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未来視で幼馴染のことが分かるんだが、絶望しかない()  作者: うずまきしろう
クソ雑魚ナメクジ、世界最強ギルドにぶち込まれる
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第5話


 ギルド『英雄の守り人』の候補生となって3カ月が経過した。オレは引き籠りになった。

 

 いかんせん定着しないようなので繰り返すが、オレは楽して金を稼ぐ人生を送ろうと思っている。

 確かにオレはイケメンモテモテ未来視系主人公であるが、そちらに能力値を振り過ぎたせいか、魔力量と武に関する才能が乏しい凡人だ。

 たとえ森の魔女から地獄を火で炙ったような修行を積まされたからと言って、基準値も上限値も低い人間が化け物の集うギルド『英雄の守り人』の候補生なんぞになれば、どうなるかはお察しの通りである。


「だから、自分の得意分野を伸ばしていく選択は当然なんだよな」


 よし、正当化完了。

 

 舞台は大陸西部。人族の街で最西端の要塞都市ネオ・フロンティア。

 ボロボロ寮に目を覚まして息を吐き出し、今晩に見た未来視を書き留める。

 ちなみに未来視は今でもまるでコントロールできていない。一応、進展はあったにはあったのだが、とにかく、見たい未来を見るような器用な使い方は出来ていないのが現状だ。


 朝っぱらから寮に引き籠り、未来視を悪用した技術窃盗による工作を行う。

 ネオ・フロンティアは大陸でも発展した都市の一つだから、ここで販売路を開拓するのがひとまずの目標だ。

 まず最初の一年で名を売り、そこからは一気に大富豪へと。


「グへへ……」

「シアン~! 訓練行こっ!!」


……ウワァァァアアアアッ!!


 青い悪魔の呼び声がした。もう終わりだ。

 いや落ち着け。大丈夫だ。ここでジッとしていれば脅威は過ぎ去る。

 ガンガンと扉を鳴らす音に耳を塞ぎ込んで、布団の中に潜り込む。

 

 暫くすると扉をノックする乱暴な音も失せて……


「フッ、どうやら根競べはオレの勝ちのようだな」


 遂に青い悪魔の撃退方法を編み出したオレの頭脳に乾杯。

 あぁいう才能のある奴は、ギルド本舎にでも行って存分に暴れていればいい。オレみたいに才能カスな奴は寮に引き籠っていればいい。

 適材適所という言葉を作った奴はなんて頭がいいのだろう。


「さて、魔王も追い払ったことだし、今日はゆっくりと過ごすか」

「《b》ばぁっ!!《/b》」


 

……??? 



「来ちゃった!」

「……貴様! なぜオレが居留守をしていると分かった!?」

「そんなの魔力感知したらいいだけじゃん!!」


 ハ~~~~……これだから才能のあるガキは困る。

 というか、コイツどうやってオレの部屋に入ってきた。テレポートか? いや、転移の魔術が実現するのは遠い未来のことのはずだ。

 なるほど。その手に握られたひしゃげたドアノブが答えということだろう。


「ルルア」

「なに!」

「この寮の一室を借りているのはオレだ。そしてドアノブを破壊するというのは立派な不法侵入だから、オレはこの一件でお前を法の裁きに掛けることが許される」

「よく分かんないな」


 どうやら我が幼馴染は武才に能力値を振るあまり、賢さを失ってしまったらしい。なんとも嘆かわしい事態に涙を禁じ得ない。将来は手取足取りオレが支えることにする。


「だって、シアンが訓練サボってるのが悪いじゃん」

「時に正論は暴力になるんだぞ」

「師匠からも許可もらったよ? シアン連れて来るなら寮ごと破壊しても良いって」

「常識なさすぎだろあのババア……」


 しかしあれでいてギルド『英雄の守り人』の創設者であるのだから、一介の候補生たるオレの声は封殺される。あの人、森の野草に齧り付く無職の魔女じゃなかったのか……。

 

 兎にも角にも、勇者とか魔王の存在のせいで、武に傾倒した世の中は理不尽だ。そんな世界に新風を舞い込むためにも、オレは必ずや商才(偽)で成り上がることを決意した。

 そうと決まれば早速、今日もメモ帳に纏めた商品開発のピースを。


「あっ、なにこの夢日記! こんなの書いてるから引き籠っちゃうの!!」


 ビリリと嫌な音がした。諸悪の根源を見つけたとばかりに、ルルアは満面の笑みでメモを破り捨てている。コイツは自分自身がその元凶であることを自覚していないらしい。

 あ~~~……いくら幼馴染とあってももう許せん。めっちょめちょにしてやる。今こそはオレが魔王となって、世界を闇に陥れるべき時だと理解した。


「ルルア、そのふざけた面を貸せ。もっと良い形に矯正してやろう」

「ランク戦するの!? いいよ!!」

「いや、そういう話ではなくてだな」


 最下級クラス在籍でさえ首の皮一枚で繋がっているオレに止めを突き付けるつもりなのだろうか。ルルアは魔王の卵だとは思うが、末恐ろしい奴である。

 

