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#3 葬送の儀式

チリン、チリン、チリリン。


私の手の中で小さな鐘の音が鳴る。

私を先頭にして、それに続くように、1091番モニカ・エーテルの遺体が入った棺が運ばれている。

更に、その後ろに続くのは彼女が生前親しかった友人、そして、掲示板の前で泣き崩れていた老夫婦である。


墓地に到着し、棺が地面に下ろされる。そして、老夫婦は棺の中を覗き込んだ。


「よく、生きたね」

「…向こうで、元気でな」


泣き崩れていた老夫婦も心の整理ができたのか、今や朗らかな笑みを浮かべている。

花がいっぱいに詰められた棺の中で眠るモニカ・エーテルは、どこか暖かく幸せそうな表情をしているように見えた。


「それでは…、棺の蓋を」


棺に蓋をして、土に埋める。

そして、私は黒いヴェールを被りながら最後にいつもの言葉を口にする。


「どうか、行く末が光で満ちていますように」


こうして、”葬送の儀式”は終わる。

葬送して弔って初めて、死者は現世と別れを告げることができるのだ。



弔いの儀式が終わってからも、老夫婦は名残惜しそうに墓地に残っていた。


その姿を遠くから見つめていると、棺を運び終えて一仕事終え、黒い装束からいつものラフな服装に着替えたアスランがたばこを加えながら、私の隣に並ぶ。


「死体を見るのには慣れても、別れの瞬間に立ち合うのは、やっぱり辛いな…」

「辛い…?」

「ああ、辛いだろ。本当は別れたくなんてないのに、別れの言葉を告げて、弔わなきゃいけない」

「私は、羨ましい」

「え?羨ましいか?」

「あの時は、死んだ後でさえ、別れを告げられない人が沢山いた」

「…」

「羨ましいよ」


私は無意識に自分の首からぶら下げた錆びた懐中時計を触っていた。

これに触れると、落ち着くのだ。


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