開始12
それなりに魔法連合に馴染んだようだ(リコリス談)。
フォルトゥナやスチームとも少しくらいは会話ができるようになったようで、リコリスは安堵する。これなら、もう1人でも大丈夫だろう。
「私を待たせるなんて、生意気よ! お詫びに、私のために本を読みなさいよね!」
カウンセリングルームに着くと、ネディネーネが本を持って待ち構えていた。随分とリコリスには慣れてくれたようで、強気な発言が増えてきた。恐らく、これが彼女本来の性格なのだろう。
「待たせて悪かったね。君がこの時間を楽しみにしてくれているのは、こちらとしても冥利に尽きるけれど」
彼女が差し出した本に視線を向けると、かなり本格的な書物になっていた。はじめは絵本や図鑑だったが。
「そろそろ、カウンセリングルームに来るのも終わりにしても良いんじゃないか?」
「嫌よ! 私が本を読めなくなっちゃうじゃないの!」
提案すると、ネディネーネは首を振った。
「人の文字を覚える気は?」
「教える時間を作ってくれるのかしら?」
「人の文字や言葉を教えるそれは講義になるから、僕が教えるとは限らなくなるけれど」
「それなら嫌!」
「うーむ。僕にばかり懐くのはどうかと思うよ。まあ、魔法連合内で使われている文字を覚えてさえくれれば問題はないか……」
魔法連合内では様々な怪異が居るので、難解な言葉は使われていないはず。ネディネーネ自身も特に利用に関して困っている話は聞かないので、ある程度はなんとかなっているだろう。
「……ねぇ、終わりっていつにするつもりよ」
ネディネーネが服の裾を引っ張った。どこか気落ちした声色で、終わらせたくないのだろうと容易に想像がつく。
「まだ詳細には考えていないけれど……そろそろ良いだろう。時間を短くして、頻度を減らして……あとは必要な時にカウンセリングを行えば良い。元々、このカウンセリングは君が魔法連合に慣れてくれるのを目的としているからね。慣れてくれたのなら、もう不要だろう?」
「それはそう……だけど」
「何か不満かい?」
「お、お前と話をする時間がなくなるじゃない。本を読む時間も」
「うーむ、そうだね……暇な休日くらいなら、多少は付き合ってあげるよ。毎度は無理だけれどね」
「本当?」
「ああ。(君は僕が連れてきた個体だし)多少の面倒くらいはどうという事もない。ただ、月に数回くらいで良ければ、だが。それ以上は、僕にも都合があるから難しいよ」
「分かったわ! 約束しなさいよ」




