35話 剥ぎ取りタイム
「これで……10っ!毛皮だけで1枚、手取りで3000円それが10枚で……もう3万円って時給換算とんでもなさそうですね」
「はい。それにこれ……毛皮が1番高価な理由がこうしてみるとよく分かります」
「ここまで重労働で手間が掛かって……。需要はあるけど他の探索者があんまり売りにもってこないからずっと高価。理屈は分かるし、全部剥ぎ取りたいけど……いやぉもう何時間これやってるんですかね、俺たち」
「大体2時間くらいで……あの、これ言うと怒られるかなって思って言わなかったんですけど、流石に人手が欲しいから言いますね。ミーク姉さん、結構前からもう起きてます」
「……。あいつ、亜人だけどある意味1番人間らしいことしやがって……。おいミーク!働かざる者食うべからずだぞ!サボるなら晩飯抜きだ!」
「ちょっとお!あんなに頑張って、しかもあいつに強烈な一発もらってるのよ!ちょっとくらい楽させてくれてもいいじゃない!」
「……。良かった、元気そうだな。鼻の骨は大丈夫か?まったく荒井さんもやりすぎだよ。折角の綺麗な顔が変形したら大変だってのに」
「なっ!? ……。この人たらし! 亜人たらし! そんな綺麗とか可愛いとか簡単に言わない方がいいわよ!」
「可愛いは言ってな――」
「あーもう、なんか身体動かしたい気分! あと10匹よね、ささっと終わらせてなんならまたレベル上げよ!」
泣き終わるとその余韻を味わうことなく、朝比奈さんは俺と共に剥ぎ取りを開始。
牙や爪、目玉、そして心臓まで今回はしっりと仕分ける。
だが時間を掛けて売れる部位を増やそうと決めたはいいものの、慣れない作業にどうしても時間をくってしまった。
素材の仕分けだけだと『料理強化』のスキルが使えないのが難点だな。
ミークが作業に加わってくれるのは助かるけど、この分だとあと1時間かそれ以上は掛かりそうだ。
「せめてこの皮がもう少し柔らかかったらいいんだけどなぁ……。だんだんサバイバルナイフの切れ味が悪くなってきたし、そのせいで! 余計に力を入れないと……よっと!」
「じゃあその、私そろそろ身体も大丈夫だと思いますし、丁度ミーク姉さんも起きたので武器、まずは陽一さんの包丁を作りませんか?」
「朝比奈さんが大丈夫ならお願いしたいですけど……無理だけはしないで下さい」
「戦闘以外は無理するつもりはないので安心してください。では素材をもらっても?」
戦闘中は無理するのね……。
面倒だけど、これからはスライムの素材をストックさせて、常に防御力強化中のバフくらいは発動させておかないと、だな。
「それじゃあこれを。『アイアンアリゲーター』の素材でランクはC+。武器生成には問題無さそうですか?」
「……。はい。大丈夫です。それにしてもこれ、結構強そうな武器になりそうですよ。攻撃力補正はそんなにですけど、代わりに与えるダメージと防御力補正が優秀で、防御力補正に限ってはクラデビーパの3倍。最大値の場合5倍。どうやら防御寄りで、かなり武器登録システムによる恩恵が大きい武器みたいです。スキルは私の方で確認できないので、武器生成が終わったら武器登録を完了させて、陽一さん自身で確認してみてください」
「分かりました」
「それでは早速……」
「いいなあ陽一。私も武器欲しいなぁ」
「勿論ミークの分ももらってあるから安心しろって。ただ朝比奈さんの体調を見つつだから最悪明日になるかもだけど」
「明日でもなんでも貰えるならなんでも嬉しいわ。それにどうせ、武器を使わないといけないような相手なんて当分あいつくらいしかいないでしょうから」
「それもそうだな――」
「武器生成開始」
俺とミークの話を遮って開始された武器生成。
素材は姿を牛刀の形を描き、刀身を真っ黒に染め上げる。
変わった紋様が刻まれているが、それもあのダマスカス鋼を連想させ美しい。
だけど肝心なのは性能。
一旦武器登録を完了させて、と……。
――さて、その解放されたステータスを拝ませてもらおうじゃないか。
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