表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/22

第15章 影のひずみ――崩れはじめる心と、揺れる犯人像

 ◆1 緊急連絡


 夜のキャンパスへ向かう途中、

 麗はスマホを握りしめたまま走っていた。


 父・拓哉からのメッセージにはただ一行――


 《影喰いのピエロ、動いた》


 それが示す意味はひとつしかない。


「……第五の事件……!」


 呼吸が乱れる。

 しかし胸の奥は、それ以上にざわついていた。


(美音ちゃん……“言えない”って……

 あれは、何を隠していたの?)


 考えるほど、答えはひとつへ収束していく。


 ◆2 現場の“違和感”


 麗が現場の住宅街に辿り着くと、

 すでに規制線が張られ、刑事たちが忙しく動いていた。


「麗……! こっちだ」


 鮫島が駆け寄る。


 その後ろで柚葉が手を振っていた。

「麗ー! 来たー!!」

「お前はなんでいつも元気なんだ……」

 鮫島が呆れた顔をする。


 緊張とコミカルが同居する空気の中、

 麗は鮫島に連れられ、遺留物が集められた場所へ向かった。


「今回は……ちょっと妙だ」


「妙?」


「ああ。影喰いのピエロの置き土産――

 “罪の影”が、いつもと違う」


 麗が封筒の中を覗くと、写真が数枚。


 被害者の過去の悪事が写っている。

 しかし、ある点だけが“明確に違っていた”。


「……写真の質が悪い?」


「そうだ。手に入れた情報源が違う……

 あるいは、“別の誰かが作った”可能性がある」


 麗の心臓がドクン、と跳ねた。


(影武者……?

 まさか、本当に……)


 ◆3 朔弥の視点――崩れていく“完璧”


 一方その頃。


 朔弥は、人気のない廃ビルの一室で、

 自作の“影喰いピエロマスク”を机に置き、

 深く息を吐いていた。


「……まただ」


 机の上には、犯行現場の写真が並んでいる。

 そこには、たしかに――


 自分が行っていない事件の痕跡があった。


「俺は……やっていない。

 なのに、“俺の手口”が残っている……」


 背筋がざわりと震えた。


(これは……俺を真似している誰かがいる……?)


 そしてもうひとつ、薄い恐怖が胸に浮かぶ。


(黒澤さん……まさか……

 俺以外の“影喰いのピエロ”を作った……?)


 その時だった。


 机の端に置いてあった古い写真が、

 一枚ひらりと落ちる。


 それは、幼い自分と妹の写真。

 妹の顔にモザイクのような光が差した。


「……ずっと探してるのに……

 会えないな……美音……」


 思い出の輪郭が、曖昧に揺れる。


(美音……

 もし、生きていたら……

 俺に会いたいと思うだろうか?)


 その瞬間、胸にズンと痛みが走った。

 朔弥は思わず胸元を押さえる。


「……おかしいな。

 胸が……痛い……」


 まるで、

 “大切な人が泣いているのを察した”ように。


 ◆4 麗、核心に触れる


 現場から少し離れた場所。

 麗は一人、ノートに走り書きをしていた。


「犯行手口は似ている。でも……

 写真の質、情報の精度、痕跡残しの甘さ……

 これは明らかに“素人寄り”……」


(美音ちゃん……

 あなた、もしかして……)


 そこへ、柚葉が飲み物を片手に登場した。


「はい、麗~。ココア」


「あ、ありがとう……」


「で、どうよ? 事件は」


「うん……

 影喰いのピエロは二人いる。

 そのうち、ひとりは――」


「ひとりは……?」


 麗は少し唇を噛んだ。


「この近くにいる。

 私たちの……すぐそばに」


 柚葉は息を呑んだ。


「まさか……美音ちゃん?」


「まだ断定はできないけど……

 何かを隠してる。

 しかも、本人は……苦しんでる」


 麗の声が震えた。


(助けたい……

 間違った道に行かないように……

 美音ちゃんの心を……)


 ◆5 影武者の“サイン”


 その時、鮫島が走ってきた。


「麗! これを見ろ!」


 鮫島が手にしていたのは、

 現場近くに落ちていた紙切れ。


 そこには、歪んだ文字でこう書かれていた。


『守らなきゃ。

 そのためなら、なんでもする。』


 麗の顔が強張る。


(美音ちゃん……

 あなた……どこまで行こうとしてるの……?)


 ◆6 朔弥、影武者を感じ取る


 同じ頃。


 朔弥は、廃ビルの窓辺から夜景を見下ろしていた。


 微かな気配が、闇の中に漂う。


「……だれだ」


 返事はない。

 だが、気配は確かにあった。


(……俺のやり方を知ってる……

 俺の“影”を真似する奴が……近くにいる……)


 朔弥は気づいてしまった。


 影喰いのピエロの“影武者”がいる。


 ──しかしそれが、美音だとはまだ知らない。


 知らないまま、

 彼の心は少しずつ、壊れていく。


 ◆7 次の事件の“予兆”


 現場を後にする直前、

 麗のスマホが震えた。


【匿名】

 《次は……“白い灯り”の下だよ。

 麗ちゃん》


「……っ、これは……!」


 柚葉が覗き込む。


「え、なに? なに? 怖っ!」


 鮫島は険しい顔をする。


「白い灯り……どういうことだ」


 麗はすぐに悟った。


「次の影喰いのピエロの狙いは――

 美音ちゃんの仕事現場……

 “シルキードロップ新曲生配信ステージ”……!」


 柚葉が叫んだ。


「美音ちゃんが危ないじゃん!!」


「ううん……違う。

 美音ちゃんだけじゃない……」


 麗の声が震える。


「影武者と本物が……

 同じステージに立とうとしてる……!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