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異端の継承者  作者: bunz0u
第一章
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結界の穴

「キーツ君にあの男が接触したんですか」


 パイロフィスト本部前、ちょうど外に出ようとしていたアテリイをつかまえ、ファマドは昨晩のことを簡単に話していた。


「まあ、たぶんあの王女様が動くだろうから、余計なことはしないほうがいいかもね」

「確かに、キーツ君のことをずいぶん気にかけているようですからね。心配ですが、あまり厳重に警備するとせっかくの手がかりを失いそうです」

「そういうことだね。それで、結界のことで少し話があって来たのだけど」

「わかりました。では中で」


 それから二人は本部内に入ったが、部長達でつかまったのはニッケルだけで、結局アテリイとファマドはニッケルの執務室に集まっていた。


「申し訳ありません、他の二人は出払っているところでしてね」


 ニッケルの言葉に、椅子に座って足を組んでいたファマドは微笑を浮かべてうなずく。


「かまわないよ。それより、結界についての話でね、弱くなっている部分の見当がついた」

「ふむ、さすがファマドさんですね。では地図に書き込んでいただけますかな?」


 そうしてニッケルが机の上に王都の地図を広げた。ファマドはペンを受け取ると、迷わず三ヶ所に印を書き込む。それはそれぞれ王都の外れで、距離もだいぶ離れていた。


「ちょうどこのあたりだね。この三ヶ所は今までよりも結界の効果、つまり対魔物、魔族に対する効果が弱くなっていて、強力な魔物なら破れてしまう。多少頭のある魔族なら、誰にも知られずに簡単に侵入できるかな」

「それは問題ですね」

「そう、問題だ。でも、逆にこれでどこを警戒すればわかるわけだよ。これが彼ら、超能力者達の狙いだったんだろうね」

「なるほど、そういうことですか。しかし、敵の正体がわからないといっても、警戒すべき場所がわかるのは我々にとっては喜ばしいことですね」


 ニッケルはそう言ってから、アテリイに顔を向ける。


「アテリイ君、我々だけでなんとかできますか?」

「二人ずつで三班になりますが、バックアップがないのは不安ですね。レウス君を数に入れたとしても、それほど変わりはありません」

「ふむ、ここはファマドさんの言う超能力者達を利用したいところですね。彼らの目的もとりあえずは我々と同じようですし、動きがわかればなんとかなるかもしれません」


 笑顔を浮かべるニッケルに、ファマドはつられるように口元に笑みを浮かべた。


「それが分かれば、だね」

「それは問題です。ですが、超能力者達は我々にない情報を持っている可能性はありますから、まずはその動きを見てからこちらが動く、という手段も取れますね」

「リスクは増しますが、遊撃隊を編成してそうした対応はできます。しかし、場所はどこもかなりの距離がありますから、どうしても時間はかかります」


 アテリイの返答にニッケルはあごに手をあてる。


「わからないことが多い現状では、あまり時間はかけたくないですね。最初から実働部隊を配置しておくしかありませんか…」

「すぐに隊員達に連絡を取ります」

「お願いします」


 ニッケルが応じると、アテリイは退室していった。それからニッケルはファマドに顔を向けた。


「ファマドさんにも手を貸していただきたいところですね」


 それにファマドは笑顔で首を横に振る。


「パイロフィストの実働部隊と一緒なんてとても無理さ、僕ではとても力にはなれないよ」

「ご冗談を。ですが、無理強いはできませんね」

「もちろん、できる範囲で力は貸すよ」


 一見したところ両者は笑顔だったが、どちらも素直に受け取れそうにはない雰囲気だった。


 それからしばらくして、アテリイは隊員達を事務室に集めていた。ホワイトボードにはファマドが書き込んだ通りの地図が張られている。


「さて、これが結界が強化されたことによる穴だ。隊を三つにわけて、それぞれ警戒にあたることになる。それぞれの班の編成だが、第一班はジョシンとヤルメル、第二班はマルハスとレウス君、第三班はベネディックとクリストール、私は遊撃として動く」


 そこでマルハスが手を上げる。


「隊長、レウスを戦力に数えるんですか?」

「そうだ、お前は一緒に戦ったこともあるから問題ないだろう」

「わかりました、何とかします」


 それから今度はベネディックが口を開く。


「この作戦には、あの男達のことも考慮されているのでしょうか?」

「計算できるものではないからな、基本的にはないものとして考えて行動する。それでこの配置だ」

「確かに、各班が持ちこたえて、隊長が自由に動くというのはいいですね。ただ、これでは数でこられた場合の対応が問題になりそうですが」

「王国の軍に後詰を要請しておく必要もあるな。私が話を通しておこう。だが、あくまでも最前線で脅威を受け止めるのは我々の仕事だ」


 アテリイはそこで言葉を切り、隊員を見回した。全員黙ってうなずいてそれに応じる。


「よし、気を入れるのはいいが、どれだけの期間になるかは不明だ。長くなることも想定して力の抜きどころにも注意しておけ」

「了解!」


 隊員達の返事でそのミーティングは終わり、それぞれ動き出した。そんな中、マルハスは最後に本部を出る。


 そこにはレウスがマルハスが出てくるのを分かっていたような様子で待っていた。


「何か物々しい感じですね」

「ああ、お前にも大仕事がある。その前に」


 マルハスは腕輪を取り出してレウスに差し出した。


「通信用の魔道具だ。ちょっと時間がかかって悪かったな」

「ありがとうございます」


 レウスはそれを受け取るとすぐに腕に通す。


「ところで、大仕事というのはなんですか?」

「結界の穴がわかった。そこを俺達で守るわけだけど、一ヶ所は俺とお前で担当する」

「何か、大物が来るわけですか…」


 レウスはつぶやき、口元に笑みを浮かべた。それに気づいたマルハスは顔をしかめる。


「お前、戦ってる時のほうが本性だろ。まあ、今回は失敗できる雰囲気じゃないし、どっちでもいいか。今回は街外れだし、比較的思いっきりできるから、出し惜しみはするなよ。場合によっては俺はサポートにまわってもいい」

「それはいいですね。じゃあ、その時がきたら遠慮なくやらしてもらいますよ」

「今までも遠慮してたようには見えなかったけどな」


 ため息をついたマルハスだったが、すぐに気を取り直すと、前を向いて歩き始めた。


「まあ、俺は隊長の判断を信じてるからな。移動は車だ、すぐに場所の確認に向かうぞ」

「そうですね、俺も早めに確認しておきたいです」

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