転換6
リコリスとネディネーネはしばらく街を歩き、人間社会の説明をした。
「では、そろそろ食事の時間にしよう」
とリコリスが提案をし、喫茶店に入る。チェーン店のようなものではなく個人経営のもので、店内は静かだった。
リコリスはネディネーネにメニューを差し出す。
「気になるものを一つ、選ぶといい。食べ物、飲み物をね」
「お前は良いの?」
「ん? もう決めたからね。ゆっくり選ぶと良いよ」
ネディネーネはフルーツサンドとミルクティーを選んだ。リコリスは野菜の多いサンドイッチと紅茶を注文した。
少し待ち、食事が運ばれてくる。
「魔法連合のものと結構違うわね」
「そうだね。その上、異国の食文化でもあるからね」
「異国の食文化?」
「そう。例えばこのフルーツサンドも、サンドイッチはここイギリスが発祥の地だがフルーツを挟んだのは日本と言う国が始まりだ。日本人は魔法連合にも少数ながら居るよ」
「ふーん」
今日の話や魔法連合の話を少しして、食事が終わる。
「では、会計を済ませるから。この席か店の外かで待っていてくれたまえ」
「分かったわ。お店の外に行っておくわ」
そう言い、ネディネーネは店の外に出た。それを少し視線で追い、リコリスは会計を済ませる。
「!」
釣銭を受け取る合間に、ちら、と店の外に視線を向けると、ネディネーネに男が絡んでいた。釣りをそのままに、急いで店の外に出る。
「……僕の連れに何か用事かね。無許可で人に触れるのは、失礼だと習わなかったのかい」
思ったより低い声が出た。リコリスの姿を見、ネディネーネは「遅いわよ、やっとお会計ってやつが終わったのね」と笑顔を見せる。その態度の変わりように知り合いだと判断したのか、絡んでいた男が居なくなった。
「目を放して悪かった。そういえば、(エルフだし)君は美しいのだったな」
すっかり忘れていた。その迂闊さに、歯噛みする。店の中に待機させておけばよかった、と後悔するも遅い。
「さっきの、何だったのかしら? 『道が分からない』とか言ってきたのだけれど、『私も知らない』って言ったらなんか笑っていたのよ。思い出したらなんだか腹が立ってきたわ」
「怖い目には遭っていないかね? 不快な目には遭わせてしまって、すまない。どこかで休憩をしようか。それとも帰るかい?」
「もう少し、外に居てもいいわ。次は、リコリスの行きたい場所に案内しなさいよ」
「僕の行きたい場所? 分かった。君が楽しめるかは分からないが……」




