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異端の継承者  作者: bunz0u
第二章
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剣の道

 二つ目の町に到着したのは、そろそろ日が落ちる時間になってからだった。一行はすぐに宿をとるが、レウスは荷物を置くとすぐに外に出て行ってしまった。

「そういえば、昼のあれは何だったんだい?」

 食堂に落ち着いたアクシャがジンにたずねると、返ってきた反応は落ち着いたものだった。

「暇だったから少し体を動かしていただけだ」

「ふうん。少年、あの青年は修行の旅をしてるんだったっけ」

「はい、そうらしいです」

「伸び悩んでる感じがするねえ。筋は悪くないし、本人もそれはわかってそうだけど」

「そうなんですか」

「だから今も落ち着かないでふらふらしてんでしょ。いいねえ、悩めるうちに思いっきり悩んでおけばいいんだよ」

 そう言ってアクシャはビールをぐっと飲み干した。

「ところで、あの狼は」

「今日はずっと車でおとなしく寝てましたね、湖でもそうだったんですか?」

 キーツに聞かれたジンはうなずいた。

「そうだったな。特にあの周囲に興味がある様子もなかった」

「ま、おとなしくしてるんならそれで結構」

 アクシャはコップを置くと、骨付きの肉を手に取った。

 その頃、レウスは夜の町を一人で歩いていた。その頭の中では、昼間の出来事が渦巻いている。

 以前よりはるかに力をつけたジン、そして自分やそのジンよりも強いというアクシャの存在。アクシャの実力はまだ見たことがなかったが、アテリイの話からも相当な実力者だというのはわかっていた。

「ブラッドのその先か…」

 そうつぶやくと、レウスは近くの店に近づいてその扉を開けた。店内は賑わっていたが、満員というほどではなく、レウスは空いているカウンターに腰かける。

「酒以外のものを」

 そうして小銭をカウンターに置くと、バーテンダーは黙ってそれを受け取り、ジュースをレウスの前に置いた。レウスはそのよく冷えたジュースに口をつけると、ため息をついた。

「…親父はブラッドの先に行くには覚悟が必要だと言ってたな」

 レウスは杖を強く握った。もちろんそうしたところで何か反応があるものでもない。

「人間を捨てるほどの覚悟、そんなもんどうすればいいんだ」

 そうつぶやいてレウスは目を閉じたが、それで答えがでるはずもなかった。しばらくしてから、その前にバーテンダーが立つ。

「兄さん、だいぶ悩んでるな」

 それにレウスは思わず顔を上げた。バーテンダーはそれに対してもう一杯ジュースをレウスの前に置いた。

「これはなんですか?」

「気にするなよ。ま、悩みは口に出したら楽になるもんだ。あんた旅をしてるんだろ、なら、俺なんかは話をするにはちょうどいい」

「…師匠に言われてたことを考えてただけですよ」

「その師匠っていうのは、何か武道かい」

「剣術ですよ」

 バーテンダーはその答えに笑みを浮かべる。

「そいつはいい。有名になれたらうちの店の宣伝でもしてくれよ」

 レウスは軽く首を傾げてから、二杯目のジュースを一気に飲み干した。

「それは無理でしょうね。別に有名になろうとは思ってないので」

「強くなれば自然と名が高まるもんだよ。あんたは強くなるって、俺の勘がそう言ってるんだ」

「それはどうも。でも上の壁は高いんですよ」

「そのほうが乗り越えた時に強くなれるっていうもんじゃないか」

「ものは考えようか」

 レウスはそうつぶやいて笑うと、立ち上がった。

「この店を宣伝するのは引き受けましたよ」

「よろしくな」

 店を出たレウスは今までよりもすっきりした表情をしていた。

 そして翌朝、出発してから最初の休憩で、レウスは木に寄りかかっていたアクシャに近づいた。

「少し話があるんですが」

「なんだい青年」

「俺の修行に付き合ってもらえませんか」

 アクシャは姿勢を変えると、口元に微笑を浮かべた。

「で、なんであたし」

「俺はあなたの実力も、戦いかたも知らない。でも俺より強いのはわかってます」

「なるほどなるほど、まあ参考にはならないと思うけど、別にかまいやしないよ」

 アクシャはそれからキーツとジンに向かって手を上げた。

「ちょっと散歩してくるから、てきとうに待ってて」

 そして、レウスとアクシャは少し離れた場所に移動した。そこでレウスはガランダルドを剣の形にする。

「なんでもいいので、攻撃してきてください」

「攻撃ね。ま、怪我しないように」

 アクシャは足元から石を拾うと、それを一度上に放り投げてからつかみなおした。

「打ち返してみな」

 手のひらに乗せた石を左手で軽く弾いた。次の瞬間、その石は凄まじい勢いでレウスに向かって放たれる。レウスがそれに反応して剣を振り上げ、石を砕こうとするが、それは空を切り、石はその背後の地面に埋まった。

「だめだめ、もっと直前まで見てよく狙わないと」

 そう言うとアクシャは地面から石を三つ拾った。

「じゃあ、次は踏み込んでかわしてみな」

 そしてもう一度石を弾くと、レウスはアクシャの言葉に従って踏み込む。そして一発目は剣で弾き、二発目は軽く跳んでかわした。

「はい、終わり」

 レウスの目の前には、石を乗せたアクシャの手の平があった。

「どうも青年は動きが正直だねえ。反応事態はいいけど」

「見切ってるんでしょう?」

「まあ、今の青年の動きならね。でも、全力じゃないでしょうが」

「いえ、反応速度はこれくらいが限界です」

 それからレウスは後ろに下がり、アクシャは手を引いた。

「なら、それの強化かね。あんたは基本的に近づかないと駄目みたいだし、そこさえやればその剣は力はありそうだねえ」

「わかるんですか、見せてないのに」

「いや、あんたのやばさは見ればわかるから。でもまあ、荒削りなのは確かだ」

「なら、どうすれば?」

 その問いにアクシャは眉間を指でつまむ。

「そう言われてもねえ。まあ、耐えるっていうのは一つの選択肢なんじゃないの」

「耐える?」

「そうそう、とにかく防御で相手との間合いを詰めて、一撃必殺でズドンっていうやつ。まどろっこしいからあたしの好みじゃないんだけど」

「守って、反撃…」

 そうつぶやきながら、レウスは剣を杖に戻すと、アクシャに向かって頭を下げた。

「ありがとうございます。いい修行になりました」

「そうかい。ま、参考になったならよかったよ。でも一撃必殺っていうのは難しいもんだけどね」

「いや、俺には向いてますよ」

 そう言うとレウスは背を向けて車のほうに戻っていった。

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