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ヤンデレ王子と風の精霊  作者: 東稔 雨紗霧
1st脱出

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9/20

1

 『あら、いらっしゃい。レイン』



 アリアが一旦脱出を諦めると、それを見計らっていたかのようなタイミングでレインが部屋に入ってきた。

 宙に腰かけ、おっとりとレインを出迎えたアリアに彼の方が面食らってしまう。



 「えっと、アリア? 怒らないんですか?」

 『え? 何がかしら?』

 「その……、アリアをこの部屋に閉じ込めた事です」

 『ああ、そのこと』



 おずおずと尋ねたレインにアリアは分かっているわよと頷く。



 『最近、レインは精霊の事に関して』『沢山勉強していたものね』『学んだ事を試してみたくなったのでしょう?』

 「……え?」

 『ヴァンも最初の頃は色々と実験をしていたもの』『懐かしいわぁ』



 目を細め、過去を懐かしむアリアにレインは頷いた。



 「そ、そうなんです! 精霊陣の書き方を練習したので本当に効果があるのか知りたくて!」

 『練習していたの?』

 「はい、アリアが警護から離れている時に。この大きさで書いたのは初めてでしたけどちゃんと書けたみたいで良かったです」

 『そう』『初めてにしては上手に書けていると思うわよ』『線の歪みも許容範囲内だし』『なにより、きちんと発動したもの』

 「上手くいって良かったです……本当に良かった」

 『え?』

 「なんでもないです」



 ポソリと呟いたレインの言葉が良く聞こえなかったアリアは聞き返したがはぐらかされた。

 そのままどんな手段をしても脱出できないのかを実験する。

 窓を開いた状態でも透明な壁があるようでそこから脱出は不可能だった。

 窓を開けた際、この術は中だけではなく外からの空気も通さない事が判明した。

 精霊封印術は契約の有無にかかわらず精霊を強制的にその場に拘束する術だ。

 精霊は自らの領分と少しでも繋がりがあればそれを足掛かりにどこへでも移動できる。

 火の精霊が焚火から焚火へと移動できる様に風の精霊であるアリアを閉じ込めるのだから外部との空気が遮断されるのも納得だった。

 ある程度検証し終えた頃にはもう、いつもの警護終了の時間だった。

 時を告げる鐘が鳴っている。



 『やっぱり実践の方が色々学べていいわね』『書物には書いていない事も分かったし』

 「そうですね」

 『さて、レイン』『これで検証は終わりね?』『そろそろ解除してくれないかしら?』

 「……」

 『レイン? どうしたの?』

 「……解除は、しません」



 レインの言葉に聞き間違えたのかとアリアは首を傾げる。



 『ごめんなさい』『聞き間違えたわ』『解除してくれないかしら?』

 「解除はしません」



 アリアの顔を見据え、今度ははっきりとレインは言った。



 「すみません、アリア。僕は嘘を吐きました。……本当は検証なんかじゃなくて、ただアリアをこの部屋に閉じ込めたかったんです」

 『何故?』

 「その、アリアが最近あんまり一緒にいてくれないから、それなら何処にも行かない様に閉じ込めてしまえと思って……僕はアリアにずっと傍に居て欲しいんです」

 『? 傍にいるわよ?』



 レインにはアリアが居ない時には常時眷属を付けている。

 眷属はアリアの分身の様なものなのだからアリアが傍にいるのと変わらないとアリアが言うとレインは首を横に振った。



 「アリアの分身かもしれませんが僕にとって眷属はあくまでも眷属でアリアじゃないです。僕はそれでは不満です」

 『……じゃあ、どうして欲しいの?』

 「頭を撫でてくれたり抱き締めてくれたり、褒めたり叱ったりして欲しいです。それで朝起きた時から寝るまで、いえ、寝てからもずっと、ずーと傍にいて欲しいです。あの男(ヴァン)じゃなくて僕と一緒に居て欲しいです。アリアに僕のものになって欲しいです」

 『警護の時間を延ばすのは無理だけれども頭を撫でたり』『抱き締めたり褒めたり叱ったりはこんな事しなくてもできるわよ?』『それに、前にも言ったけれども私はヴァンと契約しているの』『レインと契約をするのは無理よ』

 「はい、だからこの場に拘束したんです。前に兄さま達が言っていたのを思い出したんです。

欲しい物は奪ってでも手に入れるって。

 これならアリアはあの男の元にも行かないですしずっと僕の傍にいてくれますよね」



 レインはそう言って嬉しそうにアリアに抱き着いた。


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