転換5
魔法連合からほど近い街に到着する。
「では、手を出したまえ」
「手?」
「逸れないよう、手を繋ぐから」
「わ、私は子供じゃないわよ!」
「僕が勝手に心配しているだけだ。でも、君と逸れたら色々と大変だからね。捜索とか手続きとか、僕の首とか。だから、繋いでもらっていいかな?」
「……恋人繋ぎなら、良いわよ」
「分かった。助かるよ」
リコリスとネディネーネはしっかりと手を繋ぎ、街を歩き始めた。
「あの、道の広いところを走ってるやつが、自動車ってやつでしょう。思ったより、ゆっくり走ってるわね」
「まあ、道が混んでいるからね」
「人がむき出しで乗っているのが自転車、大きくて長い自動車がバス」
「そうだね。たくさん人が乗っている」
「襲われたらひとたまりもないのに。まとまってでしか動けないなんて、魔法を使えない人間はかわいそうね」
交差点に差し掛かった時、人間や自動車たちは信号に合わせて止まったり発進したりする。
「こんなの守るなんて、魔法を使えない人間は不便ね。逃げる時も律儀に信号なんて守るのかしら?」
首を傾げるネディネーネに、リコリスは小さく笑った。
「ねぇ、どこに行くの?」
くいくい、と繋いでいない方の手でリコリスの袖を引っ張り、ネディネーネは見上げる。
「まずは、君にプレゼントを贈ろうと思ってね」
見下ろし、視線を合わせてリコリスは微笑んだ。
「プレゼント?」
「香水だよ。直接行く方が分かるだろう?」
目を見開くネディネーネに、少しサプライズには成功したようだと目を細める。街の一角にある香水の店に入った。
そこで、ネディネーネは色々と香水の匂いを確かめたようだ。
「気に入ったものはあったかね。香水の店舗は他にもあるから、この店ですべてを決めなくとも良いのだけれど」
色々と迷っていたようだが、ネディネーネは一つ香水を決める。
「まあ、悪くないって思ったのよ」
だそうだ。甘い花の香りのもののようだ。
「良いんじゃないかな。君に合う匂いだと思うよ」
次いで、リコリスはネックレスやイヤリングのプレゼントもしたのだった。
「指輪は魔法薬の生成に邪魔だろうけれど。ネックレスやピアス、イヤリングの類は何かまたこうやって君が出かける時に要り様になるかもしれないからね」
「また、一緒に出掛けてくれるの?」
「許可が下りればね」
「お前が、また許可を取ってきたらいいじゃないの」
「そうだね、その時のための詭弁をまた用意しなくては……」




