第五章『宴』
それは色とりどりの『食卓』であった
スパイスを利かせた犬肉鍋、猫肉のローストとフライ、鳥肉の串焼きに唐揚げ、猿肉の香草炭火焼き、そして逃げた敵軍が残した食糧庫にあった穀物から作られたパンやミートパイ、
そしてメインとしてその中心に巨大な豚の丸焼きがあった
彼ら要塞ポグレムの兵たちはその倫理観から最初こそなんとか抵抗していたがそれを作った相手は元王宮料理人であるがゆえその腕前は確かなものでそのあまりに香ばしい香りと美味そうな見た目、そしてここ数ヶ月の空腹が食べないという選択を許してはくれなかった
実際、その料理は大変美味で彼ら兵たちははじめての美味しさに涙すら浮かべた者が居たほどだ
その中でアリシアはアチャフと向き合っていた
アチャフ「アリシアちゃん、僕は怒っているよ…理由はわかっているよね?」
アリシア「…っひゅ…あっ…あわわ…っ…ごっ…ごめんな…さいっ」
すっかりいつも通りになったアリシアはアチャフに必死で謝っているがアチャフは未だ怒っていた
一部の兵はアチャフをなだめようとしたが一切彼は聞き入れる気がない
アチャフ「いいかい?アリシアちゃん、確かにあの時、僕たちは飢えていて『料理人』として君は それを見過ごすことはできなかったのだろう」
アチャフは机に置いた手から伸びる指で机を叩く
アチャフ「僕らは『兵』だ
祖国のためならば命だってかけるつもりだし
時に必要とあれば敵の死肉だって漁る覚悟はあるつもりだったよ、だから今の料理に関しても僕は怒らない」
アチャフがそう言うと涙目になったアリシアは頭を上げる
アチャフ「だけど『君』は違う
君は『料理人』であって『兵』じゃないんだ
だからね」
そう言うとアチャフはアリシアの手を握る
アチャフ「もっと自分自身を大事にして
…本当に心配したからね」
アリシア「…っ…ごめん…なさいーっ」
アリシアはボロボロと涙を零しそれを見たアチャフは少し困った顔をした
「アチャフ~、英雄の姐御泣かすんじゃね~よぉ!」
「そうだぞー!アチャフ~っ!」
アチャフ「…うるさいな」
一部の兵が彼を弄るが彼はそれを若干鬱陶しそうにする
すると周りの兵たちはそんなアチャフを見てどっと笑う
そうして彼ら兵たちは飲み食い歌い笑いながら要塞ポグレムの夜は更けていった




