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第一話 転生しました

「──ぐっ!? ごほっ、ごほっ!」


 突然、全身の痛みによって目を覚ます。


 喉が痛い。


 なんだこの体は。

 咳をするたびに悪寒が背中を撫でる。

 そう、死に近づいてゆく感覚。

 肺から血が溢れ出て、口から流れ出ていく。


 俺は暫くの間、血と共に咳を続けた。

 

 キリキリと軋む全身。

 まるで、死の寸前の体だ。

 どうしてこうなった?


 確か……俺は……?


「お嬢様!?」


 気が済むまで咳をすると、近くから女の声がした。

 

「……?」


 視線を向けると全く見覚えのない女が隣で立っている。

 綺麗な顔立ちで、メイド服を着ているところを見るとどっかの貴族に使えるメイドだろか。

 誰だお前。


 いや、そもそもこの体自体に見覚えがないのだが。

 感覚的にだいたい8歳くらいの女子の体だろう。

 腕は細く、全身は病に侵されている。

 口の中はガラガラで死神とディープキスをしている感覚だ。


 病に侵されもう長くは持たない体だ。

 というか、もう死んでいてもおかしくない。


「お嬢様!お嬢様!」


 痛い痛い。

 揺らすのはやめてくれ。

 全身が軋んでなにかが胃から登ってきそうだ。

 

「や……め、」


 やめろと伝えよう思ったが上手く声が出せない。

 体を動かそうにも動かない。

 いったいどうしたものか、この状況。


 まあ、痛み自体はどうでもいい。

 慣れているからな。

 でもあんまり揺らされるとちょっと不味いかもしれない。


「も、申し訳ありません!」

 

 しかし、俺の心の声が伝わったのか涙を浮かべながら離れてくれた。

 

 えーっと、とりあえず不味い状況は去った。

 でも、これはどういう事だろうか。

 気がついたら知らない体で、知らない女が隣に居る。

 正直意味不明なのだが、少し状況を整理してみよう。


 俺は暗殺を請け負う組織のボスだった。

 →討伐命令が出され騎士団と戦うことになった。

 →その戦いの中で俺自身が襲撃に遭い、視界が暗転した。

 →そして今に繋がる。


 うん、全く意味がわからん。

 どうしてこうなった?

 気がついたら8歳の女の体になっていたんだぞ?

 それもほぼ死体に、だ。

 

「なあ……俺のな、まえは?」


 すると、俺の声を聞いたメイドは不思議そうな顔をして答えた。


「お嬢様のお名前ですか?エゲレア・ハイルカイザーですよ?」


 なるほどなるほど。

 この状況が大体読めてきた。


 

「ふふふ……ははは」


 つまりは俺は2度目の人生を手に入れたということか。

 俗にいう転生。

 

 全く、笑えるじゃないか。

 裏社会の存在が、気づけば貴族のお嬢様だった。

 人生とは何があるか分からないな。 

 まあ、前の人生は死で幕を下ろした様だが。


「──俺じゃ、なきゃ、不味かったかもな」


 この体はもう死んでいる。

 文字通り、だ。 

 どうやら貴族のお嬢様の、それも病によって死んだ体に俺は転生してしまったようだ。


 氷の様に冷たい手を動かし、胸に当てる。

 

 うん、魔力はきちんとある。

 

 これならば生きながらえられそうだ。

1時間後に投稿します。

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