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異端の継承者  作者: bunz0u
第三章
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オーバードライブ

 アライアルはボーンドラゴンを大きな公園まで誘導し、対峙していた。両者のサイズには大きな差があるが、アライアルには少しもそれを感じさせないだけの落ち着きがあった。


「さて、そんだけ立派な体が作れて、また俺を狙ってきたのはどんな理由だ?」


 ボーンドラゴンであるイエイズデーモンは口の中からムカデの頭部を出し、その頭部から人間の上半身のようなものを作り出した。


「お前と決着をつけにきた」

「へえ、いいこと言うじゃないかよ。見る目あるぜ、お前は」

「お前を倒すことができればこの体の有用さが証明できる」

「その体ね。まあ、見たところ魔物の寄せ集めだな。基本はボーンドラゴンらしいが、体を覆ってるのはごった煮か。短時間でそれだけやったのは褒めてやるよ」


 アライアルは口の端に笑みを浮かべ、右の拳を正面に突き出す。


「いいぜ、とことん相手をしてやるよ」


 それから軽く腰を落とすと、構えをとった。イエイズデーモンはムカデの体を口にしまうと、威嚇するように翼を大きく広げた。そして、体を回転させて尻尾をアライアルに向かって横殴りに振るう。


 アライアルは跳躍すると、その尻尾が自分の下を通過する瞬間、そこに足をついて高く飛び上がった。


「モードミラージュ!」


 イエイズデーモンより高い位置に到達していたアライアルの姿は瞬時に五人にまで増える。イエイズデーモンは本体に向けて黒いブレスを放つが、分身がブレスの前に集まり、さらにアライアルはその分身を蹴って高く空に舞った。


 ブレスが分身を瞬時にかき消すと、それは方向を変えてアライアルも巻き込もうとする。


「モードファントム! シールド!」


 アライアルが左手を突き出すと、その前に全身を覆うほどのサイズの輝く盾が出現した。ブレスがその盾に激突すると、あっさりと霧散していった。


「クロウ!」


 アライアルはそのままイエイズデーモンの頭部に向かって落下し、右手か

ら伸ばした光の爪を振り下ろす。その一撃は狙い通りイエイズデーモンの頭部を直撃して火花が散るが、表面を浅く削っただけで大した効果はなかった。


「バースト!」


 アライアルはすぐに爆発を起こし、その衝撃を利用して後方に飛ぶ。次の瞬間にはそこをイエイズデーモンの爪が通り過ぎていた。


 さらに着地したアライアル目がけ、その手が地面に叩きつけられる。その一撃は地面を大きく抉るが、アライアルは前方に転がってそれを潜り抜けていた。そうして、そのままイエイズデーモンの懐に潜り込むと力強く踏み込む。


「バーストアッパー!」


 アライアルの突き上げられた右の拳がイエイズデーモンの胴体に当たると同時に、そこに圧縮された強力な爆発が起こった。


 その一撃は巨大な竜の体を浮かび上がらせる。


「モードミラージュ! ファイアフォーム!」


 アライアルの頭上に分身が現れ、それが一気に炎の塊となった。地面を蹴ったアライアルがそれに飛び込むと、一瞬で全身に炎をまとい、その勢いのまま空中のイエイズデーモンに今度は左の拳を打ち込む。


 そして、拳から噴き上がる炎によってイエイズデーモンの体は大きく空中に打ち上げられていた。アライアルは炎の勢いも足して地面を蹴ると、すぐさまイエイズデーモンの上をとる。


「さあ、ここからだぜ!」


 アライアルが両手を広げると、身にまとう炎が大きく広がり、その体を空中に制止させた。それに応じるようにイエイズデーモンも翼を広げて瞬時に体勢を立て直す。


 間髪入れずにその口から黒いブレスが放たれる。アライアルは降下しながらそれをかわし、右の拳をイエイズデーモンの頭部に叩き込もうとした。


 だが、ブレスが途切れると同時にムカデの体が飛び出し、アライアルの拳を弾いた。さらに巨体に似合わぬ速度で尻尾を振り回して上から叩きつける。


 アライアルはそれを左手一本で受けるが、衝撃はもろに受け、凄まじい速度で叩き落とされた。そのまま地面に激突すると、間髪入れずにイエイズデーモンがそれを圧殺するために急降下をして押し潰すように腹から着地した。


