57話 ドラゴン
「あれって……まさか、ドラゴン?」
「あ、ははは……。ヤバすぎるのは4階層だけ。なんだかんだ召喚師自体は格下で余裕……なんてことも思っていたんだけど……これはちょっと、というかかなり想定外――」
「……。ミークも気づいたか。名前こそ違うものの……あれは俺たちの知ってるモンスター。へび子だ」
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召喚モンスター:幼竜【白銀】
レベル:12【50ステータス反映】
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2本脚で立ち、白銀の鱗を煌めかせているそのドラゴンには見覚えのある何かで叩かれたような痕があり、更には俺たちを見て目に涙を溜めるといった様子が見られた。
おそらくはここでモンスターを食って、というか食わされて進化したのだろう。
だからその餌になるまいと、他の召喚モンスターたちはこの場から逃げていた、って考えればあの状況も自然。
それにしても他と比べて異質なモンスターだとは思っていたけど、まさかこんな姿になるだなんてな。
ともあれいくらドラゴンと言えど、レベルは低いし、そもそもこの個体がへび子であればわざわざ戦う必要はない。
「ぐ、があ……」
「へび子、ちゃん」
名前の通りまだ幼さの見えるその姿でへび子はトテトテとミークの下に。
そんな姿を見たミークは両手で口を押さえてさながら母親のような表情を見せる。
こんな状況なだけにへび子の救出という懸念が早々に晴れたのはありがたい。
いやぁそれにしてもなんとも微笑ましい光景じゃないか――
「ご、が……ああぁぁああぁあ!!」
「え?」
「う、そだろ……」
「危ない! ミーク姉さん!」
目を見開くミーク。
それに釣られるようにして俺も思わず呆気にとられてしまった。
何故なら……
へび子はそのまま熱い包容をするわけではなく、その口を大きく開けてミークに噛みつこうとしたのだから。
「なんで!なんでなのよ!」
「結局はあいつもモンスターだったってことかよ! なら……『炎閃焼』!」
「私も攻撃に出ます……出るぜ!おらおあああああああぁぁああぁあ!」
ミークがさっとへび子から離れたことを確認すると、俺は奥に見えるモンスターごと焼き払おうと包丁を地面に突き刺す。
同時に朝比奈さんは思い切り飛び上がり、へび子を仕留めに掛かった。
「ま、待って! この子、さっきまで泣きそうで――」
「こいつはもう敵だ!切り替えろっ!」
「でも……。……。……。そう、よね。私、なにを甘いこと――」
ミークが槍を握りしめると同時に魔法が発動。
光が走り、そのまま地面が赤く色付く……はずだったのだが――
――ごきゅっ!
へび子がその場から逃げるでもなく、地面にその口を押し当てて大きく喉を鳴らすと、地面に漂い始めた熱気は消えてしまった。
「まさか、魔力だけを食ったのか?」
「それに、見た目もレベルも……きゃあああああ!」
「朝比奈さん!」
小さかった翼俺の身長と同じくらいまで大きくなり、雄大にはためいた。
それによって起きた風は朝比奈さんを吹き飛ばすだけでなく、俺たちまで吹き飛ばそうとする。
ただ、あまりに強く翼をはためかせたせいなのか、へび子は体勢を崩し、尻餅をついた。
「まだその身体、レベルに理解が追いついてないって感じか?とにかく、このチャンスは絶対につかまないとまずい。くそ!まさかあれだけでレベル50まで跳ね上がるなんて……。ドラゴンって種族も大概チートってわけか」
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