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異端の継承者  作者: bunz0u
第三章
106/110

オリジン

 レウスは一度ガランダルドを杖と左のガントレットの形に戻した。そしてアクシャとアロタスの戦いを見つめる。アクシャは余裕でアロタスを圧倒し、翻弄しているように見えた。


 レウスはその翻弄されているアロタスに意識を集中し、自分が斬るべきものを見極めようとする。


「…見てるだけでは駄目か」


 そうつぶやくと、レウスは右手に杖を持って走り出した。アクシャはすぐにそれに声をかける。


「お、青年。実戦の中でやってみるのかい」

「今までもそうやってきましたから」

「それなら前に出なよ。あたしが援護するから」

「助かります」


 レウスは杖を肩に担ぐようにすると、足を止めずにアクシャの横を駆け抜けてそのままアロタスに向かう。そして、姿勢を低くしてアロタスの目の前まで到達し、杖を振り上げた。


 その一撃は今までよりも鋭いものだったが、アロタスは簡単にそれを腕で受け止める。レウスはそこで杖を引かずにさらに力を込めた。アロタスはその力にわずかに押されたが、すぐに押し返す。


「まだか」


 レウスはつぶやくと同時に杖を引いてアロタスをいなし、横に回り込んで左の拳を突き出した。その一撃はアロタスの側頭部をとらえる。


 手応えはあったが、アロタスの体勢は崩れず、レウスはすぐに後ろに下がる。次の瞬間にはその空間が切り裂かれていた。そこにボルトが飛来し、アロタスの右膝に命中した。その隙にレウスは一気に距離をとる。


「やるねえ。これなら問題なしか」


 アクシャはそう言うと、背を向けてキーツ達の方に歩いていく。レウスはそれを目の端で確認すると、杖を右手で中段に構え、半身になったままアロタスが立ち上がるのを待った。


 ボルトを抜いたアロタスはアクシャが背を向けたのを確認すると、レウスに向けて牙をむいて見せた。そして地面を蹴ると同時に翼を動かし、レウスに飛びかかる。


 そのままレウスに噛みつこうとするが、それはレウスのガントレットに受けられ、口を外す間もなく地面に叩きつけられようとした。アロタスはそれよりも早く体を回転させてガントレットを蹴り、レウスを弾き飛ばすと同時に自らも後方に飛んだ。


「アクシャさん、援護はいいんですか?」

「心配はいらないさ、助っ人もすぐに来る。それに、青年の動きだってさっきよりもずっと良くなってるだろ」

「確かにね、でも、あれだけで勝てるとは思わないけど」


 トーラがそう言うと、アロタスに向かって雷の矢が飛来した。それは超高速だったため、レウスとアロタスが反応する前に両者の間に着弾する。


「ああ、来たね」


 アクシャが空を見上げると、そこからベネディックとヤルメルが急降下し、レウスの後方に着地をした。


「間に合いましたか」


 ベネディックはそう言うと、レウスとアクシャ達の様子を見てから立ち上がる。


「しかし、状況は思ったよりも良さそうですね」

「そうだよ、多少の援護があれば青年がなんとかできる」

「わかりました」


 ベネディックは中心から二つに分かれた剣を一度肩にかつぐと、近くの建物の屋上まで一気に跳び上がり、その剣を軽く一振りしてから切っ先を下方に向けて構えた。ヤルメルはその場を動かず、地面に右手をあてる。


「援護に集中します」


 レウスはそれを確認すると、すぐに地面を蹴った。アロタスはそれに対応しようとするが、その足元が氷で固められ、動きを阻害する。それは一瞬だったが、レウスが先手を取るには十分な時間を与えた。


 レウスは左から姿勢を低くしてアロタスに肉薄すると、杖を逆袈裟に振り上げる。その一撃はアロタスの脇腹を打ち、わずかだがその体を切った。


 レウスはそこで杖を放すと、さらに踏み込み、切りつけた場所に左の拳を叩き込む。その一撃はアロタスの肉体に食い込み、衝撃をその体内に送り込んだ。


「すごい。レウスさんが押してるように見えます」

「そう、思ったよりも早いけど。あれがあの魔剣の本当の能力なんだろうね」

「本当の能力って?」

「使用者自身の進化ってところじゃないの。実際青年はあの魔剣を進化させると身体能力も上がってるんだし」

「でも、今のレウスさんの剣は」

「それはこれからが見どころさ」


 アクシャは眼鏡の位置を直すと、口の端に笑みを浮かべた。その視線の先では、ちょうどレウスがアロタスの振り回された腕を杖で受けたところだった。


 レウスは弾き飛ばされ、アロタスがそれに追撃をかけようとしたが、そこに空から岩の鎧を身にまとったクリストールが落下してきて、アロタスの首をつかんで地面に押さえつけた。クリストールはそこから右手を振り上げ、アロタスの首に手刀を落とそうとする。


 だが、その一撃が決まる前にアロタスは強引に体を跳ね上げ、背中のクリストールを空中に弾き飛ばした。そのままアロタスは空中にとどまり、周囲を見回す。


 すでにレウスは立ち上がり、マルハスがクリストールを回収していた。ベネディックはいつでも雷の矢を放てる体勢をとり、いつの間にかジョシンもキーツ達の横に来ていた。アクシャもアロタスと同じようにその全員を見ると、軽く息を吐き出してクロスボウを背中に収める。


「ま、これでこっちは大丈夫か。青年! もういけるだろ!」


 声をかけられたレウスは首だけ動かして軽くうなずくと、右手の杖の先端を下げて構えた。その様子にベネディックはヤルメル達にサインを送る。それを見たヤルメルとマルハス、クリストールの三人は後ろに下がっていった。


 そして、レウスとアロタスだけが対峙する場ができた。


「お前が一人で戦うのか」


 アロタスがそう言うと、レウスは無言で杖の先端をゆっくりと持ち上げていく。それが腰の高さまで来た瞬間、アロタスが一度跳ねるように上昇すると、レウスに向かって急降下をした。


 レウスはそれに反応して踏み出すと、アロタスに向けて正面から杖を突き出す。杖はアロタスの額をとらえるが、次の瞬間には先端から半分が砕けた。


 しかし、アロタスの勢いは少しも衰えず、そのまま右腕を振り下ろした。レウスはそれを左のガントレットで受ける。強烈な衝撃でレウスは地面ごと沈み、さらに一撃を受けたガントレットが砕けた。それでもレウスは体勢を崩さず、残っていた杖をアロタスに叩きつけた。


 その一撃は大したことがないように見えたが、アロタスの軌道を変えて地面に激突させる。それによって杖のほとんどは砕けてしまった。


 アロタスはすぐに立ち上がると右手に炎、左手に風をまとわせる。そしてその両手を頭上で組み合わせると、まるでトーラの精霊剣のような形になった。


「あいつ! あたしの必殺技を!」


 トーラが叫ぶと同時に、その渦巻く炎はレウスに向かって振り下ろされた。レウスはあっという間にその炎に飲み込まれる。


 だが数秒後、その炎は中心から真っ二つに切り裂かれ、無傷でレウスの姿が現れた。その振り上げられた右手には一見何の特徴もないロングソードが握られ、左手には黒い鞘が握られていた。


 そして、レウスが軽く地面を蹴ったように見えた次の瞬間、その姿はアロタスの目の前に到達し、ロングソードが振り下ろされていた。


 アロタスは金縛りにあったかのようにその一撃を無防備に受け、頭から真っ二つに両断されていた。レウスはその結果を見ずにアロタスに背を向けると、ロングソードを鞘に収め、アクシャに向けて口を開く。


「終わりました」

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