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お茶会 3

 ……さて、ここからは気を引き締めていかなきゃ。


 車窓から外を眺めていると、見覚えのある建物が見えてきた。

 馬車は徐々に速度を落とし、その建物の門前に止まった。

 

 ああ、ついにスターク家に戻ってきたんだわ。

 

 セバスさんのエスコートで馬車から降りると実家の門をくぐる。

 

 予想はしていたけど、誰も出迎えの者が来ないわね。


 そう思っているとスターク家の使用人が私達に気付いてこちらにやって来た。


「これはこれは『能無し』のお嬢さんじゃないかい。随分いい馬車に乗っちゃって、あんたも出世したもんだね」


 ああ、このメイドはお母様にばかり媚びを売り、私にはいつも辛く当たっていたわね。

 相変わらずの態度で、ある意味通常運転だわ、と思っていると隣にいたセバスさんの穏やかな表情が一変して鋭い目線に変わる。

 

「スターク家は、随分と躾のなっていない使用人を雇っているのですね」

「ああん? なんだって!?」


 まずい、玄関先で喧嘩でもして変な噂を立てられたらクロード様に迷惑を掛けてしまうわ。


「セバスさん、大丈夫です。それより、今日は妹のお茶会に参加するために戻ってきたの。場所を教えてくれる?」

「ふん、マーガレット様も『能無し』をわざわざ呼びつけるなんてね。会場は中に入って右側の応接間だよ」

「ありがとう」

「あ、ちょっと! こんな馬車、玄関前に置きっぱなしじゃ迷惑だから裏門前に移動しな。ったくあんたはそんなことも分からないなんて。これだから『能無し』は出来損ないで困るんだよ」


 他の参加者と思われる馬車は正門の端に置かれているのに、私だけ裏門に移動、か。

 これはお茶会でもそれなりの扱いを受けそうね。


「そうでしたか。移動しておきますね。セバスさん、すみませんが馬車の移動をお願いします」

「……承知いたしました」


 セバスさんは何か言いたげだったが私の指示通りに馬車を移動させる。

 

 さて、会場は応接間って言ってたわね。

 

 セバスさんと合流し、気を引き締めつつ屋敷へ足を踏み入れる。


「奥様、本日は無理せずお茶会を辞退された方がいいのでは。それに使用人のあの態度、不敬罪として処罰も可能でございますが」

「セバスさん、助言をありがとうございます。でも、いつものことですから大丈夫ですよ」


 セバスさんの表情はいつもどおりではあるものの、辺りを警戒しているようで眼光は鋭いままだ。

 

 本当は私もお茶会なんて参加したくなかった。

 でも、私には今日やらなければならないことがある。


 ……そう、害悪にしかならないスターク家との縁を断ち切ることだ。


「セバスさんがおっしゃりたいことは分かります。ですが、私にはやるべきことがあって今日ここに来ています。セバスさんには申し訳ないのですが、もう少しだけお付き合いいただけると助かります」


 セバスさんは一瞬何かを考えるそぶりをみせたが、私の意見をくみ取ってくれたようで深く頷いた。


「承知いたしました。ですが、奥様、一点だけお約束いただけないでしょうか」


 セバスさんからのお願いごと? 


「はい、何でしょう」

「身の危険に及ぶようなことだけは絶対になさらないでください」


 ああ、セバスさんは私の事を心配してくれているんだな。

 その気持ちだけで、敵だらけのこの屋敷にいても、とても心強く感じる。


「ふふ、それは大丈夫ですよ。セバスさん、心配してくれてありがとうございます」


 会場の応接間に着いたため、セバスさんは扉を開けた。

 中に入ると令嬢達が一斉にこちらを向く。

 その奥には、綺麗なウェーブを描く亜麻色の髪を靡かせ、これでもかと盛大に着飾ったマーガレットが座っていた。

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