初めてのデート ① 【スピンオフ】
「怒ってますか?」
沈黙に耐えきれず、アリスが口を開いた。朝、突然「休め。」と言われ、二人で亜蘭を保育所に送り届けてから、行き先も告げられずに車で高速に乗った。運転中、何も話さず、ラジオだけが流れていた。流れる景色を見ているうちに、行き先はわかった。お台場海浜公園だった。
「……もういいよ。」
二人は人工海岸をぶらぶらしながら話し始めた。
「どうせ始めたんなら、続けてみれば?支障がでない程度に。ついでに亜蘭と一緒に仕事してみたらいいよ。そんなに多くはないんでしょ?」
「…………。」
「この間、お義父さんから言われた。4歳前後に大きな変化が感じられるようになるだろうって。6歳までは様子見たいって答えたけど、教育は子供の権利だからさ……どうしても、ここじゃ無理かなって思える状態だったら、全然知らないところに一人で行かせるよりは、わかる人の所に行く方がいいのかなって。亜蘭が行くって言ったら止められないし。
その時、社会と触れ合う機会を失わないように、どこの国に行っても仕事を続けさせる事って条件出そうかと思って。どの方向に向いても希望進路を妨害しないことは絶対だけどね。」
アリスは下を向いたまま黙ってルカの後ろを歩いていた。
「何か言いたい事ある?」
「いえ、特に何もないですけど。強いて言えば、ごめんなさいとしか。あなたこそ、言いたい事ありませんか?」
聞き返されたルカは足を止めて質問を考えた。
「……男に誘われてついて行った事ある?」
ルカの質問にアリスが笑った。
「実は私、誘われて断った事ないんですよ。」
「!?」
「でも、振られてばかりです。」
「……そうなん?」
「このあと、子供のお迎えがあるんでって言うんですけど……。」
「断ってんじゃん。」
「何でですか?何で子供のお迎えが断り文句になるんですか?子供が一緒に居たらいけないんですか?あなたも断られたと思いますか?」
「……?」
「お迎えの時間は決まってるから行かなくちゃいけないけど、その後なら時間取れますし、子供と一緒なら買い物にも遊びにも行けます。でも、じゃあ一緒に行こうとか、付き合うよって言ってくれる人はいません。あなたは言いませんか?もし、あなただったら、そう言ってくれるだろうになって、いつも思ってたんですけど。」
「そりゃ、言うよ。」
「でしょう?そう言ってくれる人はあなたしか居ないんですよ。私にはあなたしか居ないんだなぁって、そういう時、しみじみ思います。まぁ、私が大切に思うものを大切にしてくれない人との未来なんか私も描けませんけど。」
アリスは海岸線を眺めながら微笑んでいた。
「……じゃあ、結婚したくない理由、ある?」
「あー、それはあります。」
「何?」
「あなたは好きって言わないけど、色んな言葉がわかってきて、もっと色んな好きを聞いていたいなぁって思うと、なんだかもったいなくて。」
ルカにとっては意外な答えだった。
「……そんな事!?」
「そんな事ってなんですか。私にとってはそれが全てです。終わった後のキスだけが頼りだったのよ?じゃあ、聞きますけど、私と子供、どっちかしか取れないとしたら、どっち取りますか?」
「……取れない。」
「それは意外な答えです。私、絶対子供を取ると思ってました。ブランシェも言うの。ルカが大事なのは自分だって。人間なら亜蘭。私達は同じもので出来ているからって。」
「そういう理由じゃない。今は亜蘭をアリスから引き離す事が出来ないだろ。」
ルカの言葉にアリスは嬉しそうな顔をした。
「私、あなたのそういう所が大好きなんです。知ってますか?私の事。子供が誰のものかって考えてみたんですけど、亜蘭、誰の子供だと思いますか?」




