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ヤンデレ王子と風の精霊  作者: 東稔 雨紗霧
2st監禁

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13/21

1

 レインによるアリア監禁事件から数日が経った。

 あの日以来ヴァンはアリアの能力制限を大幅に緩め、攻撃ができる程までアリアの行使できる能力は広がった。

 子供一人を余裕で浮かばせる程だったのが今では大人十人を余裕で浮かばせる程にまでになったのだ

 アリアの全力は大人三十人を浮かばせる程なのでまだ三分の一程度しか解放されていないが、当初はヴァンに敵対する者に直ぐに攻撃しようとするアリアを制限するために紙や埃程度しか浮かばせられない本来の力の二十分の一程度しか解放されていなかったのだ。

 最初は久々の出力に力加減を間違え、ヴァンの職場でハリケーンモドキを起こしてしまったのは記憶に新しい。

 ヴァンはこれだけ解放してもまだアリアが出力に慣れる度に徐々に増やしていくつもりだ。

彼がどれだけレインを警戒しているのかが窺える。

 更にヴァンからレインの前では今まで通りの出力しか出せない様に振舞えと厳命を下されている。

 幼子の若気の至りに警戒しすぎなのではないかと呆れたアリアにヴァンが真剣な顔で首を振った。



 「いいや、あれは幼子なんて思って相手をしていれば足元を掬われる。アリア、くれぐれも注意な」

 〔心配性なんだから〕

 「五月蠅い。そろそろ時間だろう? いってらっしゃい、くれぐれも気をつけるんだぞ」

 〔分かったわ〕



 ヴァンに見送られアリアは久々にレインの元へと向かった。

 衰弱しきったアリアの養生のためと力の制御のためにレインの警護から外れていたのだが、レインの事だから自分の行いによりアリアが愛想を尽かしたのではと思っているわねと予想しながらアリアはいつも通り壁からレインの部屋へと入った。



 「!? ……ア、アリア?」



 目を見開き信じられないと言いたげなレインにアリアは笑顔でひらひらと手を振る。



 『はぁーい。アリアよ』

 「……アリア……ありあぁ」



 泣き出しそうな顔で否、涙を流しながらレインが走り寄りアリアに抱き着いた。



 「ごめんなさい!ひっく、あんなことしてごめんなさい!だ、だから僕を嫌わないで下さい!ふっ、居なくならないで下さい!!」



 嗚咽混じりにそう泣きながらそう言ったレインにやっぱり気に病んでいたかとアリアは苦笑しながら空気の塊を作りレインを受け止め、そのままレインを浮かばせ、ソファーへと運ぶ。

 風で頭を撫でながら廊下に侍女以外居ない事を確認してから、近くにあったポットと洗顔用の桶とを風で浮かばせレインに気付かれない様にゆっくりと部屋の扉を開き、それを扉の傍に立っている護衛兼侍女へと飛ばしてお湯を頼む。

 数少ないアリアの存在を知っている存在である彼女は慣れた物で目の前で浮かぶ物体に驚く事無く、お湯を沸かしに厨房へと向かう。

 それを空気の動きで察しながらアリアはレインが落ち着くまでゆっくりと彼の頭を撫で続けた。


 しばらく泣いたレインがようやく落ち着く頃、丁度侍女がお湯を運んできた。

 侍女が扉を叩く前にその前に文字を浮かばせ、アリアがポットと桶を受け取る。

 少しレインには熱いわねと判断したアリアは桶に水を追加してかき混ぜ、タオルを突っ込んで軽く絞る。

 部屋に突然流れた水の音にレインが驚いて顔を上げた。

 その顔にアリアは一度笑いかけるとタオルを落とす。



 「うわっぷ!」

 『一度スッキリなさい』



 タオルで顔を覆われており文字が見えないもののアリアの言いたいことが分かったレインは大人しくタオルを手に取り、涙と鼻水で汚れた顔を拭った。

 その間にとアリアは飲み物の準備をする。

 カチャカチャという音と共に部屋に紅茶の優しい香りが流れ、顔を拭き終わったレインからタオルを受け取ったアリアは代わりに紅茶の入ったカップを渡す。

 アリアによって丁度いい温度に冷まされた紅茶で喉を潤したレインがほぅっと息を吐いた。

 


 「取り乱してしまい、すみません」

 『落ち着いたかしら?』

 「はい」

 『良かった』

 「……アリア、その、ごめんなさい。僕は危うくアリアを殺してしまうところでした」

 『いいのよ、約束の期間よりも早く解放してくれたじゃない』

 「それは……アリアがあれ以上衰弱していくのを見たくなくて」

 『優しいのね』

 「……違います、優しいのは、僕じゃなくてアリアです。僕の我侭でアリアをあんな状態にしてしまったのだから優しい訳ないじゃないですかぁ」



 そう言うとくしゃりと顔を歪ませたレインの目元にアリアは水で濡らしたタオルを当てる。



 〔落ち着くのはもう少し先ね〕



 一先ずレインを落ち着かせてから大事な話をしようとアリアはレインの頭を撫で続けた。



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