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異端の継承者  作者: bunz0u
第三章
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混沌の力の持主

「悪魔の融合体ですか?」


 ヤルメルは隣のベネディックに顔を向ける。


「そうです。あのレウス君が言うことですから、間違いではないでしょう。アロタスと名乗っているようですが」

「ふざけた名前ですね。でも、あの二人が苦戦するほどですか」

「そういう雰囲気でした。もしかしたら、悪魔二体の融合というのは隊長が相手をしている悪魔よりも性質の悪いものかもしれません」

「はい」


 ヤルメルはそれにうなずくと、ベネディックと並んで先を急いだ。そして、その向かっている先、街の広場の上空には不穏な風が渦巻いていた。


「これはだいぶまずいんじゃないの」


 トーラはつぶやき、上空のアロタスを見上げる。その周囲の地面は様々な攻撃によって大きく抉れ、無事なのはトーラのごく近くだけ。反対側のレウスに目を向けると、そこも同じようになっていて、追いつめられているのは明らかだった。


 それとは対照的にアロタスは無傷で、まだまだ全力には程遠いように見える。


「人間でも数を集めれば力になるな。それに、この世界にも馴染んできたらしい」


 そう言うとアロタスは手を上空に向けた。渦巻く風がそこに集まっていき、手のひらに収まるほどの球のように圧縮された。そして、それが真下に向けて落とされる。


 それが地面に落ちると同時に、衝撃波が広場に走った。トーラとレウスは体勢を崩さずにそれをしおぐが、キーツは狼にしがみついてなんとか踏みとどまった。


 次の瞬間、動きを止められたトーラの前にアロタスが姿を現していた。トーラは咄嗟に剣を持ち上げるが、そこにアロタスの蹴りが直撃する。


 トーラは衝撃で後方に飛ばされ、次の瞬間にはレウスが動く前にアロタスはその背後をとっていた。レウスはそれに反応して振り向きざまに剣を薙ぐ。


「なるほど」


 剣を無防備に胴で受けたアロタスだったが、切れないどころか何の衝撃もないようだった。レウスはすぐに剣を引くが、それと同時にアロタスの足が振り上げられる。防御はしたがレウスは弾き飛ばされ、アロタスはキーツと狼に顔を向けた。そして、その姿はキーツの手前まで移動していた。


 しかし、狼がその前に跳び上がり、牙をむいていた。アロタスは右腕を持ち上げ、そこに狼が食いつく。すぐに腕が上に振るわれるが、狼は顎に力を込めて放さない。直後、アロタスは腕を振り下ろし、狼ごと地面に叩きつけた。


 地面が大きく陥没したように見えたが、そこには青いネットのようなものが発生していて、狼は直接地面に叩きつけられてはいなかった。


 狼は顎を開けると、ネットの反動を利用して後方に跳び、キーツの前に立つ。


「大丈夫かい?」


 キーツはすぐに狼に駆け寄り、狼はそれに対して何かを決意したかのような目を向ける。それから姿勢を低くして、動きを止めたアロタスと対峙した。アロタスはそれを値踏みするように見てから、右手を広げた。


「消えろ」


 言葉と同時に右腕が振り上げられ、地面が割れていく。それが狼の足元に到達した瞬間、狼の体から強い光が発せられた。その光はアロタスの攻撃を無効化すると、一瞬で広場全体に広がった。


「これは…?」


 立ち上がったトーラが手で目を覆いながらつぶやくと、その光は徐々に狼がいた位置に収束していく。それから、トーラの目に映ったのはキーツの前に立つ人影のような形の光だった。その場にいる者達は全員何も言えずに、その光に注意を引きつけられる。


 そして、光は全身に毛皮をまとった子どもへと形を変えていく。アロタスはその上に飛ぶと、上空から子どもに向かって雷を落とした。


 だが、その一撃は子どもの頭上で弾け飛び、周辺に拡散させられる。それを見たアロタスはさらに上昇し、一度距離をとった。


 狼が姿を変えた子どもはしばらくそこから目を離さなかったが、アロタスに動きがないのと、トーラとレウスが立ち上がったのを確認すると、キーツに体を向けた。


「君は、それが本当の姿なのかい?」


 子どもはそれに無言でうなずき、キーツの右手を両手でつかんだ。


「守る、から」


 ぎこちなくそう言うと、キーツのことを真っ直ぐ見上げる。キーツはその視線を真っ直ぐ受け止めると、かがんで目線の高さを合わせた。


「僕をずっと助けてくれてたんだよね」


 キーツは左手を子どもの右肩に置き、微笑みを浮かべた。


「それに今も、本当にありがとう。なんでかは聞かないよ、それは大事なことじゃないからね。でも今は」


 そこでキーツは立ち上がり、上に目を向ける。


「ここをなんとかしないと」


 その言葉を理解したらしく、子どもはキーツの手を放して振り返ると、アロタスを見上げた。アロタスは右腕を振り上げようとしたが、そこに右側からトーラが飛び込んでくる。


「相手はこっちだ!」


 白く輝く聖剣を袈裟切りに振るうが、アロタスはそれを少し体を動かすだけで空振りさせた。しかし、反対側には魔剣に青い炎をまとわせたレウスが到達していた。


「フッ!」


 鋭い気合いと同時に剣が鋭く突き出されるが、アロタスはそれを左手でつかむ。突きの勢いは止めたが、炎はその手を焼き、さらにそこにトーラの空振りの勢いを利用した一撃が振り下ろされた。


「この程度か」


 トーラの聖剣はアロタスの首筋をとらえていたが、わずかに刃を食い込ませている程度だった。アロタスはいきなり体を高速回転させ、トーラとレウスを弾き飛ばした。


 その回転のまま上昇していき、ある程度の高度まで到達してから、地上のキーツと子どもに向かって急降下をしかけた。


「下がって」


 子どもがそう言うと、その足元から白と黒の光が発生する。その二つの光は柱となってアロタスと激突した。


 両者は一瞬だけ拮抗するが、すぐに光の柱が優勢となり、アロタスの体を空高く打ち上げた。その勢いはあっという間に姿が見えなくなるほどで、光の柱が消えてもアロタスが落ちてくる様子は全くなかった。


 そして、姿を現した子どもだったが、キーツはその姿が変わっていることにすぐに気がついた。


「それは、その耳と尻尾は?」


 子どもは自分の頭の三角の耳を撫でて尻尾を動かしてみせると、笑顔を見せる。それから口を開こうとしたが、それは上空からの巨大な圧力で止められた。


「大きいの、来る」


 その言葉が終わる前に、空から轟音が響くと、そこには巨大な白い何かが忽然と姿を現していた。それはすぐに落下を始め、かなりの高度のはずなのに轟音が響き始める。


「いや、それはないでしょ」

「悪魔に常識は通用しませんよ」


 顔をひきつらせたトーラと、あまり慌てた様子のないレウスだったが、二人とも同じように何も出来ずにそれが落ちてくるのを見ているだけだった。


 数秒後、四人の前には巨体に似合わぬ柔らかさで着地した、十倍以上のサイズとなったアロタスがの姿があった。


「お前達と遊ぶのはもう終わりだ」


 王都全体を揺るがすような声が響き、その巨体が小さく一歩踏み出すと、振動が強烈に響く。トーラはバランスをうまくとると、聖剣を構えなおした。


「ま、やるっきゃないか」


 他の三人も言葉を発することはなかったが、全員トーラと同じで、少しも怯んだ様子はなかった。

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