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異端の継承者  作者: bunz0u
第一章
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魔道具というもの

 パイロフィスト本部に出て来たアテリイは、ベネディックの作った報告書を自分の席で目を通していた。


「なるほどな」


 それだけつぶやくと、その報告書を机に置く。


「隊長、どうだったんですか?」


 マルハスが聞くと、アテリイは首を横に振ってから口を開く。


「厄介なことになっているな。ベネディックが戦った相手は、かなり性能のいい魔道具を使っていたようだ」

「やっぱりカートリッジ内蔵で、単機能の使い勝手と威力重視型だったんですか?」

「そうらしい。我々のものに比べられるものではないが、あのタイプは誰にでも簡単に使えるのが問題だ。それに、今回は使っている者もそれなりの技量があったらしい」

「ただのならず者じゃないってことですか?」

「それは国のほうで調べているところだそうだ。すぐにわかるだろう」


 そこでアテリイの机の上の魔道具から女の声が響いた。


「こちらクリストールです。応答を」

「アテリイだ。何かあったのか?」

「少しおかしなものが見つかったんです。露店なんですけど、そこで売られているものに変わった魔道具がありました」

「そうか、すぐに行く。待機していてくれ」


 アテリイは通信を切ると立ち上がり、剣を手に取った。


「そういうことだ。マルハス、ここで待機していてくれ」

「了解しました」


 しばらくして、アテリイは露店が並ぶ通りでクリストールと合流していた。その前にある露店の店主の中年の女はおろおろしている。


「例の魔道具は?」


 アテリイが聞くと、クリストールはすぐに熊の顔のような形をしたアミュレットをその前に差し出した。


「これです。少し調べたところ、回復と身体強化の二つの機能がありました。ここで切り替えるようです」


 クリストールがアミュレットについている熊の口の部分を開いて見せた。


「なるほど、こんなところで売られるようなものではないな。クリストール、これの入手経路についてはもう聞いているか?」

「はい、特に変わったところからではないようなので、おそらく製造している場所からの横流し品かと」

「そうか、これは手放したくない線だな」


 そう言ってアテリイは店主に顔を向けた。


「これは預からせてもらいます。いいですね」


 店主は言葉もなくただうなずくだけだった。それからアテリイはクリストールに向き直る。


「よし、早速これの元をたどるぞ」


 二人はすぐに動き出した。


 その頃、マーガレットの元には斧とメイスの形の魔道具が届けられていた。その前にはそれを持ってきたイライスが立っている。


「これが例の魔道具ね。一つくらいは国のほうが欲しがると思ったけど、よく二つ持ってこられたじゃないの」

「ベネディックさんが色々取引してたんです」

「さすがね。じゃあ、早速始めようかしら」

「はい。すぐに試験室に運びます」


 イライスは二つの魔道具を抱えて部屋から出て行った。


「ああ、試験室にいる子のことは気にしなくていいわよ。というか、あの子にも協力してもうらことになるから、説明は頼むわ」

「わかりました」


 そして、イライスが試験室に入ると、そこではノートに向かっているキーツの姿があった。キーツはイライスの姿を見ると、少し慌てた様子で立ち上がる。


「部長から話は聞いていますから、大丈夫ですよ」


 イライスがそう言うと、キーツはほっとしたようだった。そして、すぐにイライスの抱えている魔道具に注目する。


「あの、それは?」

「違法な魔道具です。これから解析ですね」

「じゃあ、僕は出て行ったほうがいいんでしょうか?」

「いえ、部長はあなたにも協力してもらうようにということでしたから、どうぞそのままで」

「そういうことならわかりました」


 キーツの返事にイライスはうなずくと、実験台の上に魔道具を置いた。キーツも自分が広げていたノートや実験器具やらを片付けていく。


 そうして大体準備が出来たところに、マーガレットが試験室に入ってきた。


「準備はできてるみたいね。なら、早速始めましょうか」


 そう言ってマーガレットは壁の白衣を手にとって身にまとい、手袋もはめた。


「まずはこっちからね」


 マーガレットは斧のほうを握り、目の前に持ち上げた。すると、それは軽く雷をまとう。


「なるほど、これは良くできてるわねえ。単機能でカートリッジも内蔵、軽くでもこれなら威力も相当なものね」


 そしてマーガレットは斧を軽く振って雷を払うと、実験台の上に戻してひっくり返したりして、くまなく手で触ってみる。


「分解してメンテナンスするようなものじゃないのね。あまり長く使うのは想定されてないということかしら」


 そう言うと、マーガレットはおもむろに斧の柄に手を当てる。次の瞬間、そこから小さな爆発が起こり、柄の表面が破壊された。


 マーガレットは工具を手に取ると、そこから内部をどんどんさらけだしていく。


「…なるほど、シンプルなものね。でも、材料は中々悪くないものを使ってるわ」


 キーツもそれを覗き込むと、確かにその内部は透き通るようなピンク色をしたマジックカートリッジに、シンプルな魔法回路があるだけのものだった。


「でも、これは効率的なものに見えますね」

「そうね。これなら出力は大きくできるでしょうし、ある程度の調整もできるわ」

「私が見てきた設備なら、これはそれなりに量産できると思われます」


 イライスがそう言うと、マーガレットはうなずいた。


「この質の魔道具を量産できるとなると、問題ね。こっちも中身を見てみましょうか」


 それからメイスも同じように内部を露出させた。


「これはどう思うかしら? キーツ君」


 キーツはそれをよく見てから口を開く。


「斧よりも出力系統が太いですね。効率はあまりよくなさそうですけど、威力はかなりありそうです」


 その答えにマーガレットはうなずく。


「その通りね、これならかなりの破壊活動ができるわ。これでは王国軍が対応できなかったのもうなずけるわね」

「そんなにすごいんですか?」

「うちで作るものよりはだいぶ落ちるけど、これだけの技術なら日用品的な魔道具を作っても相当に繁盛するわよ。それくらいのものね」


 三人はそこで黙ったが、イライスがその沈黙を破った。


「そうなると、資金の流れから色々調べられないでしょうか?」

「そうね。でも、ニッケルならそれには当然気づいて、もう調べ始めてるでしょう。私達としてはこれの原材料、それとマジックカートリッジの出所ね。正規のものを流用してるなら、製造元もたどれるわ」


 そしてマーガレットはマジックカートリッジを取り出し、イライスに手渡した。イライスはすぐにうなずく。


「すぐに調べます」


 イライスは試験室から出て行き、マーガレットは腰に手を当てた。


「さて、私達はこの回路を詳しく調べることにしましょうか」

「はい」


 キーツとマーガレットは魔道具を解体し、その中身を詳細に調べ始めた。

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