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51話 高日給

「レベルアップ……。でも、気分が悪いわね。赤い衝動の発動だってあるはずなのに」


 クイーンゴブリンの背中から槍を引き抜くミーク。


 3階層のイレギュラーはこれで解決。

 めでたい瞬間のはずなのに、場の空気は重い。


「さ、4階層に行きましょうか」

「あの……。ちょっと待ってください。まだ私……」


 切り替えて先に進もうとするミークだったが、武器装飾品生成の反動で脚が思うように動かないのか、朝比奈さんは恐る恐るミークに声を掛けた。


2階層、3階層のゴブリン達を殲滅。

そこまでのことをして、そのまま4階層ってのは、なかなかにつらい。


 俺もさっきから腕に重みを感じるし、攻めたい気持ちはあるがここは朝比奈さんに乗っかるとしよう。


「ミーク、焦る気持ちは分かるけど……」

「……。仕方ないわね。でも、墓を作ってあげるには丁度いい時間だったのかもしれないわ。2人は休んでて。私はもうちょっと仕事をするわ」

「分かった」

「すみません」


 ふっとため息を溢したミークに返事をすると、背負っていた荷物からキャンプ用の椅子を取り出し、とりあえず朝比奈さんをそれに座らせる。


 俺も自分用に椅子を出し、とりあえず水筒に入れていた麦茶で口を潤す。


「――ふぅ……。それにしてもここまでのモンスターを召喚できるようになったってことは召喚師のレベルも相当なものになっているってことだよなぁ……」

「だと思います。クイーンゴブリンが78レベル……ということはそれ以上が確定。丸1日ダンジョンに籠っていたからとはいえ異常です」

「それよりも俺たちのレベルの方がおかしいですけどね」

「それは……そうですね。今の戦闘で私はレベル100、今までの差を考えると陽一さんはもう130以上とかですか?」

「いえ、まだ106です」

「え?」

「経験値のテーブルが変わっっていうアナウンスがあったと思うんですけど、それが影響しているみたいで。ただ、その分上り幅は大きいので6レベル差でもステータスは大分違うと思います。ちょっと落ち着いたら、また確認してみてください。驚くと思いますよ」

「じゃあ陽一さんはもう確認もステータスポイントも振り終わったてことですよね? すみません、もう準備が済んでいるのに私のせいで先に進めなくて」

「謝る必要なんてないですよ。そもそもこの速さであの数を殲滅できたのは朝比奈さんのおかげですから。それにしても凄いですよね、この装飾品」

「はい。でもまだまだ初球の極みレベルで……あの男は中級、上級、それ以上を極めてる可能性も……。改めて差を感じますよね」

「確かにですね。テイム状態でまだ職業の進化ができていないというのも、その差に繋がっていて……。生き延びるということを優先するなら確かに荒井さんの重視していた基本パッシブや戦い方が最重要なのかもしれませんが、倒すということならとにかくレベル上げですね。早く進化まで辿り着かないと――」


「なるほど、テイム状態の場合進化が遅くなると」


「え?」

「高橋さん!?」

「2階層でホブゴブリンの死体を見つけて急いでここまで来たんだけれど……。思ったより余裕みたいで安心したよ。いやはや末恐ろしすぎる新米探索者だ。地上で治療をしている探索者たちは勿論、この噂を知った探索者の間で君たちはちょっとした英雄扱いだよ」


 いつの間にか高橋さんが俺たちの背後に立ち、しかも会話を聞いていたのか、してやったりという表情で声を掛けてきた。


 威圧感はまるでないけど、この人も大概凄い人だ。


「さて、そんな君たちには早速4階層に挑んでもらおうか」

「えっと、ちょっと待ってください。まだ朝比奈さんの状態が……」

「ポーションなら大量にあるよ。しかもいつも飲んでいるものよりも上等なやつ」

「あの、それってお高いんでしょう?」

「テレビショッピングみたいな聞き方をするね。まぁその言葉通り普通に買えば5万円はとるような代物だけど……実はここまでに倒されていたホブゴブリンたちの死体から剥ぎ取れた素材、それを消える前に今探索者協会の人間が回収していてね。ここにもすぐその人たちが来る。それで一応確認できている分の売却額、それを君たちの成果として渡すように、と。持ってきていて……それがおよそ50万円。だから十分支払える額ではあるよね」

「あまり35万円。3人で割っても日給10万円以上……」

「そう普通なら差し引き35万円。でもここからが話の要で……この案件は探索者協会から探索者への依頼になった。しかも現状を考慮して君たちには特別、名指しでの依頼が出て……それに掛かる費用の半分を探索者協会が負担する、だってさ。こんなこと稀も稀。もしかしたらこれを達成した際には、探索者協会からその【称号】をもらえるかもね。まったく、自分の時はあれだけ苦労したんだけどなぁ……。というわけで、はい。ポーション代を引いた42万5千円」


 高橋さんは雑に懐から札束を取り出すと、それを投げ渡す。


 ……。

 なんだかんだ大金持ちになるにはまだまだ遠いと思っていたけど……。


「成金になる時ってこんな感じなんだな」

お読みいただきありがとうございます。


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