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異端の継承者  作者: bunz0u
第一章
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夜に動くもの

「お客さんが来てたんですか?」


 夕食の用意をしながら、キーツが尋ねる。


「ああ、前に言った精霊の研究をしているのとは別口だけどね。今回来たのは剣士だ。レウスって言うんだけど、こっちもだいぶ変わってるから、会ってみるかい」

「はい、会ってみたいです」

「オフィ君のところにあずけてあるから、明日行くとしようか。朝一番で行けば会えるだろうね」

「明日は学院も休みですからちょうどいいですね」

「じゃあ決まりだ」


 ファマドは魚のフライを鍋から取り出した。それと同時にノックの音が響く。キーツが出て行くと、そこにはレウスが立っていた。


「レウスですが、ファマドさんは?」

「おや、どうしたのかな」


 ファマドが奥から顔を出した。そしてレウスの顔を見ると、とりあえず手招きをした。


「ちょうどいい、夕食がまだなら食べていくかい? 話はそれからだ」

「はい」


 レウスは返事をすると杖を玄関に立てかけて中に入った。


 それからしばらくして、食卓には料理が並び、三人は椅子に座っていた。


「まずは紹介からだね。彼はレウス君だ、僕の古い知り合いの弟子で、剣の修行のために王都に来たんだ。で、こっちは」

「キーツです。今は王立学院に通ってます」

「よろしくお願いします」


 立ち上がったキーツに対し、レウスも立ち上がると手を差し出し、キーツはそれを握り返した。


「さて、それじゃあ夕食にしようか」


 ファマドの言葉で二人は椅子に座って食事を始めた。


「ところで、突然どうしたんだい? 宿に何か問題があったのかな」

「いえ、それは問題ないです。いい道場にも案内してもらいましたから」

「さすがオフィ君は行動が早いね。それで、その道場はどうだったのかな」

「道場主の人は強かったですね。久しぶりに楽しかったです」

「それは良かった。それで、これからやりたいことでもあるのかな?」

「例の謎の男を探したいと考えてます」

「ふむ」


 ファマドはうなずくと、キーツに視線を送った。


「そういうとことなら、キーツ、一緒に行ってあげなさい」

「僕がですか?」

「あの男の顔も知ってるし、自分の身は守れるからね。どうかなレウス君」

「そういうことなら、是非お願いします」

「はい、わかりました」


 キーツとレウスが同意すると、ファマドは一つ手を叩いた。


「よし、決まりだ。食べ終わったら出かけてくるといいよ。ただし、あまり長い外出はやめておくように」


 それからしばらくして、キーツとレウスは夜の街を歩いていた。街灯が灯った道は明るく、まだ人通りもそれなりにある。


「平和なんですね」

「ええ、僕も田舎から出てきた時は驚きました」

「田舎から?」

「はい。実家は農家なんですけど、おじさんに誘われてここに来たんです」

「誘われて、ですか。家族と離れてつらいことはないんですか」

「手紙は送ってますし、僕はずっと王都に来たかったですから、それに勉強できるのは楽しいですよ。そういう機会を与えてくれたおじさんには感謝してます。ところで、レウスさんのお師匠さんはどんな人なんですか?」


 その問いにレウスはしばらくの間黙っていたが、立ち止まって口を開く。


「あの人は恐ろしく強いですよ。それと、ひたすら剣を作ってそれを振り回してる人、ですかね」


 レウスは自分の杖を軽く持ち上げてみせる。


「まあ、今はこんなのですけどね」

「それは、ただの木の杖じゃないですよね」


 キーツの一言にレウスは振り向いて意外そうな表情を浮かべた。それから口を開こうとしたが、爆発音で遮られる。


「これは!?」


 キーツは音の場所を探そうと周囲を見回す。レウスはすぐにその場所の見当がついたらしく、すぐに早足で歩き出した。キーツも慌ててその後を追う。


「場所がわかるんですか?」

「大体は」


 そして歩いているうちに、煙が上がったのが見えてきた。


「まさか、これはまた。あの男が」

「例の謎の男ですか」


 そう言うレウスの顔は薄く笑いを浮かべていた。


 だが、その顔も煙の現場に到着した時には元に戻っていた。その現場には崩れた建物と

野次馬、そしてパイロフィストの一人が到着していた。


「全員下がって! 危険です!」


 そのパイロフィストの一員である若い女が声を張り上げ、なんとかその場を治めていた。そうしている間に警備隊が駆けつけ、野次馬達は散っていった。


「すみませんが、何があったんですか?」


 そこにレウスが近づき、声をかける。パイロフィストの一員はそれに振り返ると、首を横に振った。


「残念ですが、それにはお答えできません。ですが、ここは危険ですから、自宅に戻ってください」

「そうですか、わかりました」


 レウスは素直にそう言ってうなずくと、すぐに背を向けて歩き出した。キーツはその横に並ぶ。


「いいんですか、何もしなくて」

「ここにはもう何もないみたいですから、もう用はないですよ。とりあえず帰りましょう」


 二人はその場から立ち去っていった。


「こちらヤルメル、アテリイ隊長、聞こえますか?」


 そして、パイロフィストの一員、ヤルメルは魔道具でアテリイに連絡をとっていた。


「アテリイだ。現場の状況は?」

「三階建ての建物が半壊しましたが、重傷者は出ていません。目撃者の証言では例の男が関わっているようですが、確証はないです」

「そうか、引き続き周囲の警戒を怠らないようにしてくれ。応援を向かわせる」

「わかりました。ここは警備隊に任せて警戒にあたります」


 そこでヤルメルは通信を終了し、警備隊に顔を向けた。


「ここは頼みます。私は周囲の警戒に移りますので」

「はっ! お任せください!」


 警備隊の者は勢いよく返事をして敬礼をすると、ヤルメルを見送った。一方、キーツとレウスは引き上げていたはずだったが、その歩みは止まっていた。


「どうしたんですか?」


 キーツが聞くと、レウスはかすかに笑みを浮かべる。


「下がって下さい。それにしてもついてますね、こんなに早く会えることになるなんて」


 その言葉が終わると同時に、レウスは地面の石を広い、空に向かって投げつけた。その石は空中で砕け、その場所から二つの人影が姿を現す。


「勘のいい奴がいるのね。一体何者かしら?」


 レギがつぶやきながら、謎の男と共にレウスの前に降り立った。レウスはそれに杖を突き付ける。


「噂になってるのあなた達ですかね」

「どういうことかはわからないけど、そういう話もあるようね」


 その返事にレウスは満面の、凶悪とも言える笑みを浮かべた。


「そういうことなら、ちょっと遊んでもらおうか!」


 そこにいたのは丁寧な物腰をかなぐり捨てた、凶戦士とでも言うべき迫力を持った姿だった。

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