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11話 強襲

「――そ、れで……。【波】っていう言葉、ミークは何か知ってることある?」

「ない、わね。あっちではダンジョンに潜る必要はなかったから。っていうのも村から少し移動すればモンスターなんか、今ほどじゃないにしても、そこら中にいて……。日常生活をする場所がもうダンジョンみたいな……。わざわざここに来るような人間が多いってことは、こっちはそうじゃない、の?」

「こんなのが当たり前だったら、こっちの世界はパニックで……っていくらなんでも多いな」


 2階層を目指すこと2時間。

 ようやく俺たちは2階層への階段を視界に捉えた。


 1階層は他の階層に比べて広くない。

 しかも2階層への道が既に判明していて、探索者協会からそのマップ情報が送られているという今の状況であれば走って30分なんていう人もいるらしい。


 それなのに俺たちが未だに1階層にいる理由、それはいったいどこから湧いてきたんだと突っ込みたくなるような数のモンスターが俺たちを常に攻撃してくるから。


 多分だけどもう全部で200は倒してるんじゃないか?


 レベルもそれなりに上がって今日中に20はいけそう。

 素材も単価こそ低いものばかりだけど、足せば1万円は越えそうだ。


「ミノタウロスに怯えてた層とそれに住みかを仕切られていた層が自由に動きだした結果ね。今までの私だったらこんなのを相手にするのは不可能だったけど……全員一撃で倒せるなら問題ない、わ!」


 ミークの攻撃で弾けるスライム。

 アルミラージ、ブラックハウンドからは骨の砕ける音が鳴り響く。


 モンスターたちのレベルは1から高くても4。


 最早この階層のモンスターに敵はいない。


 自分のステータスを初めて見て絶望していたのが懐かしいくらいだよ。


 それに……。


「あいつ、さっきの料理人の、だよな?なんで亜人と一緒にいるのかは分からないけど……あの強さ異常だぞ」

「『フェイク』のスキルでステータスを隠していたんじゃないか?初日であんなに強いなら何か秘密があるはずだろ」

「階層主の姿が見えないのとこのモンスターの数……もしかするとあの人がもう階層主倒しちゃったのかな?」

「あの強さならあり得るな」

「……それにしても、凄いな」


 同期からの羨望の眼差し。

 これが気持ちよくない人間なんていないだろ。


『討伐数が一定を越えました。ノーマルスキル【威圧】を取得しました。レベル差が大きなモンスターに対して有効です』


「新しいスキルか……早速使ってみるか、『威圧』」


「――うっ、これ私にも……」


 威圧を発動すると、群れていたモンスターたちは勿論探索者たち、さらにはミークまでその場に膝を着き汗を流し始めた。


 ダメージはないものの、相手の先頭意欲を狩るにはもってこいのスキル――


「嘘だろ! こんなに強い殺気が1階層にあるはずがない! ……となるといつの間にかここまでモンスターが登って来てたのか……。そんでそのモンスターは……多分あの牛だな。【波】の時期はまだ先のはずだってのに、今回はマジでヤバいかも、なっ!」


 2階層への階段からひれ伏すモンスターの群れを掻い潜ってきた人間が1人。


 その人間はミークをじっと見つめたかと思えば今度は両刀を抜き高く飛び上がった。


「まさかあいつミークをモンスターだと思って……。『威圧』解除! 逃げろミーク! くそ、『真空波』!」


 俺は叫びながら攻撃を放った。

 しかし威圧が全く効かない相手にそんな攻撃は当然効かず、その人間が持つ剣は簡単に振り下ろされてしまった。

お読みいただきありがとうございます。


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