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ヤンデレ王子と風の精霊  作者: 東稔 雨紗霧
2st監禁

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17/20

5



 「ああ、アリア! 漸く、漸く手に入れる事が出来ました!これでずっと一緒に居られますね!!」



 紫色の闇に囲まれた空間でその様子を眺めるアリアは溜息を吐いた。

 出会ってから約五年。

昔はあんなに素直で良い子だったのに一体どうしてこうなってしまったのか。


 ひとしきり頬擦りをして気が済んだのかレインはベッドから起き上がると部屋の一角へと向かう。

 そこには大きな布を被せた物があり、布を外すと大きな姿見が現れた。



 「見て下さいアリア。これは特注で作って貰った鏡なのですが、アリアの身長と同じ位の大きさなんですよ。

 僕の手の平の大きさのアリアも素敵ですが、これでは顔がよく見えないので頑張ってこの宝石と鏡が繋がる術式を考えたんです!ほら、見てて」



 手にしている首飾りのアメジストの部分が鏡に触れると、そこに憮然とした表情のアリアが映し出された。

 レインの手元からの視点と鏡からの視点、二つの視点が自分の視界へと収まるが幸い、普段から分身を用いて周囲の情報収集を行うアリアは直ぐに順応できた。

 気だるげに空中で足を組んだ格好で映るアリアにレインがうっとりとした表情を浮かべる。



 「ああ、アリア。こうすると本当に一緒にいるんだと実感できますね」

 〔……あんな事をしておいて嬉しそうね、レイン〕

 「はい、とっても! アリアには申し訳ない事をしたとは思っているのですが、こうでもしなければ近々二度と会う事が出来なくなっていたのでしょう?」



 レインの言葉にアリアは視線を反らす。

 そう、実はアリアとヴァンは半年後の人事異動で遠方へと移動する予定だったのだ。

 レインには何も告げず、置手紙だけして去ろうとしていたのだが、まさかバレていたとはと決まりが悪くなる。



 〔何も言わずに居なくなろうとしたのは謝るわ。ごめんなさい。

 けれども、貴方のやり方は強引すぎるわ。 命を盾に脅しをかけるだなんてやり過ぎよ〕

 「ああいう手段に出ざるを得なかったのはアリアのせいですよ。

 僕にはまだ人事に口を出せる程の力はありませんから、離れてしまう前に繋ぎ留めるにはああするしか方法はありませんでした。

 そもそも、どうして何も言わずに居なくなろうとしたのですか? あのヴァンの差し金ですか?」

 〔違うわよ。レインも六体もの高位精霊と契約を結んだしもう傍にいる必要性もないかなと思って。それに、そろそろ親離れさせた方がレインの為かと〕

 「僕の事なのにどうして勝手に決めてしまうのですか? それにアリアはアリアです、親ではありません」

 〔……そうよね〕



 親の様に愛情をもって接していたのだがその愛情が伝わっていなかったのかと肩を落としたアリアに慌ててレインが言葉を重ねる。



 「アリアは親と言うには別格で僕の中では一番大切な人なんです。だからアリアは親とは言えません」

 〔なるほどね〕



 大切だと言われて嬉しくなったアリアは微笑んだが、直ぐに今の状況を思い出す。



 〔黙っていた事への意趣返しはもう済んだでしょう? 気が済んだのなら私を解放して頂戴〕

 「嫌です。既にアリアは僕の物なんです。諦めて下さい」

 〔貴方の物って昔からこだわるけれども、私はヴァンの物よ他の誰の物でもってちょっと待って、どうしてレインと言葉が通じるの!?〕

 「ふふ、やっと気が付いたんですねアリア。僕、昔からずっとアリアの声を聞いてみたかったので、今とっても嬉しいんです!」



 精霊の声は契約者と同じ精霊にしか聞こえない。

 ヴァンとアリアの契約が切れていないのは命の楔で繋がっている事から感じ取れる事からまだアリアの契約者はヴァンだと分かる。

 それならばどうして声が通じるのか。



 「精霊封じの呪具、これに封じられてしまえば例え他の人間と契約していようが呪具の持ち主だけしか精霊の声を聞く事ができなくなるのですよ。

 まあ、それは普通の人間の場合で精霊術師である僕との場合はアリアは僕の契約精霊とも会話はできるみたいですがね」

 〔そうなの?〕

 「更に素晴らしい事に呪具には所有者、契約者関係なく誰でも魔力を供給する事ができるので、契約していない僕でもアリアに魔力を与える事ができるんですよ。

 まあ、代償として契約していない精霊には魔力の供給効率が途轍もなく悪くなるみたいですが、幸い僕の魔力量は王国一だそうですから決して飢えさせはしないので安心してくださいね。

 居心地も悪くないでしょう?

 前回はアリアには辛い思いをさせてしまいましたからね、今回はそんな苦しみを与えない為にも万全に準備してきたんです。

 それに、これでアリアが僕以外から魔力を供給する必要性はなくなりましたよね?

 僕だけがアリアに魔力を供給できる、ああ、なんて素晴らしいん響きなのでしょう!」



 恍惚とした表情で嬉しそうに鏡を撫でるレインにアリアは頭を抱えたくなる。

 どうにかしてここから逃げ出すためにまずは魔力供給問題から攻めようと考えていたのが早々に頓挫した。

 諦めて率直に聞くことにする。



 〔残念だけれども居心地は極めて悪いわよ……レイン、どうしたら私をここから解放してくれる?〕

 「僕と契約を結んでくれたら」

 〔……ここから出す気は無いって事ね〕



 ヴァンが生きている限りレインはアリアと契約は出来ない。

 かと言ってレインはアリアと約束をしたのだからヴァンを殺す事はない。

 つまり事実上の永久禁固だ。



 「そうだ、先ほどの会話をアリアは聞いていたと思いますがもう一度言っておきますね。

 契約者は離れた所から自分の元へと契約した精霊を召喚する事ができますが、これにはそんな事ができないようにそうなれば召喚者の命を奪う術式が組み込まれています。

 それはアリアが此処から自力で逃げ出す事にも適応されるので心得ておいて下さいね?」



 にっこりと笑いながらそう告げるレインがアリアには理解できなかった。

 レインの姿をした得体の知れないモノにすら見えてきた。

 本当にこのレインは自分が知っているレインなのか。

 あの出会った頃の純真な彼は一体どこに行ってしまったのだろうか。



 言うだけ言うと勉強の時間だと鏡から離れるレイン。

 レインの目が離れたこの隙にと自分のいる空間を探ってみる。

 手始めに目の前にある外界と繋がっている場所に手を触れると透明な壁の様な物があるのが分かった。

 押して見ても叩いたり蹴ったり能力を使ってみるがびくともしない。

 仕方がなくそれ以外の紫色の闇に囲まれた場所を探るが奥行きはどこまで行っても終わりの無い広さかと思いきや振り返ると外界を繋がる壁が移動する前と同じ距離にある。

 何度か繰り返しても変わらず、行けども行けども果ての無い空間に無駄なのだと悟った。



 壁の前へと戻ったアリアは拳をにぎり、目の前の透明な壁へと叩きつけたがびくともせず、現状は何も変わる事はなかった。



 こうしてアリアは再び捕らわれの身となった。



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