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第8章 兄妹の影、触れた瞬間――美音襲撃事件

 ◆1 不吉な夜へ ―― 美音の単独行動


 夕方、美音はレッスンを終え

 スタッフに見送られながら夜の街を歩いていた。


「今日は帰り遅いの?

 車呼ぼうか?」


「ううん、大丈夫。家、近いし。」


 美音は笑って言った。

 しかしその瞳は、いつもより沈んでいる。


 レッスン終わりの疲れではない。

 胸の奥でずっと揺れ続けている“影”のせいだ。


(……呼ばれた気がする。

 昼間からずっと……)


 White Drop Caféで震えたスマホ。

 誰からでもない通知。


(“ミオ”って……兄さんだけが呼んでた……)


 幼い日の記憶が、朧げに浮かぶ。


 暗い廃工場。

 腕を庇うように立つ兄。

 鉄骨が落ちて、血があふれて――


(あの時ついた傷……

 兄さんの……)


 その瞬間、街灯がゆらりと揺れた。


 風は吹いていない。


「……?」


 美音が振り返る。


 ――いる。


 黒いコート。

 能面のような白い仮面。


 影喰いのピエロ。


 美音の鼓動が凍りつく。


「……兄、さん?」


 喉が震えた。


 ◆2 襲撃 ―― “罪”が溢れる瞬間


 影喰いのピエロは、一歩。


 そしてまた、一歩。


 音はしないのに、

 美音の脳内だけで“ギィ……ギィ……”という歪んだ軋みが響く。


(来る……!)


 美音は後ずさり、壁にぶつかった。


 ピエロが手を伸ばす。


 その瞬間――


 白い手袋の隙間から、腕の傷跡が見えた。


 火傷と裂傷が入り混じった独特の線。

 幼いころ、美音だけが知っている傷。


 全身が震えた。


「兄さん……!!」


 涙が溢れる。

 嗚咽のような声が漏れた。


 しかし――


 影喰いのピエロは、首を傾けただけだった。


 まるで「誰だ?」と言うように。


「……やっぱり、気づいてないんだね……」


 美音の胸が音を立てて崩れていく。


 恐怖と、喜びと、悲しみ。


 そして――

 ピエロの指先が、美音の胸元に触れた。


 次の瞬間。


 ブシャアッ!


 黒い“罪の粒”が空間に散った。


「きゃ――ッ!!」


 美音は膝から崩れ落ち、呼吸を乱す。


 視界が白く滲む。


(……これ、私の……罪……?)


 罪の粒が床に落ちるたび、

 美音の脳裏に走馬灯のように

 “過去の失敗” “裏切り” “弱音” がフラッシュバックした。


 そして意識が落ちかけたその時――


「美音さん!!」


 甲高い声が響いた。


 ◆3 麗、到着 ―― そして“見えない真実”


 麗は全力で駆け寄り、

 倒れている美音を抱き起こした。


「大丈夫!? しっかり!!」


「……麗、ちゃん……?」


 朔弥も駆けつけ、ピエロを追って周囲を見渡す。


「くそっ……もういない!」


 麗は美音を抱えたまま顔を上げた。


「朔弥さん! 仮面の目撃者は? 痕跡は!?」


「……足音も、影もない。

 “消えた”としか言いようがない。」


 悔しそうな表情の朔弥。


 その彼を……美音は涙越しに見つめた。


(……兄さん……やっぱり……あなた……)


 しかし麗の視線は美音に向けられている。


「美音さん、気をしっかり持って。

 あなた、命を狙われてた。

 見た相手の顔……覚えてる?」


 美音の喉が詰まった。


(兄さんの名前……言ったら……兄さん、捕まる……

 ダメ……)


「……ううん。

 なんにも、見えなかった……」


 美音は震える声で嘘をついた。


 その瞬間、朔弥の表情がわずかに陰った。


(……なぜ嘘を?

 美音……なにを隠してる……?)


 だが、その違和感を言葉にできずにいた。


 ◆4 美音の“決断”――偽物はここから始まる


 救急車が到着し、美音は担架に乗せられた。


「麗ちゃん……」


「うん?」


「……迷惑、かけたくないの。

 だから……あんまり、近づかない方が……」


「なにそれ!?

 むしろ逆だよ!」


 麗は美音の手を強く握った。


「美音さん、あなたを守りたいんだよ。

 友達でしょ?」


 美音の目から涙がこぼれた。


(……麗ちゃん……ごめんね……

 私……これから嘘つかなきゃいけないの……)


 担架の上で、美音は静かに決意した。


 “兄を逃がすための影喰いのピエロ(偽物)になる”


 罪を奪う力は無い。

 ただ衣装を着て、警察の捜査を惑わせる。


 それしか、兄を守る方法が思いつかなかった。


 その頃――

 朔弥は誰にも見えない場所で拳を震わせていた。


(影喰いのピエロ……

 なぜ美音を狙った……?

 俺は……忘れている何かがあるのか……?)


 胸の奥が軋む。


 まるで、自分自身の影に締め付けられているように。


 ◆5 宵宮家――母の怒り、叔父の疑念(コミカル枠)


 美音襲撃事件の直後、麗は家に連れ戻され――


 **家庭内取り調べリビング**が発動した。


「麗!! なんで事件現場にいるのよ!?

 あんた影喰いのピエロの“お友達”なの!?」


「違うよ!? 巻き込まれただけ!!」


 美羽は机をバンッ!!


「巻き込まれ体質にも限度があるわ!!」


 その横で大河総監が腕を組み、低い声で言う。


「麗。

 おまえ……もしかして捜査本部より仕事してないか?」


「叔父さんまで言うの!? ひどくない!?」


 柚葉が横から小声で囁く。


「麗……お母さん、完全に鬼だよね……」


「ほんとマジ鬼……」


 二人は小声で震えた。


 美羽の視線がビシッ!!


「聞こえてるわよ!!」


「「ひっ!!」」


 朔弥は遠巻きでそれを見て、なぜか微笑した。


(麗は……こんな家族に守られてるんだな……)


 ◆6 章の終わり――影武者、美音の覚醒


 病室。


 美音は一人で、鏡を見つめていた。


 涙は止まった。

 表情も整えた。


 鏡の奥で、黒い影が揺れた。


(……兄さん。

 私が……あなたを守るから……)


 影は美音の背後に寄り添うように立っていた。


 そして美音はつぶやく。


「――“偽物の影喰いのピエロ”は、私がやる。」


 その瞬間。


 本物と偽物が交互に事件を起こす悪夢が、静かに幕を開けた。


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