先行部隊殲滅戦で よーそろー
「このまま大気圏出るよ、でたらレーダーで敵艦捕捉して」
時雨の声が飛ぶ。
レーダーを見つめる冬花と七海、敵からの攻撃を見ている時雨と紅葉。
「大気圏出ました」
沙希が叫んだ。
「敵艦は何隻?」
時雨は七海に聞く
「高速巡洋艦と思われる敵艦五隻です」
七海が答える
「右三十度、仰角三十八度一番主砲うちぃかーた」
冬花が叫ぶ
「右三十度、仰角三十八度一番主砲打方準備完了」
砲撃手がくりかえす
「撃てー」
と時雨が叫ぶ
ドビューンと主砲が発射された。
「左四十五度、仰角二十三度二番主砲うちぃかーた」
直ぐ様冬花の声が飛ぶ
「二番主砲左四十五度、仰角二十三度発射準備完了」
砲撃手がくりかえす
「撃てー」
ドビューンと主砲が発射された。
「面舵一杯、右四十度傾斜」
時雨からの指示が飛ぶ
「着弾確認敵巡洋艦破壊確認」
紅葉から報告が来る。
敵からの攻撃が艦の直ぐ際を通過して行った。
「今のをかわしたのか?」
敵の先発隊指揮官ァーヴィング・アーソンが思わず席を立った。そう言えばおかしい、宇宙に上がってくる間にも攻撃を受けたはずなのに何故ほぼ無傷なんだ。全て避けたのか?避けていたのならば今のもわかるがまさかな?
今は主力は居ない筈なのだから。アーソンは舐めていた。舐めていたからこそ本体に報告をしなかった。其れが今後の海賊の運命を変えようとは思わず。
「取舵一杯左八十度傾斜」
艦橋の直ぐ横をビームが通過していった。振動によろける時雨たち。
「着弾確認敵艦二隻目破壊しました」
紅葉から報告がある
「おもーかじ10秒後取舵一杯よーそろー」
時雨から指示が入る
沙希は復唱する暇もなく操作する。
「主砲一番、二番左十度仰角五度一斉うちぃかーた」
冬花が指示を出す。
「主砲一番、二番左十度仰角五度一斉打方準備完了」
砲撃手がくりかえす
「撃て」
時雨の指示が飛ぶ
ドビューンドビューンと一番二番と順番に発射された。
冬花は最初の二回は指命打方で指示し三回目は一斉打方に変えている。最初は五隻おり最初の位置で二隻破壊出来ると判断した為 指命打方(米1)を選んだ訳だ。その後時雨が各個撃破するように舵を取った為 一斉打方(米2)に変更した。この二人は阿吽の呼吸で理解している。と言うよりは冬花が時雨がどうするのか、したいのかを理解しているのだ。
「着弾確認敵巡洋艦破壊、あと二隻です」
紅葉のしっかりした声が飛ぶ
「しっかし、人の数よりこの艦が おっおきいよ。艦の横についてる主砲とか意味無いし操作できないなんてまじ草。戦闘機とかパイロット居ないのにあっても意味なくない」
と時雨は愚痴る
「まぁしょうがないよ。他の艦が動かなくなったりした時に此方に移動出来るように最小限の人員しか乗って無いんだから」
と冬花は困ったように苦笑いで答える
「そうだけど、いざ戦闘になると邪魔だよね」
とまだ拗ねている
「おもーかじ一杯」
時雨も後二隻となり落ちついてきたようだ。
「おもーかじ一杯」
沙希も先程より緊迫してないようだ。
「左四十五度、仰角二十八度一斉うちかぁーた」
冬花は元々落ち着いているようだ。
「左四十五度、仰角二十八度一斉打方準備完了」
「うちぃかたはじーめ」
時雨の指示がでる。もう練習している様な発生だ。
ドビューン、ドビューンと発射された。
「とーりかじいっぱい」
時雨から指示がでる
「取舵一杯」
沙希が答える
「着弾確認四隻目敵巡洋艦破壊確認しました」
紅葉が報告する
「最後の一隻ですね」
