表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/13

第二話



デジャヴュなんというものは、所詮、類似認知メカニズムの働きによって起こるものだ。記憶の中にある似たような物事と、目の前のそれを重ね合わせて、まるで過去に経験したような錯覚に陥るだけの。


——そうだったなら、どれだけ良かったろう!


日傘を差して、アレクサンドラは思う。

学園の門前に、新学期の今日は異様な人だかりが出来ていた。貴族とはいえ、親兄弟が近くにいなければこんなものだ。まるで“アイドル”のように祭り上げられている六人の王子達が、揃いも揃って集っている。珍しい光景だった。


「ああ、見て!吸血鬼に相応しい、あの美しい御髪を!」


うちの一人が感極まったように叫び、アレクサンドラはちらりと目を向けた。


きっとアルカードのことだろう。闇を切り取ったように黒い髪は、獲物を狩るに相応しい色をしている。吸血鬼にとって、黒の髪というのは王者の色とも言えた。


アルカードは赤い瞳を彼女に向けると、一瞬だけ目を細めて頷く。


アルカード・ツェペシュ。

彼はアレクサンドラの許嫁であり、最も高名な竜の血族の次期当主だった。

アレクサンドラは微笑むと、人だかりを避けるように広場へと足を進める。

少し離れた場所から彼らを眺め、ふと思い立って踵を返した。何故だか、バルコニーに向かいたくなった。高いところから見下ろしたくなったのかもしれない。


だって今日は……今日は。

彼女は階段を上っていく。地面が遠くなっていく。薄暗い室内で、彼女の瞳だけがやけに瞬いて見えた。


今日は!


バルコニーへ続く扉を開け放ち、柵に手を掛けて彼女は門を見下ろした。学生達のざわめきが聞こえてくる。門の前に誰かが立って、こちらを見上げている。


「今日は……『クルースニクの花嫁と、六人のヴァンパイア王子』の、オープニングだものね」


アレクサンドラはうっとりと呟いて、六人の王子に囲まれた少女を見下ろした。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