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第一話



「ええ、ええ!一体何を反省しろというのです、いい加減になさいな。私は何も悪くありませんわ、それは過去も今も未来も変わりません。何故って、だって、私は——」



ひゅーっと息を飲んで、彼女は目を覚ました。


恐ろしい夢だ。何度も見る夢だ。


隣に立っていた処刑人は小さな声でぶつぶつ祈りを捧げ、振り上げた斧はぎらぎら光っている。夢の中の女は見物客を睨みつけ、纏められた赤毛を振り乱し、壮絶な笑みを浮かべてそこに膝を突いていた。


あれは私だ。アレクサンドラ・バートリは思う。

彼女はベッドの上で身体を震わせると、両の手で己の身体を抱きしめた。恐ろしかった。


しかし召使いの足音が聞こえ、彼女ははっと呼吸を整える。寝乱れた髪を撫で付け、なんでもないといった様に微笑んだ。


「お嬢様、お目覚めの時間ですよ」

「あ、ああ……起きています。いい朝ね」

「明日から新学期が始まりますね、また暫くお嬢様とお会い出来ないのが悲しいです」


明日から彼女の通うポエナリ学園は新学期だ。アレクサンドラは高等貴族の家に生まれ、当然のようにポエナリ学園へと入門した。

寮が併設された学園は珍しくないが、貴族すらも通う学園で、召使いを連れずに寮生活とはいささか不自然かもしれない。

しかしそれは他の学園での話だ、ポエナリ学園においてそれは当然だった。


「お嬢様、本日のお食事は豚でございます。朝に“落とし”ましたので、新鮮ですよ」

「まあ!珍しい。寮では頂けないものね、嬉しいわ」


テーブルに並べられたのは一つのグラスだ。

ワインのように見えるそれを彼女は取り上げ、顔を綻ばせる。

昔は泣いて嫌がったものだが、生き物とは順応する性質を持っている。今となってはかつて忌避感を抱いていたことすら、あまり覚えていない。



「やはりね、吸血鬼(ノスフェラトゥ)とは、こうでなくちゃ」


彼女は――いや、彼女の一族は吸血鬼だ。



アレクサンドラの通うポエナリ学園は別名、吸血鬼の学舎とも呼ばれている。

今や高等貴族の多くは吸血鬼によって構成され、人間は彼らの家臣として仕えるか、平民としての生を全うしていた。

だが人間が全く居ないわけではない、ポエナリ学園においてもそれは同様だった。



「そういえば、新しい方が入るそうよ。転入生なんて珍しいわね」

ふと思い出したようにアレクサンドラは呟いて、それから唇に滲んだ血液を舌で舐め取った。


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