開始7
どうやら、彼女は錬金部署に所属する事になったらしい。
噂によると、作成した魔法薬の効果が素晴らしかったからだとか。
「実際どうですか、師匠」
リコリスは錬金部署署長のフォルトゥナに声をかけた。妖精の世界から出たばかりの自身に人間の世界を教えてくれたので、そう呼んでいる。
「ん? そりゃあもう、なんかやばい感じでよかったよー」
「へぇ?」
「彼女、魔法薬に生命魔法を込めるっぽくて。特に回復薬とかいいよ」
「それは連合としても助かるんじゃないかな。まあ、僕の部署とは少し無縁だけれど」
「そうだねー。主には浄化部署と処刑部署に回るね」
「何か問題があれば、教えてくれると助かるよ」
「おっけー。君にしては割と気にしてるね?」
「まあ、僕が連れてきた個体だからね。多少の面倒くらいは見るさ」
「ふーん? じゃあさ、早速言いたい事があるんだけど」
「……何かな」
至極真面目な声色になったフォルトゥナに、何かあったのだろうかとリコリスは警戒した。
「彼女、殻に閉じこもってる感じでさ。誰とも話さないんだよ。君がプロフィールを聞き出せたってことは、君と会話ぐらいはしてくれたってことでしょ?」
「ああ、そうなるね。代わりに僕のプロフィールを根掘り葉掘り聞かれたが。……ネディネーネ君は、あまり喋らない方だったかい?」
「さぁ。まあ、とにかく。なんかコミュニケーション取ってくれる?」
「分かった。なんとかしてみるよ」
と言うことで、リコリスは錬金部署に向かった。フォルトゥナから許可は貰っているので入れる。錬金部署室に入ると、一瞬他の構成員に見られた。
「ちょっとお前! 一体どこに居たのよ!」
それからすぐにネディネーネが声を上げた。
「……おや。思いの外、元気そうだね」
「『おや』じゃないのよ! 焦げ臭い人間は居るし、金属臭い妖精が居るしで何なのよ! まあ、もふもふな悪魔が居るのは悪くないわ」
「焦げ臭い、ね。彼女のことは放っておいてあげてくれ。……ところで、誰とも話さないと聞いたのだが、どうしたんだい?」
「ど、どうだって良いでしょう! 私の事なんて!」
「良くないから聞いているのだよ。話しにくいのかい?」
「そ、そんなことないけれど……」
「なるほど、緊張してしまうのだね。長らく森で1人で過ごしていただろうし、仕方ない話だ。そうだな……しばらく、僕と話をしよう」
「お前と?」
「そう。そうやって、魔法連合に慣れてくれると良い」