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第4章 『三つの影が示すもの』

 ■1 犯行現場へ


 翌朝。

 麗は大学へ向かう途中、気になって仕方なくて──

 つい、昨夜メールのあった公園へ足を向けてしまった。


 警察の黄色い規制線。

 報道のカメラ。

 野次馬。


(……やっぱり何かあったんだ)


「君はまたここか」


 突然、横から声がした。


「うわっ!? ……朔弥さん」


 御影朔弥が現れ、麗を見るなりため息をついた。


「事件に首を突っ込む癖でもあるのか、君は」


「いや、ただ……通りかかって」


「昨日と同じ嘘だな」


(この人、地味に失礼なんだけど!!)


 朔弥は麗の横に立ち、公園の奥を指した。


「被害者は──律野りつの志保。

 32歳、フリーアナウンサー。

 昨夜23時ごろ、ここで倒れていた」


(アナウンサー……事件2の“伏線”になる人だ)


 朔弥は眉をひそめる。


「そして現場には、例の紙切れが落ちていた」


『罪は光の中に置き去られた。

 影は私がいただく。──ピエロ』


(……文字の癖、昨日と同じ)


 麗はぞっとした。


 朔弥が横目で麗を見る。


「君、昨日……“影じゃなくて罪が奪われる”って言ってたな」


「えっ」


「根拠は?」


「……た、たまたま!」


「たまたまで“核心”が言えるか」


(やばっ、この人勘がいい……!)


 朔弥はさらに続けた。


「ちなみにだが……この公園、影が“3つ重なる地点”が異常に多い。

 まるで計算して照明を配置したように、な」


「…………」


(昨日のメールのヒント、そのまま……)


 麗の沈黙を、朔弥は見逃さなかった。


「君は、なにか知ってるな?」


「…………」


「隠すな。危険だ」


(くっ……)


 そのとき──


 パトカーの無線が鳴った。


『──影喰いのピエロと思われる人物の目撃情報あり!

 場所は……○○商店街裏路地!』


 朔弥の表情が一瞬で変わった。


「宵宮、戻れ! 俺は向かう!」


「え?」


「巻き込まれるな!」


 朔弥は駆け出す。


 麗は少し迷ったが──


(……行く)


 走り出していた。


 ■2 裏路地で


 商店街の裏路地は、昼でも薄暗い。


「こ、怖っ……」


 なぜか柚葉が横にいた。


「なんでいるの!?」


「え? 麗が走っていくから、つい」


(ついって……つい命がけの現場に来ないで!!)


 そこに、ひゅ……と風が吹いた。


 笑い声。


 カラン……と、どこかで錆びたブランコが揺れたような音。


(でた……)


 路地の奥。


 街灯の影が三つ重なった中央に、

 “そいつ”は立っていた。


 影喰いのピエロ。


 仮面は白。

 口元だけがだらりと赤く塗られ。

 細長い体がゆらりと左右に揺れる。


 ピエロは、指を一本立てた。


 そして、柚葉を指した。


「え、私!? なんで!? 私何もしてないよ!?

 影薄いとか言われるけど、それは罪じゃないよね!? 麗ぃぃぃ!!」


「しゃべらないで!」


 麗は柚葉の腕を掴む。


 ピエロは、すうっと歩み寄る。


(駄目……柚葉は“罪”なんて……)


 その時だった。


「動くな!」


 朔弥が銃を構えて現れた。


 ピエロはくるりと振り返り──

 無音で、夜の路地の奥へ消えた。


「追う!」


 朔弥が駆け出すが──

 角を曲がった瞬間、ピエロの姿は消えていた。


「……っ、まただ」


 苛立ちを隠せない朔弥。


 麗が恐る恐る声をかける。


「大丈夫ですか……?」


「大丈夫じゃない」


「大丈夫じゃないんだ」


 柚葉が復唱した。


 朔弥が麗を見る。


「宵宮。君……あのピエロに、“狙われている”」


 麗の背筋に冷たいものが走る。


 ■3 遠くから聞こえる声


 その日の深夜。


 薄暗い秘密の部屋。

 壁一面のモニターに、街の監視映像が映っている。


 黒澤が椅子に座り、笑っていた。


「ふふ……面白いねぇ。

 御影も、宵宮麗も。

 どんどん綻びが出てきた」


 電話を取り、楽しげに囁く。


「──朔弥くん。

 影の“味”はどうだい?

 麗ちゃんの影は、特別だろう?」


 その声は甘く柔らかい。

 しかし底には毒があった。


 モニターには、

 麗の姿だけが優先的にピンを打たれて映っている。


「さあ……もっと喰わせてあげよう。

 君の影を、君の罪を、壊すまでね」


 黒澤の笑い声が、夜の闇に沈んでいった。


 ■4 夜道で


 麗は帰宅途中、ふと足を止めた。


 ……路地の角。

 誰かが立っている。


「……だ、れ?」


 街灯の影が三つ、重なる。


 そしてその中心に──

 にたり、と笑うピエロが、いた。


(嘘……なんでここに……)


 ピエロは指を一本立て、

 自分の胸を指し、


 次に、麗を指した。


 それはまるで、

「次はお前の番だ」と

 言っているかのようだった。


 麗の喉が震える。


 その時。


 ピエロは風に溶けるように消えた。


 麗はふらりと壁にもたれ、震えた。


(……怖い……)


 だけど、胸の奥にもう一つの感情があった。


(でも……見逃したくない。

 あの姿の“正体”を……知りたい)


 影喰いのピエロは何者なのか。

 なぜ、罪をばらまくのか。

 なぜ、私の前に現れるのか。


 その答えは、

 もうすぐ目の前に近づいている気がした。


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