話ですよ」

「発明家…」

「そう、発明家ですよ」

「…あいつはまた妙な者に目をつけたな、一体何を考えているのか」

「あー、先生?」

「お前達が王都に戻る頃に王都に到着するようにしておく。それまではしっかり面倒を見ておけ」

「はいはい、せいぜい頑張りますよ」


 そこで一角獣は元の様子に戻り、首を軽く振った。


「まったく、相変わらずだねえあの人は」


 そう言うアクシャに一角獣は頭をすりつける。アクシャはそれを撫で回した。


「まあ、今は目の前に集中だ」


 そして翌朝、結局誰も起こさずに徹夜をしたはずのアクシャはなぜかずいぶんと元気そうだった。


「すみませんアクシャさん」


 キーツに声をかけられると、アクシャは笑って手を振った。


「いいんだよ、こっちは旅慣れてるからね。それよりさっさと撤収撤収」


 アクシャは手を叩きながら、レウスとジンを急かす。それから自分でもキーツと一緒にテントを片付けると、荷物を一角獣に乗せて一行は出発した。


 その調子で二日後の昼、一見何もないところでキーツ達は立ち止まっていた。アクシャはその前に立ち、手を広げる。


「さて皆さん、注目注目」


 アクシャは近くの一際太い木に手を置いた。そして目を閉じて数秒後、アクシャの背後の森が姿を消し、湖が姿を現した。


「これは…」


 キーツはその変化にそれだけ言うのが精一杯だった。レウスとジンも驚いた様子でただ立ち尽くしている。狼は特になんということもなく、あくびをする程度だった。


「これはかなり特殊な結界でね。外から開くには精霊の力を使わないといけない。強度はあるし、なにより結界を探知するのが難しいから、まあ鉄壁といって言いね」

「初めて聞きました」

「まあ、あとでこれも説明してあげるから、今はとにかく進もうか」


 そして、四人と二匹は歩き始めた。

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