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《ユナセプラ外伝》「王妃ココ」  作者: 三千広瀬


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みにくい王妃さまの物語-3-

 お城に帰ってきた王妃ココを見た人々は驚きます。

 塔から落ちて行方不明になっていたので、亡くなったとばかり思って、お葬式の準備をしていたからです。

 しかも、たいへんに美しい若者がココと一緒にいて、王妃さまを守るようにぴったりとそばに寄り添っていたのです。


 彼をひと見た女性たちは、子供から大人まで、たちまちのうちに恋に落ちました。

 誰もが美しいその若者と話をしたいと思いましたが、彼はココのそばにいつもいて、ココとしか話をしません。

 城中の女性たちは、ココに会いに行けば、若者と会えると思い、王妃さまに会うために用事をつくって面会の申し込みをしました。

 ココが許せば会うことの出来る王妃の間には、毎日毎日長い列が続きました。

 しかしココはその部屋に現れることはありませんでした。誰もココに会うことは許されません。

 ココの体は、十年間の苦しみの為にすっかり病弱な体になっていたことと、守護妖獣がいなくなってからは生きる気力も失っていたのです。 

 若者と出会わなければ、あのまま湖に入って死んでいたかも知れません。

 お城に戻っても、誰かが自分を殺そうとしているとわかってからは、どんな人も信じられなくなっていたのです。

 お城に戻ったのは、魔石に封じられた守護妖獣を助けたい一心でした。

 あの時見た夢が真実ならば、守護妖獣の心はココのペンダントに宿っているのかもしれません。でも、話しかけてもペンダントのコインは何も応えてくれません。

 自分だってお城の中にいるだけで苦しかったのです。

 魔石に封じ込められて心と体がバラバラになって守護妖獣がどんなに苦しいか、想像するだけでココは心が苦しくて、涙がこぼれました。

 術をかけた魔道士ならなんとかできるかもしれませんが、魔道士はもうどこかにいなくなっていました。

 助けてあげられるのは、主人である自分しかいないとココは思って、お城に帰ってきたのです。

 若者は、ココの話を信じてくれました。


 そして、守護妖獣の心が宿るコインの輝きを守るために協力をすることを約束してくれ、時々どこかに出かけては、宝石を持ってきてくれました。

 そんな時、どうしても若者に会って自分のものにしたい、ココから奪いたいと思っている女性たちが、王さまの次に権力を持っている公爵に頼んで、王さま主催の舞踏会を開くことにしました。

 王さまは、王妃ココも若者を連れて舞踏会に出席するように命令を出したのです。

 ココは断りました。

 体は弱っていて、もうベッドから立ち上がることも出来ない状態だったのです。

 時々、若者が寄り添って庭に出るときだけ外の空気に触れるとことが出来ました。

 舞踏会に出席する体力もありませんでしたが、それ以上に美しく着飾った女性たちが若者に近づいてくることが嫌だったのです。

 自分に優しく接してくれる心優しく美しい若者が自分のそばから離れていくことが怖かったのです。


 ある時ココは若者に、どうしてみにくいやけどのあとを持っている自分に優しくしてくれるのかをたずねました。

 すると若者は、ココが想像もしていない話を始めました。


 若者は、とても愛している人がいるというのです。

 彼が愛している人は、生まれたときから目が見えないために、親に捨てられ、育ての親である大地主に朝から晩まで使用人として奴隷のように、こき使われながらも、辛抱強く、明るく生きていた同じ町の少女でした。

 一方、美しく生まれ育った若者は、誰からも愛され、女性たちから愛の告白を受けない日はない日々を過ごしていましたが、みんなが彼の美しく魅力的な外見だけを愛していることを知っていました。

 時々道で出会う目の見えない少女は、彼の顔も姿も知りません。初めて女の子と、ふつうの話をすることが出来ました。それが嬉しくて、彼がこっそりと何度も会いに行って話をするうちに、二人はお互いのことを好きになっていたのです。

 ところが、彼が旅に出ている間に、彼女は町からいなくなっていました。

 若者は家族と別れ、町を飛び出して、商売をしながら、彼女を探していました。


 そんな時にココと出会ったのです。

「外見しか見ようとしない人々から苦しんでいるあなたの心が、あの時一瞬にして私の心に重なったのです」

 若者は優しくココを見つめます。

 最初はこの美しい若者の心を捉えている女性がいることに、嫉妬の心を覚えたココでしたが、話を最後まで聞くうちに自分が泣いているのに気がつきました。

 自分はおじいさまに守ってもらい、お屋敷の中で不自由なく育ちました。

 結婚してお城に来てからは、夫から抱きしめてももらえないうちに見放されて、苦しくて悲しくて世界中で一番不幸だと信じていたのに、それがとても恥ずかしく思えたのです。


 親に捨てられる人がいること。

 目が見えない人がいること。

 奴隷のように休む間さえなく、お金ももらえないまま子供が働かせられていること。

 そんな人がいるなんて、今まで考えたこともありませんでした。


 目の見えない愛する人がいたこと。

 外見だけで見られることのつらさを知っていたこと。

 本当の自分をわかってもらえる喜びを知っていたこと。

 そのすべてがあったからこそ、若者はココを外見だけで嫌わないで、苦しんでいる心に気づいて、そばにいてくれたことを知ったのです。


 いろいろな感情が混ざって、ココは泣いていました。


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