「キミはヘタレだな、相変わらず」

「ハッハッハ! 100年後もお一人様の魔女がよく言う!」


 気が付くとオレは寮から城みたいなギルドのクソデカ拠点へ吹き飛んでいた。

 いつの間にやら制服を羽織らされ鞄を持たされ、開講の鐘が鳴る直前に講義室の席に座らされていたことは言うまでもない。


 最上級風魔法に揉まれて青い顔をしたオレを見て、他の候補生は軒並みドン引きしていた。

 オレとしては師匠のヤバさが周囲に認知されていっていてこの上ない幸せである。いや、こんな目に遭っているのだから不幸せである。


「まったく、どいつもこいつも乱暴すぎる」


 オレは絶対無比なる未来視に映った事実を滔々と述べただけなのだが、やれやれ、老衰で堪忍袋の緒が切れやすくなった師匠は扱いに困るぜ。


 机に突っ伏しながらクソデカため息を吐いて、講義を受ける。こうして座学や実技の訓練とランク戦を経て、やがてはギルドの正規メンバーとして十分な実力を身に付けるのが、候補生の役目である。

 

 そのあとオレは魔法基礎Ⅰに脳をオーバーヒートし、果てには前回の課題を未達成であるが為に廊下に立たされる羽目となった。



 ♦♦♦



「頼む、誰かこの地獄から救ってくれ」


 放課後、本来であれば寮の部屋でだらけているはずのオレはなぜだか訓練場に居残っていて、必死こいて右手を振るいながら初級魔法を発動させようとしては、周囲に魔素を霧散していた。


 あ~、クソだ。クソ。なぜオレがこんな風に汗水垂らさなきゃならんのか。

 森の老婆とのどちゃきつ修行一年間でオレの魔法使いとしての才覚(ゴミ)は上限が見えたのだが、それはさておき、候補生から正規メンバーへと合格するには訓練等を経てポイントを貯める必要がある。


 いや、極論を言うと、『目的』さえ果たせるのなら正規ギルド員にはならなくてもいい。しかし養母さんと養父さんに見送ってもらった以上は最低限のことをしなければならないと、鼻くそほどの意地がオレをここに繋ぎ止めている。


「何回やっても無理なもんは無理なんだよなぁ」


 一向に成長の余地がない魔法の行使方法を鍛錬する理由はないのだが、課題なのだから仕方がない。クラス全員へ平等に与えられる課題というのは、ある種の不平等性を有していることがよく分かる。

 かと言って剣を持っても結果はほとんど変わらないのだが。やはり学生は個性にあった特質を伸ばすべきで、つまりはオレは引き籠り生活を。

 

「どうやら、君の不登校は一日で終わったみたいだね」


 ボフッと魔法失敗の音と煙を訓練場に響かせていると、訓練用の剣を担いだ黒い制服を纏う男子生徒が現れた。


「誠に不本意ながら、暴力を振るわれたゆえ」

「君はお嬢様に愛されているから仕方ないよ」

「お嬢様というのが青い悪魔のことを指すならそうだが」


 アレはお嬢様などと言う生易しい表現をしてはいけない。オレの楽して稼いでいく人生を捻じ曲げて修羅へ追い込んだ悪魔であり、と同時にかつてオレの命を救い、こんな地獄まで導いた天使でもある。……どっちにしろダメだった。

 入り口付近からゆるりと歩く男子生徒は、黒色の長い前髪に片目だけを隠し、気怠そうに素振りを始めた。


「僕としては君が戻って来てくれてよかったよ。お陰でまた居残り仲間ができた」


 爽やかな笑顔で毒を吐く、我が最下級クラスの学友シリウスである。

 こういう適度に辛辣な性格だから、オレはコイツが気に入っているし、恐らくコイツもオレを気に入っている。なんでか波長が合う奴だ。


『英雄の守り人』には幾つかルールがある。その一つが、候補生選抜試験によって候補生の能力を図り、上から順に序列を付けてクラス分けしていく制度だ。

 オレとシリウスは当然最下級クラス。そして中でもドベを争う二傑。当然何も起きないはずがなく、こうして仲良くぬるま湯につかっているサボり仲間である。

 オレは使えもしない魔法を、シリウスは滑稽劇みたいな剣技の鍛錬を無為に続ける。


「クソみたいな青春だな」

「あぁ、本当終わっている青春だ。君と二人きりなんて」

「ほどほどに切り上げて飯食いに行くか。ゲロ不味い麺屋に連れてってやる」

「行こう。そうしよう。どうせ日が暮れるまでやっても結果は変わらないからね」

「シアン~!」


 最悪だ。

 どこから情報を嗅ぎつけたのか(いつものこと)、オレ達の逃避行をぶっ潰す奴が現れてしまった。


「おや、青春に彩りが」

「血みどろ色だぞ」


 勇者ごっこを建前に何回ボコされたと思っている。


「なんでそんなこと言うの! ボクせっかくいいこと教えに来てあげたのに!!」


 ぷくりと頬を膨らませたルルアは、隣に立つ学友を認めて蒼穹の瞳をくるりと丸めた。ぺこりとお辞儀する。


「あっ! シリウスくん、こんにちは!!」

「お疲れ様ですルルア嬢。どうやら、僕の不出来な友人にしか目が向いていなかったようで」


 早速隙を突かれて、アタフタと白っぽい紫髪を肩先に揺らす制服姿な幼馴染である。

 というかコイツ、事ある毎にオレ達のところに来るが、クラスに友達とか居ないんだろうか(笑)。


「えっとね、シアン……」


 急にもじもじと人差し指を合わし始めた。

 え。なに。告白されんの? 心の準備はまだ出来てないんだが……。


「シアンのランク戦、ボクが申請しといたよ!」



……は? なにしてんのコイツ???





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