表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/19

第14章 影の告白――壊れかけた笑顔と、届かない声

 ◆1 約束の場所へ


 夜風が冷たい。

 街灯の明かりが、舗道に長い影を落としていた。


 麗は息を整えながら、公園へ続く坂道を駆け上がる。


(なんで……美音ちゃん、あの日と同じ場所を選んだの?)


 胸のざわめきは、ただの不安じゃない。

 まるで“何かを暴かれる直前の静けさ”のようだった。


 ふと後ろから声がする。


「麗――!!」


「うわぁ!? 柚葉?」


 柚葉が息を切らして駆け寄ってきた。


「ちょっと……! 一人で夜に行くとか危ないでしょ!?

 私も行くに決まってるじゃん!」


「いや、その……柚葉ちゃん、来ると……美音ちゃんが……」


「大丈夫大丈夫! 私、気配消すから!」


「いや、消せないよ……」


 その後ろで、鮫島もこっそりついてきていた。


「……あの二人、毎回なんで尾行がバレバレなんだ」


 ため息をつきながらも、麗の護衛として同行していた。


 ◆2 美音の“壊れた笑顔”


 公園のベンチに、

 美音は一人で座っていた。


 夜の光に照らされた横顔は、

 普段のアイドル“美音”そのままだった。

 しかし――表情はどこかおかしい。


「美音ちゃん!」


 麗が駆け寄ると、美音はふわりと微笑んだ。


「麗ちゃん……来てくれたんだね。

 うれしいよ……すごく。」


 口元は柔らかいのに、

 目だけは泣いたように赤い。


「ごめんね……急に呼び出して。

 でも、麗ちゃんに……話せるの、あなただけで……」


「美音ちゃん……何かあったの?」


「うん……いろいろ……ね」


 膝の上で組んだ指が震えている。

 それを見て麗は胸が苦しくなる。


 ◆3 “守りたい人”の話


「ねぇ、麗ちゃん……

 もし……大切な人が悪いことをしていたら……

 どうする?」


「え……?」


「ねぇ……どうするの?」


 美音の声が震える。

 泣きそうなのに、笑おうとしている。


「その人を……守りたいって思ったら……

 どうすればいいの?」


 麗は返答に迷った。


(大切な人……?

 でも、美音ちゃんには……そんな素振りは……)


「美音ちゃん……誰のことを言ってるの?」


「…………」


 美音は俯き、ひとつ息を吸った。


「ずっと……探してる人がいるの」


「探してる……人?」


「うん……

 小さいころに離れ離れになったの。

 その人は……優しくて……でも弱くて……

 いつも私を守ってくれたのに……

 本当は守られていたのは“私のほう”で……」


 麗はハッとする。


(兄……?

 いや、でも確証がない……)


「会いたい……もう一度だけでいい……

 その人が傷ついていたら……私が守るの……

 たとえ……その人が、悪い道を歩いていても……」


 最後の部分は、

 ほとんど涙声だった。


 ◆4 心の奥の叫び


「ねぇ麗ちゃん……」


 美音はゆっくり顔を上げた。

 涙が頬を伝っていた。


「悪いことしてる人でも……

 愛していいのかな……?」


 その言葉は、

 麗の胸に鋭く突き刺さった。


「……いいよ。

 誰かを想う気持ちは、悪くないよ。」


「ほんとに……?」


「うん。

 でも……守る方法は“犯罪を隠すこと”とは限らない。

 本当に守るなら……

 その人を正しい道に戻すことじゃないかな……?」


 美音はその言葉に、

 ふるりと小さく震えた。


「麗ちゃんは……やっぱり……優しいね……」


 美音の笑顔は、もう壊れかけていた。


 ◆5 柚葉の尾行コミカル


 その頃、ベンチから10メートル離れた木陰。


 柚葉「麗がんばれ……!」

 鮫島「がんばる…って何をだ」

 柚葉「わからん」


 鮫島は眉間を押さえる。


「というか、お前……隠れる気あんのか」

「あるよ!? ほら!」


 柚葉は木の陰に隠れたつもりだが、

 彼女の髪も腕も普通に木からはみ出ていた。


「バレバレなんだよ……」


 ◆6 本当の“問い”


「ねぇ麗ちゃん……」

 美音の声が少し低くなった。


「影喰いのピエロが……

 二人いるって……思う?」


 麗は息を飲む。


「美音ちゃん……どうして……?」


「ただの……興味。

 麗ちゃんは、どう推理してるのかなって……」


 麗は慎重に答える。


「……うん。

 二人いると思う。

 しかも……

 “本物は誰かを守るために動いてる”」


 その瞬間。

 美音の肩がピクリと跳ねた。


(……やっぱり)


 麗は確信した。


 美音は“影武者の事件”を知っている。

 知りすぎている。


 しかし、まだ決定的な証拠はない。


 ◆7 美音の決意と、別れの言葉


「麗ちゃん……ありがとう」


「え……?」


「麗ちゃんに会えて……よかった……

 本当に。」


「美音ちゃん……?」


「ごめんね。

 私……これ以上は、言えないの。」


 そう言って美音は立ち上がり、

 小さく頭を下げて歩き出した。


「待って、美音ちゃん!」


 麗が手を伸ばす。

 しかし美音は振り返らない。


 街灯の下、

 美音の影は細く、揺れていた。


(美音ちゃん……

 あなたは……誰を守ろうとしてるの?)


 麗の問いは夜空に消えた。


 ◆8 影武者への確信


 美音が遠ざかったあと、

 麗は気づいた。


「美音ちゃん……

 左手の手首……」


 薄く、赤い痕。

 まるで“縄の擦れた跡”だった。


(あれは……

 襲われた時のもの……?

 それとも――)


 麗の頭の中で、

 長く伸びた影がひとつに結びつく。


「……そうか。

 犯人は……」


 言いかけた瞬間、

 スマホが震えた。


【父・拓哉】

 《麗、今どこだ。

 影喰いのピエロ……動いた。》


 全身が震えた。


「……また事件が……?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