開始13
ネディネーネとのカウンセリングが終わってから数日経った。そこで気付いた事がある。
「(彼女の服が、人間仕様になっている)」
この間まで、エルフの服だったのに。人間社会製の紺色のドレスとローヒールパンプスを着用しているようだ。髪飾りや化粧は変わらないが、服はエルフのものではなくなっている。
「(人間社会の物を購入できるようになったのだね……)」
謎の感心があった。これなら、きっと自身の部屋も過ごしやすいものにできているだろう。喜ばしいことだ。
そのはずなのに。
「(……何か、否定的な感情を抱いている?)」
リコリスは何か、一瞬だけ不快感に苛まれた。
「(なんだ、この感情は)」
無論、リコリスも人間だ。だから、楽しいと言う感情や不快だと言う感情を覚えたことはある。だが、これは今までに感じたことのない感情の流れだった。
「……なんだろう、これは」
覚えのない感情が不快だ。すぐさま自身に何か呪いか魔法がかかっていないか確認する。だが、何も異常はない。
「身体の不調か?」
精神的、肉体的不調は魔法薬で治せるはず。肉体的損傷は無い、と分かった。
「では、これは精神的なものか」
精神的な問題なら、魔法薬で治せる。それに安堵し、すぐさま精神的不調を治す魔法薬を入手して飲んだ。
「……魔法薬の味が、変わった?」
リコリスが所属する写本部署では、あまり魔法薬は使用しない。だから久々に飲んだのだが、今までの魔法薬と何かが違った。何だろう、と内心で考えていると
「ん、それはネディが作った魔法薬だよ」
背後から声をかけられる。フォルトゥナだ。彼女は知り合いを妙なあだ名で呼ぶので、ネディは恐らくネディネーネのことだろう。
「なるほど。彼女が作った魔法薬か」
確か、彼女は魔法薬を作る際に生命魔法を込めるのだったか。どうりで身体が軽くなった訳だ、とリコリスは納得する。ただ、感じた不快感は消えなかった。むしろ、少し酷くなったような。
「何かお探し?」
「精神的負荷を軽減する魔法薬を」
「おっけー。珍しいね、リコりん。何かストレス?」
「それが、分からないのだよ。今探っているところだ」
「ふん?」
フォルトゥナが首を傾げる。見た感じでは、精神的な不調は見えなかった。それに彼が原因を特定しきれていない、と言うのも珍しい話だった。
「必要があれば、ちゃんとしたとこでメンタルケアとかしに行きなよー」
「分かっているとも」
いくつか魔法薬を入手して、自室へと戻る。




