開始6
「ねぇ、魔法連合ってところには植物があるわけ?」
連絡を終えたリコリスに、ネディネーネは問う。
「植物か……まあ、なくもないけれど……立ち入りが限定されている場合が多いかな。畑は修道部署の管轄だし、温室は錬金部署の管轄だ。特に温室は部外者の出入りは禁止しているから、入った部署によってはあまり植物には触れないだろうね」
「何よそれ。……でも、その錬金部署ってところに行けば、温室ってところの植物には触れるのね?」
「そうだね。それに畑は他部署の出入りは厳しく取り締まっていないから、頼んだら触らせてくれるかもしれない。それに個室が与えられるはずだし、よほど危険なものでない限りはそこで植物を育てることも可能なはずだよ」
「ふーん」
「君は魔道具か魔法薬は作れるかい? そうでないなら錬金部署への所属は難しいと思うが」
「魔法薬は作れるわよ! とびっきりのものが!」
「それは良いね。魔法連合は、魔法薬を作れる者は歓迎している。今所属している者達は、少し魔道具作りの方面に特化しているからね」
ネディネーネの返答にリコリスは頷いた。
「魔法薬のレシピは魔導書庫にもあるし、材料もかなり揃っている。新しい魔法薬も作れるだろうね」
×
それから、魔法連合本部に到着する。
人工物でできた建物を、物珍しそうにネディネーネは見ていた。
「どうしたんだい、そんなにくっついて。少々歩きにくいのだが……」
リコリスは自身の腕にしがみつくネディネーネに声をかける。服の掴み具合からして、かなり緊張しているのだろうかと察した。出会った当初も警戒心はかなり強かったし、そういう性格なのだろう。
「良いじゃないのよ、別に。全く歩けない訳じゃないんでしょ?」
「それはそう、なのだが……」
歩きにくい、というよりは視線が痛い。珍しいハイエルフだから目立っているのだろう。それと普通に胸が当たって気まずい。別にリコリス自身がどうこう思っている訳ではないのだが、周囲の目線が痛い。
向かった先では、人事部署の者と修道部署の者が待っていた。
「では、ここで僕とはお別れだ。そこの者達について行くと良い。色々と説明をしてくれるだろうから、大丈夫のはずだ。分からないことがあったら、遠慮なく聞きたまえ。答えてくれるはずだよ」
「え、ちょっと!」
悲鳴のような声だった気がしたが、写本部署の者であるリコリスの仕事は終わりだ。あとは人事部署の者と修道部署の者に頼めば、なんとかなるだろう。




