開始2
声をかけた途端に、何か攻撃らしきものが飛んできた。
「おっと、危ない」
とっさに相殺させたが、かなり危険を感じるものだ。
「何よお前! どこから来たわけ!」
ハイエルフは警戒心むき出しの表情で、リコリスを睨みつける。睨んでいるが、あまり怖くないな、とどこか他人事のようにリコリスは思った。恐らく、強い殺気がないからだろう。
「僕は魔法連合というところから……まず、連合の話をした方が良いかな?」
「どうだって良いわよ、そんなもの! 何が魔法連合よ! お前が来たからってこの森が元通りになるわけ?!」
言う間も、何かしらの攻撃が飛んできた。それを加減を間違えないよう相殺しながら、リコリスはハイエルフに答える。かなり警戒しているようなので、攻撃と見られそうな行動をしないよう心がけた。
「いや……僕は生命魔法はあまり扱えないから、今すぐにどうにかできる訳ではないが……」
「分かってるわよそんなこと! この私にできないんだから、お前にできる訳ないじゃないっ!」
一瞬、語気に合わせて攻撃が激しくなる。
「……一旦、落ち着かないかい?」
「落ち着けって言われて落ち着ける訳ないでしょ!」
リコリスの提案はすげなく却下された。
「それもそうだね。君は住処を失ったばかりだし、相手がウィザリングとなると……準備をする暇すらなかったのだろう」
「今まで、こんな事なかったのよ! それが、たった少しの時間で……こんなっ!」
大分パニックになっているようだ。周囲には大きな危険はないし、落ち着くまで好きにさせてやろうとリコリスは思考した。どうせこのハイエルフは魔法連合で保護する事になるだろうし、できるのなら穏便に事を済ませたい。リコリス自身、予定もなかったのでいくらでも付き合えるのだ。
「……見たところ君はハイエルフだし、相当に長い時間を掛けて育てた住処だったのだろうね」
「何よ、何よ……っ!」
攻撃が当たらない事に苛立っているのか、ハイエルフはぷるぷる震えている。
「もう、周囲にはウィザリングの気配は無いよ。どこか、別の場所に向かったのだろうね」
落ち着かせるように声をかけた。ついでにリコリスは武器になりそうなものもしまい、自身が丸腰であると示すように両手をあげる。
落ち着いてきたのか、ハイエルフからは攻撃は飛んで来なくなった。
「私の森……私のだったのにィっ!!」
再び、はらはらと涙を溢し始める。攻撃も止んだので、しばらくそのまま泣かせる事にした。