開始5
「何よここ! 空気はジメジメしてるし変なにおいするし、地面とか歩きにくいじゃない!」
「まあ、それが海、および砂浜だからね」
そう言いつつ、海に興味を持っているようでネディネーネは波打ち際の方へ向かって行った。それに合わせて、リコリスも自身へ防水魔法をかけた後に彼女の方へ歩く。
「ふーん。本当に大きな水たまりね。どのくらいの大きさなの?」
「大きさ、か。かなり広い、としか言いようがないかな」
「私の森よりも広い?」
「それはそう。表面積が陸地より広いのは確かだ」
「それって水たまりって言えるわけ?」
「水が溜まっているのだから、水溜まりだろう」
「そうなのかしら……」
海に飽きた様子で、ネディネーネはリコリスの元へ戻ってきた。
「君はハイエルフだから聞く必要はほとんどないのだが、仲間はあの森には居なかったかい?」
「な、仲間!? 見ての通りよ! 分かるでしょう?!」
「オーケー、居ないんだね。なら、保護の対象は君1人で十分そうだ。妖精の集落……は見当たらなかったし、何も残っていなかったし。森の主である君がそう言うのなら、そうなのだろうね」
「ふんっ!」
「(何を拗ねているのか分からないが)君1人なら尚更、無事でよかったよ。それに他の人間や魔法使い達に見つかる前で、本当に良かった」
言いつつ、リコリスは端末を操作し始める。
「何してるのよ」
「連絡。今から君を連れて帰る、と連合の人事に伝えるのだよ」
「ふーん? ねぇ、連合にはどのくらい魔法使いが居るの」
「うーむ。正確な数字は僕も把握していないのだよね。かなり沢山、と言う感じかな。ああ、エルフやダークエルフ、妖精や幽霊、ヴァンパイア、悪魔や堕天使まで居るから、安心したまえ」
「……ウィザリングは居ないの?」
「……居るねぇ。何なら、アヴァランチも居る」
「居るの?!」
「大丈夫だ。薬で制御しているから」
「……やっぱり行きたくないわ」
「ウィザリングが居るから?」
「……」
「そうかい。でも、住処はどうする? あの森を再び元の状態に戻すには時間がかかるだろうし、何より君が疲れてしまうのではないかな。それに、またウィザリングに荒らされてしまうかもしれない」
「……うー」
「すでにある森は、恐らく他のエルフの縄張りになっているだろうし……」
「分かったわよ! 行けば良いんでしょ! 魔法連合とやらに!」
「助かるよ」
一応ネディネーネの意思も聞けた事だし、とリコリスは連絡を入れた。