あの世で生きたいふたり
あの世は、絶対に足を踏み入れてはならない。
親や周りの人にそう言われ続けてきた。
普通に人生を生きていくことは、この世と呼ぶ。
そして、人間の本質からかなり逸脱したあの方法で生きていくことを、あの世と呼ぶ。
生きているのに、死んでいるようなもの。
でも僕は今、あの世を彼女と一緒に選ぼうとしている。
四畳の部屋の真ん中にベッド。
その周りを囲むように棚と小物たちの壁。
一歩も動かずとも、一日を有意義に生きてゆける。
僕たちは、この部屋で最小限の動作で、生きてゆくんだ。
あんなにみんなから敬遠され続けている“あの世”が僕の“この世”になった。
「このカップル、仲良さそうで羨ましいな」
「私もこのくらいイチャイチャしたいな」
ネットを通して勝手に配信されている、この動画の視聴回数は驚異の伸びを見せていた。