 数秒間、何も動きはなかったが、イエイズデーモンの腹の下から赤い色の光が漏れだした。


「こいつを使うことになるとはな」


 声と同時に、イエイズデーモンの体が一気に持ち上げられた。それをやったアライアルの左腕からは赤い光が放出されている。


「お前を認めて使ってやるよ! オーバードライブ!」


 宣言した瞬間、アライアルの全身が赤い光に包まれ、右の拳がイエイズデーモンの腹に突き刺さった。その衝撃でイエイズデーモンはファイアフォームでの一撃よりも勢いよく空に打ち上げられる。


 それでもイエイズデーモンは空中で姿勢を整えるが、内部にダメージがあるようで、瞬時にというわけにはいかなかった。その間に、アライアルはゆっくりと構えをとると、空に向かって口を開く。


「次の一撃は重いぞ、お前も決める気でこい!」


 その言葉は届いたようで、イエイズデーモンが今までになく力を漲らせたのが遠目にもわかった。


「よし、いい子だ」


 アライアルを包む赤い光が右手と右足に集中していく。それからきっかり

三秒後、両者は示し合わせたかのように、互いに相手に向かって跳び出していた。


 両者が空中で激突すると強烈な衝撃が走り、公園の木が折れ、離れた場所にある建物の窓も一斉に割れていった。


 その一瞬の激突で両者は交錯し、互いの位置を入れ替えた。アライアルの右のガントレットは砕け、イエイズデーモンの胴体は大きく抉られていたが、両者ともすぐに振り返り、動きか0はらダメージは感じさせない。


「ったく、硬い鱗だぜ。ま、本命はこっちだ」


 赤い光をまとい空中で動きを止めたアライアルは右手を軽く振ると、その手で左のガントレットを撫でる。そして、その左の拳をイエイズデーモンに向けた。


「いいか! この一撃でお前に人間の力を思い知らせてやるよ! モードミラージュ!」


 アライアルの前に十体の分身が現れ、それがイエイズデーモンに向かって一直線に並んだ。イエイズデーモンはそれに向かって咆哮を上げると、地面をしっかりと四肢でつかみ、頭を引いて口に力を集中させていく。


「ファイアフォーム!」


 一直線に並んだ十体の分身が炎となり、アライアルは一直線にそこに向か

って頭から突っ込む。それが五体目まできたところで、イエイズデーモンから今までにないほど巨大であるが、同時に集束もされた黒いブレスが放たれた。


 分身と同化するたびにアライアルを包む炎は大きくなり、最後の一体と同化した瞬間、その炎が左腕に集中する。


「オーバードライブ!」


 さらに赤い光が左の拳に集まると、炎もそれと同化し、まるで太陽のような輝きを放った。そして、その拳が黒いブレスと激突する。


「おおおおおおおおおおお!」


 拳とブレスは拮抗したかのように見えたが、すぐにアライアルの輝く拳がそれを圧倒する。拮抗が崩れるとあとはあっという間で、一筋の輝く矢となったアライアルがイエイズデーモンの目の前まで到達するのは一瞬だった。


 そのまま輝く拳がイエイズデーモンの頭部を粉砕し、胴体の中心にまで大穴を開ける。アライアルは地面に激突する直前に無理やり足から着地すると、かなりの距離の地面を盛大に掘り起こしながらなんとか止まった。


「手間かけさせやがってよ。ま、これで充分だろ」


 そうつぶやくと炎と赤い光が消え去り、立ち上がったアライアルはほぼ真っ二つとなったイエイズデーモンに向かって歩いていく。


「さて、お前には俺の話をじっくり聞いてもらうとするか」

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