冬花が時雨に声を掛ける
「うーん、結構やばい相手だよね。結構余裕で避けたつもりだったけど、結構際どい攻撃を受けてるんだよ」
時雨は指をトントンしながらどう戦うか考えていた。
その頃アーソンは事態を飲み込めなかった。舐めていたのは間違い無いが、こんなに早く四隻を撃墜されるのかと考えていた。
「司令、撤退しますか?」
と聞かれ
「いやあの戦艦の能力を知りたい。撤退はその後で良いだろう」
「了解しました」
「全速前進、敵艦に向けて一斉射撃し、破壊出来なければそのまま全速離脱を行う」
とアーソンは指示をした。
「了解」
と副官は返答し艦を前にだした。
「艦長、敵艦此方に向かいながら一斉射撃してきます」
と紅葉が言う
「冬ちゃん、一回で決めて 逃さないよ、おもーかじ敵艦の前に艦を出して」
「了解」
と沙希が答える
「一番二番四番五番主砲交互うちかぁーた、一番二番仰角一度ずつ変更、四番右一度五番左一度変更」
「一番二番仰角一度ずつ変更、四番右一度五番左一度変更 交互打方(米3)準備完了」
「司令、敵艦我が艦の進路前に出てきました」
副官が叫ぶ
「其処まで肝が座っている艦だった訳か、撤退する。」
「司令間に合いませんもうロックされています今から逃げる場所に当たるよう砲が動いています。向こうの射撃指揮者を褒めるべきでしょう。そしてあの陣取りを平気でする司令官も」
「そうだな、認めよう。私は余りにも侮り過ぎたな。今まで沢山の人を殺してきた末路がこのありさまだ笑えるな!ワッハッハハハ」
「うちぃかたはじーめ」
ドビューン、ドビューン、ドビューン、ドビューンと主砲が発射された。敵は諦めたのか避ける事なく全てが当たった。
交互打方していた為更にドビューン、ドビューン、ドビューン、ドビューンと追い討ちした。その一発は艦橋にあたり爆発して消えた。
「死ぬ時に初めて自分のしてきた事がわかるものだな、愚かな事だ」
ドッガーンと艦橋が光に包まれて消滅していった。
「紅葉ちゃん、学園長に報告を」
「わかりました艦長」
「学園長、此方ELEWです報告があります」
「貴方たち無事なのね、其方はどの様な感じなのかしら」
「はい敵艦五隻破壊完了しました。今のところ他の艦影ありません」
「そう、お疲れ様一旦帰還してもらえるかしら」
「了解しました。帰還します」
「気をつけてね」
「了解です」
ふぅ、やれると思っていたけどここまでとは思わなかったわ。此れで反抗作戦を開始させれるわね。更にあの子たちに重荷を背をわせてしまうのね。ハァと机に向かってため息をもらした。
「じゃあ帰ろうか」
と時雨が
「そうだね」
と冬花が相槌を打つ
「アクアに向かって よーそろー」
と時雨は笑顔で右手を高く突き上げた。
「よーそろー」
と艦橋で一斉にみんなも笑顔で右手を突き上げながら唱和した。
ELEWはアクアに向かって出発した。
(米1)指名打方
特定の砲をその都度指名して射撃する打方
(米2)一斉打方
全砲を一斉に発射する打方
この話では前方のみでも一斉打方としています。旧海軍と海自ではニュアンスが違うため
このように解釈しています
(米3)交互打方
この艦は三連装砲のため、右中左と交互又は、左右と中を交互に行う打方
最後まで読んで頂きありがとうございます。
交互打方や指名打方など詳しい方からすると少し違うのでは?とあるかもしれません。しかしこの話での定義を最後に書かせてもらいました。
言わば旧海軍と自衛隊の半々みたいなものです。