9033列車 →幸福
智暉サイド
ひがし大雪ガイドセンターでレンタカーの鍵を受け取り、さっさと山を下りた。
帯広の街に降りてやることは、お昼ご飯を食べることと今持っている特急「おおぞら12号」の切符を払い戻して貰わないといけない。しかし、腹が立つくらい晴れている。これで本当に走らないのか。そう言いたくなるが、プロが走らないと言っているのだ。アマチュアが口を出すべきでは無い。
帯広駅のロータリーに車を走らせ、今治が車に残っている間に僕がみどりの窓口へと足を向けた。一度窓口に行ったが、払い戻しは改札口の近くにある方で対応していると言われ、そちらに向かった。
智暉「すみません。この切符払い戻しをしたいんですけど。」
といいながら、切符を差し出す。
帯広駅員「分かりました。」
智暉「・・・それにしても帯広じゃあ、本当に運行できないのって言うくらい晴れてますよね。」
と言った。
帯広駅員「そうですね。しかし、札幌の方が全然除雪が進んでいないらしくて。」
智暉「ああ、そうですねぇ。凄い酷いらしいですからね。」
帯広駅員「ホント、申し訳ありません。」
こういう時に駅員が謝ってもなぁ。相手は天気なわけだし、非難されるいわれは無い。除雪が追いつかないとはいえ限りある人員をフル活用して全力で作業にあたっているである。これにも非難されるいわれは無いはずだ。
智暉「ところで明日の運行情報ってここじゃあ分からないですよね。」
と聞いてみた。
帯広駅員「そうですね。まだ正式な情報はこちらには届いていないので。」
だよなぁと思っていると駅員さんは間髪入れずに
帯広駅員「それでも、明日も厳しいんじゃないかといわれていますね。」
厳しいか・・・。
払い戻しを終えて、車に戻ると今治に明日も運転再開は厳しいと言うことを伝えた。
帯広駅を後にしたら、車を中札内方面へと走らせた。国道236号線を走っているとしばらくして「愛国」という地名が目に入るようになる。国道から別れて街中に入る。その突き当たりに「愛国駅」と書かれた建物が見えてきた。
今は札幌や釧路と繋がる根室本線しかない帯広だが、昔はタウシュベツ川橋梁が通っていた北に向かう士幌線の他に南に向かう広尾線という路線も通っていた。ここ愛国駅はその広尾線の駅である。愛国というのはいかにも変な地名であるが、北海道開拓の為にこの辺りに入った「愛国青年団」という団体からとった為という。
今治「ここには来たことなかったからなぁ。」
智暉「そういえば道の駅巡りでもこの辺りには来たことなかったなぁ・・・。僕が行ってないところでも道東の端の方まで行ってたし、この辺りは無視してたよなぁ。」
今治「そういえばそうだな・・・。あっちもいつになったら再開できるんだか。」
智暉「まぁ、やりたきゃやれば良いんじゃね。僕は参加できるかどうかは知らないけど。」
今治「いやぁ、あんまり参加しない方が良いんじゃねぇの・・・萌ちゃんに愛想尽かされるぞ。」
智暉「ハハハ・・・愛想だったらもう尽かされてるだろ。」
今治「・・・。」
智暉「まっ、これが終わったらちゃんとケアはするから。」
今治「俺じゃなくて、萌ちゃんに誓ってやれ。」
智暉「ハハハ。違いねぇ。」
この後幸福駅に寄ってから、帯広広尾自動車道・道東道を通って千歳・札幌へと帰路に就いた。そして、十勝清水パーキングエリアに着いた辺りでJR北海道から明日の運行情報が正式発表されたのだった。
智暉「今治、レンタカー取れたら実行するけ。宗谷ラッセル。」
萌サイド
萌「お邪魔します。」
光・智萌「おだまします。」
保育園に寄ってから、梓ちゃんの家にお邪魔することになった。先に「ママ、お帰り。」といい、梓ちゃん達の子供の陽斗君が玄関でお迎えしてくれた。
陽斗「今日はおばさんと一緒なの。」
梓「お姉さんね。」
萌「・・・ハハハ・・・。陽斗君からしてみたら私もおばさんか・・・。」
大希「また梓ちゃんは勝手な・・・。」
そう言いながら、奥の部屋から旦那さんの鳥峨家大希が出てきた。腕に1人、背中にも1人子供がいる。玄関まで来ると梓ちゃんに少し厳しい目線を向ける。その視線を向けられた梓は少し顔を赤くしながら、
梓「ちゃんと事情は説明したでしょ。」
と言った。ああ、そういえば梓ちゃんは夜の運動会が決まってたんだっけ。
大希「分かってるよ。ちゃんとあっちもしてくれるならね。・・・まぁ、追い出すようなことはしないで、今日はゆっくりして行きな。」
萌「大希君もゴメンね。そっちだって子供もいるだに。それにお休みだったんでしょ。」
大希「ホントだよ。梓ちゃんのお人好しぶりにはいつも驚かされるよ。あっ。そういえば明日お休みとってくれた。」
梓「とったわよ。約束だし。」
陽斗「ママ、明日お家にいるの。」
大希「ああ、明日はママとパパでずっとお家にいるよ。」
梓「って、大希。まだご飯作ってないよね。」
大希「ああ。俺が作るよりも梓ちゃんが作る方が美味いからな。」
梓「今すぐ作ってくるね。」
そういい、玄関で靴を脱いで旦那さんの横を通り過ぎようとした時、何か言われたのか。
梓「まだ早いっての。」
と返す声だけ聞こえてきていた。