「俺にだけ“スキル”が見えているんだけど」
読むのが好きで私も書いてみたくなり初めて書きました、
よろしくお願いいたします。
月曜の朝。
鳴り続けるスマホのアラームに顔をしかめながら、俺は会社のデスクに突っ伏していた。
久しぶりに定時で帰ろうとした金曜日の夜、
「月曜までに書類作成を頼む」と言ってきた上司の声が、まだ耳に残ってる。
「なんとか書類間に合ったな…」
残ったエナジードリンクを飲み、小さくため息をつく。
俺の名前は朝倉ユウト、29歳。
職業・社畜。スキル社会の底辺を這いずり回る、どこにでもいる普通の男だ。
この国では16歳になると国から“スキル鑑定”を受けることになっている。
攻撃系、防御系、支援系、生産系──スキルの種類と数値が、そのままその人間の価値になる。
スキルによって将来も左右され、自分の合った仕事を紹介してもらえる。
はずだったのに……俺のスキルは、《未鑑定》。
「判別不能、以上。はい次の人」って、あのときの鑑定士の冷たい声は今でも覚えている。
結局、大学でも就活でも“無スキル枠”で落とされ、最後に滑り込んだのが今のブラック企業だった。
営業、庶務、在庫管理、クレーム処理──全部俺。
「スキルのないお前にできるのは、こういう雑用くらいだろ?」
そう言って笑っていた上司の顔を思い出すと、何もかも投げ出したくなる。
─けれど、その日。
俺の人生が、静かに変わり始めた。