変化8
リコリス達が魔法連合に着くと、フォルトゥナとネディーネーネが出迎える。
「やっぱそうなったかー」
「な……! 何よリコリス、そんなに血塗れで……」
フォルトゥナは慣れた様子で苦笑し、ネディネーネは青ざめた。
「全部リリー署長の、自分の血ですよ。ウィザリングにやられたみたいで」
クレハがフォルトゥナに軽く状況を説明する。ネディネーネはパニックになっているようで、涙目になっていた。
「そうだ、医務室の場所取りと治療用の魔法薬が欲しいのだが」
「用意しているよ。人事部署が『看病が必要だろうから』って、場所も取ってるよ」
「それは助かる」
リコリスの言葉に、フォルトゥナは淡々と答える。
「で、ネディ。君に、リコりんの治療や看病を頼みたいんだ」
「わ、私に?」
フォルトゥナはネディネーネの方を振り返った。
「そう。君は魔法薬の生成も生命魔法の扱いも申し分ない。それを、魔法連合内での治療に役立てて欲しいんだよ。リコりんは、その練習台だと思って」
「練習台……」
「まあ、リコりんは必要な魔法薬さえあれば、自分1人で勝手に回復して仕事に戻っちゃうから。失敗したって平気だよ」
「失敗する前提で話を進めないでよ! 分かったわ。治してあげるわ! 完璧に!」
涙目ではあったが、ネディネーネは覚悟を決めたようだ。
「やる気になってくれて良かった。……リコりんは、あんまり無茶するなよ。もう少し、自分の身体を労りな」
「そうは言ってもだね……」
次にフォルトゥナは、呆れた眼差しをリコリスに向ける。
「文句言わない。今回は治療に使う魔法薬の購入とかはリコりんのお金で出すけど、魔法薬はネディしか使っちゃダメだからね。ネディの実力を測るためのものでもあるんだから。分かったかい?」
「……はぁ。そう言われると、僕からは何もできないじゃないか」
「それでよろしい」
構成員の成長のためならリコリスが反対する理由はなくなる。それも考慮した上での決まり事だったのだろう。
「じゃ、ネディ。リコりんを医務室に運んで、治療とか色々やって。治療や看病に関する書物は用意するし、必要があればお手本を見せる。やり方は君に任せた」
そう言い、フォルトゥナはクレハからリコリスを取り上げてネディネーネに差し出す。
「お、お前……お腹もぐちゃぐちゃじゃないの……!」
「ん、まあね。色々あったんだよ」
恐る恐る、ネディネーネはリコリスを受け取った。彼は普段通りだが見た目はかなり重症だ。




