出力全開、モードブレイブ
超能力者達とアエチディードの戦闘が始まった直後、アテリイは状況を把握しようとしていた。闇から出てきた人影と、それに向かう三人、それを確認したアテリイは隊員達との通信を開く。
「全員、空の状況は見ているな。おそらく魔族と超能力者達だが、まだ動くな」
「しかし隊長、すぐに止めるべきでは」
「いや、動くとしても私だけだ。ベネディック、地上の指揮は任せる」
そしてアテリイが空を見あげると、戦闘はいっそう激しくなり、竜が姿を現していた。アテリイはそれを見て大きく息を吐き出す。
「竜は私が相手をする。余裕があれば今のうちにマジックカートリッジを換装しておけ」
それからアテリイは剣を抜き、目を閉じた。
「いくぞ、モードブレイブ」
その言葉と同時にアテリイの全身が淡く青い光に包まれる。次の瞬間、その体が浮かび上がり、目が開かれると同時に一直線に空に向かって飛び出した。
その間にも空中の戦いは進行していて、アテリイがその下方に到着する頃には、さらに二体のドラゴンが姿を現していた。
「面倒な」
アテリイは小さくつぶやいてから、体を上に向けた状態で姿勢を安定させると剣を構えた。
「モードブリザード、ストーム!」
声と同時にアテリイの全身が輝き、それが剣に集中していく。そして、上空からの青い炎とブレイズドラゴン二体の突撃に向け、剣を横薙ぎに振るった。すると、その剣の軌跡が光を放ち、その光は一気に大きなものとなる。
次の瞬間、光からは恐ろしいまでの吹雪が上空に向かって放たれた。それは一気に広がり、急降下してきた二体のを巻き込み、さらに青い炎を食い止める。
強烈な風によって動きを止められたブレイズドラゴン、そこに次々と氷が突き刺さり、上空に押し戻されていった。青い炎も吹雪に阻まれ、その勢いを失って消失した。
それを見下ろすアエチディードは、押し戻されたブレイズドラゴンの前に出ると、巨大な闇を展開して強烈な吹雪を押さえ込む。
「そうか、お前がパイロフィストの…」
そうつぶやいたところに、男が襲いかかるが、アエチディードが虫でも振り払うかのように手を動かすと、そこから発した闇の塊によって、男はそのまま下方に凄まじい勢いで叩き落された。
アテリイは素早く動いてその下に入ると、障壁を張って男の勢いを削ぎ、手をつかんで落下を止める。
「今は見逃す。下がれ」
それだけ言うとアテリイは手を放し、返事も聞かずに上昇すると、アエチディードと同じ高さ、数十歩の距離で止まり、真っ直ぐにそれを見据えた。
「パイロフィスト、本部所属小隊隊長、アテリイだ」
「アエチディード、魔族よ。よろしくね隊長さん」
「答えろ、お前達の目的はなんだ?」
「答える必要があると思うの?」
「ないな。今はお前達の排除が先だ」
アテリイが剣を構えると、アエチディードは両手を広げ、芝居ががった調子で口を開く。
「四対一の状況で、よくそれだけのことを言ってくれるじゃないの」
ブレイズドラゴンはすでに体勢を立て直していて、言葉の通りの不利な状況だったが、アテリイは全く動じずに余裕すら見せている。
「モードブレイブという言葉の意味を教えようか」
アテリイの言葉と同時に三体のブレイズドラゴンがそこに向かって降下してくる。
「モードライトニング、スラッシュ!」
アテリイが叫ぶと同時に、その剣から雷が発し、長大な剣を構成した。
その雷の刃がブレイズドラゴンに向かって鋭く振るわれ、先頭の一体をとらえる。その一体は雷の衝撃で動きを止めると、口から煙を吐き出して動きを止めた。だが、残りの二体は急停止すると、炎のブレスの準備に入る。
だが、アテリイは自分の足元に爆発を起こすと、その勢いで左のドラゴンとの距離を一気に詰めた。そして左手が炎をまとう。
「モードメテオ、ストライク!」
そして、その拳はさらに岩のようなものをまとうと、勢いのままブレイズドラゴンの腹に叩き込まれた。強力な一撃は巨体の反対側まで衝撃を伝え、その体を上空に打ち上げる。
アテリイはその行方は確かめず、もう一体に体を向けると、もう一度爆発を起こしてそちらに加速した。
だが、その前にアエチディードが現れると、盾のような形の闇を作り出して立ちはだかる。アテリイは迷わずにそこに左拳を叩き込んだ。
燃え盛る岩の拳と闇の盾、二つのものがぶつかった瞬間、ブレイズドラゴン達の巨体さえ吹き飛ばされる衝撃が発生し、下方の王都までその振動は伝わった。
その激突した体勢のまま、アテリイとアエチディードは睨みあう。
「モードブレイブというのは大したものね」
「まだ本番はここからだ」
「そう、でもブレイズドラゴン達はまだ平気だけども」
アエチディードの言葉の通り、アテリイの攻撃を直撃されなかったブレイズドラゴンは体勢を立て直して、王都にブレスを浴びせようとしていた。
アテリイはすぐにそこに向かおうとしたが、アエチディードはそれを許さない。そして、ブレイズドラゴンは炎を吐こうとしたが、その顎に下から一本の矢が突き立った。
次の瞬間、その矢が伸びてブレイズドラゴンの頭を貫く。さらに、それが爆発してドラゴンの頭を消し飛ばした。
「なに?」
アエチディードは一瞬それに気をとられる。その隙にアテリイはその横を通り抜けると、頭を失ったブレイズドラゴンを左拳で王都の外に落ちるように殴り飛ばした。
一方、アテリイの攻撃を受けたブレイズドラゴン二体もなんとか体勢を立て直し、その動きはダメージのせいか鈍かったが、再び王都に攻撃をしかけようと動いていた。
しかし、そのうちの一体には矢が突き刺さり、頭を消し飛ばした。それを確認したアテリイはもう一体に向かい、雷の刃を振り下ろし、意識を刈り取った。さらに高速で突進すると左の拳を叩き込んで巨体を弾き飛ばした。
「いいや、遅い」
アエチディードは頭を失ったブレイズドラゴンの上に出ると、小さな闇の球体を作り出し、その体の中に埋め込んだ。
「行け」
ブレイズドラゴンの亡骸が加速し、王都の結界と激突する。そして、それが爆発した。
「まずい…」
アテリイはうめいたが、すでに結界は崩壊を始めていた。
「全員聞け、結界が破られた。周囲からの攻撃の対応は頼んだぞ」
アテリイは返事を聞かずに通信を終わらせると、すぐにアエチディードに視線を向ける。アエチディードもそれに応じるように、今までとは違う雰囲気をまとった視線を向けた。
「アテリイ、これであなたさえ排除すればこちらの勝ちね」
「排除されるつもりはない」
アテリイは一度左腕と剣の魔法を解除すると、あらためて構えた。その頭の片隅にはブレイズドラゴンをしとめた矢のことが引っかかっていたが、敵ではないと判断して今は気にしないことにした。




