変化6
「あのハイエルフ……と言うと、ネディネーネ君のことか?」
クレハが居ないので、仕方なく1人で対応することにした。ウィザリングは目が血走っており、尋常でない。
「わざと二手に分かれてみたが……強さは関係なく、においで僕を選んだな?」
この森の跡地に来てから、嫌な気配は感じていた。ウィザリングにしては獰猛なものを。それの正体が、これだったとは。
「……そう言えば。最近僕の飲んでいる魔法薬が、確かネディネーネ君の生命魔法が込められているのだったね」
今も、アンプル型のものを服の中に複数所持している。
「君が反応したのは魔法薬か、僕の体内にあるネディネーネ君の生命魔法の残滓だな」
そうでなければ、クレハより強いリコリスの方に来るはずがない。
「よほど、あの森が美味かったのだろうね」
焦れたのか、ウィザリングが襲いかかってきた。
それをひょいと避け、背中を蹴飛ばす。地面に伏したウィザリングから距離を取った。
即座にウィザリングは起き上がり、再び突進する。
ウィザリングに腕を掴まれた。即座にリコリスは、魔法で自身の肘から先を切り落とす。
「……油断した。いや、運が良かったのかな」
距離を取って止血をし、ウィザリングの様子を見る。腕を喰らっているようだ。
「足止めにはなるか」
言いつつ、雷の元素魔法でウィザリングを撃ち抜く。
「……頑丈だな」
肌は焼け爛れたが、ほとんど無傷だ。立ち上がり、向かってくる。
それから。リコリスはもう一本の腕と片足を犠牲に、時間を稼いだ。
「……流石にアンプルで回復すべきか」
回復薬はあまりないので温存したかったのだが。両腕がないと細かい作業ができないので、少々不便である。
追いかけるウィザリングの方は、何度も元素魔法などで体力低下や攻撃を仕掛けたもののすぐに回復してしまう。
「生命魔法を使えるのは、羨ましい事だ」
ぼやきつつ、服に隠していた魔法薬を魔法で取り出して噛み砕く。そして容器の破片ごと飲み込んだ。大きい破片は吐き捨てる。本来の飲み方ではないが、両手がないので仕方ない。
これで、体力は回復した。欠損を補うものは持ってきていなかったのだ。
「ハイエルフの、匂い!」
血混じりの涎を溢すウィザリングが現れた。凄まじい速さでリコリスに迫り、残った足を掴んで引き倒す。覆い被さり、リコリスの胴体に腕を突っ込んだ。「どこだ! どこだ!」と叫び、どうやら飲んだ魔法薬に反応しているらしい。ついでに足をもがれる。




