序章・・・的な?
極普通な中学生の俺、原田直輝。
特に特徴はない。
・・・悲しいとか虚しい、とか言うな。
まぁ確かに悲しいっちゃ悲しいが・・・
だが聞いて驚くなよ!?
俺には超凄い幼なじみがいるんだ!!!
どう凄いのかって?
それはな・・・
容姿端麗、文武両道・・・
それだけじゃ、『超』が付くほど凄くはないと思う。
どこが『超』かと言うとだな・・・
俺が14年間片想いし続けている奴なのだ!!!
どうだ!?凄いだろ!?
俺の自慢の幼なじみさ。
もう本当に美人なんだぜ?
肌は白く、目はパッチリ二重、鼻は高く
そしてスラっと背も高く、おまけに・・・
スタイル抜群!!!!!
そんな凄い奴が何故俺と絡んでくれるのかは謎のままだが
まぁ俺は今青春真っ盛りさ!!
あっ、まだ名前を教えてなかったな。
刹那希叉。
だがな、そんな完璧とも思える希叉にも一つ重大な欠点があるんだ・・・。
それは・・・
「なにボサっと突っ立ってんのよ。早く学校行くわよ。あんたの所為で遅刻したらその頭噛み砕くわよ。」
「あ、スンマセン・・・」
そう、この毒舌っぷりが欠点なのさ。
毎日『噛み砕く』だの『マリアナ海溝に沈めるぞ』だの『あ、なんだ生きてたのか。脳みそに蛆虫湧いてそうだったから死んでんのかと思った』だの・・・
はぁ・・・。
マジで何度も心折れそうになったわ。
「早くって言ってるでしょ。そんなに頭噛み砕かれたいの?」
「はい!!マジすんません、おいてかないでくださ~い」
「はぁ、ついた~!つか全然時間余裕じゃん!?急ぐ必要あったの!?」
「私、これから部活の朝練あるから。じゃあね、糞蟲。」
・・・
「ひでぇ!!!!!!!!」
因みに俺はどの部活にも所属してないから朝早く起きて練習・・・
とかもある筈がない。
そして希叉は運動部全て+美術部に所属しており、今日はテニス部の練習だそうだ。
一人残された俺はとりあえず教室に向かった。
「あ」
一人の女が席について本を読んでいた。
野山みくという同じ図書委員会の同級生。
・・・最悪だ。
「お、おはよう・・・。原田君・・・。今日は、早いんだ、ね・・・?」
・・・・
「あ、ああ・・・」
最悪だ、最悪すぎる・・・
超気まずい・・・!!!
何がどう最悪で気まずいのかというと・・・
―――それは、ほんの数日前の事だった。
「あの、原田君・・・・。私、あなたの事が好きです!!付き合ってください!!!」
という出来事があったのさ。
つまり告白されてしまった、と・・・。
野山も可愛くてそこそこモテているはずなのだが・・・
何故俺を好いてくれているのだろうか。
俺、なんかした?
まぁ俺は希叉一筋だしな!!
しかし・・・。
せっかく告白されたのだから、断ってしまうのも惜しいような・・・。
と、ずっと考えているうちに一言も会話を交わさずに今日に至ると言う訳だ。
一言も交わしていないのだから当然、返事もまだだ。
「・・・あの・・・この間の事なんだけど・・・。へ、返事はいつでもいいから・・・。」
・・・
「う、ん」
ヤベェよこれ。超気まずいよ!!!
頼むから誰か来てくれ・・・!!
ガララララ
教室の戸が開く音がした。
やった!!!神の救いだ!!!!
!?
最悪のパターンだ・・・。
なんで寄りにもよってこんな時にこんなタイミングでこんな奴が・・・
「・・・・・」
体操服姿で何も言わず無言で何かのプリント?らしき物を手に教室を去っていこうとする希叉。
「お、おい!?待ってくれよ!!」
「何だ、いたんだ直輝。影薄すぎてまーーーーーーったくもって気が付かなかったわ。」
「何故『全くもって』を強調する!?」
「はぁ」と小さくため息をついて、少し呆れた様子で希叉が返事をする。
「あのね、私、急いでいるのが分からないかしら。朝言ったように部活があるの。まぁ分からないのも仕方が無いわね。あなた、下等生物以下だもの。」
ひ、ひでぇ言われようだぜ・・・!
涙が出そうになってきた・・・。
まぁ、もう慣れたがな。
「じゃあ、私はこれで。あでぃお~す」
「ま、待てって!?」
そんな俺の言葉を無視して去って行ってしまった希叉。
「原田君と・・・刹那さん。本当に、仲、がいいんだね・・・」
「そ、そうか?まぁ一応は、幼なじみだしね・・・」
「う、うん・・・。そうだよ、ね。」
そして小さく
「私も原田君と幼なじみだったら、あんな風に仲良くなれたのかな・・・。」
と呟いた。
だが俺には何と言ったのか聞き取れなかった。