表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/63

鏡の国のアリス⑫ ラブレター


 10月22日 火曜日


「装置作んの?何の装置?」


 昼食を摂りながら回路図を眺めるルカに、ミキは後ろから声を掛けた。


「勉強。バイトも兼ねて、少し向こうの……お義父さんと一緒に仕事してみようかと思って。」


「殊勝だな!」


「ちょっと見て貰いたいんだけど、今いい?」


「どれ?」


 向かいに座ったミキにルカは、あらかたまとまった図面を取り出して見せた。


「ここさぁ?複雑過ぎて作れないって言われちゃったんだよね。試作の発注はこっちでするから、加工所に頭下げたんだけど、細かすぎるしこれじゃ強度も足りないんだって。」


「外側に補強するとか?」


「あー……。」


「思いきって全体的に大きくしちゃうとか?」


「うー……。」


「ゾンビか!寝ろよ、少し!」


「んー……。」






 10月26日 水曜日


 ゼミが終わったあと、ルカがミキを呼び止めた。


「ちょっとバイトしない?これ、CADにおとして欲しいんだけど。実寸大以上で一度、書いてみないとイメージわかなくてさ。量が量でやってる時間がないんだ。」


「いいよ。いくら?」


「取り敢えず手持ちで払えるだけ払うけど、お友達価格でいい?」


「急いでるなら取り敢えずボランティアで引き受けるよ。」


「月30入る予定だから、半分でどう?」


「そんだけ貰えるなら、投げられるものは全部投げて寄越して。」


「助かる。あと、誰か動作シミュレーションとかやったことのある人、居ないかなぁ?」


「年積に紹介してもらえば?あいつ、ロボコンでつくば来るってよ。」






「……綺麗。」


「わかる?俺もアートだと思うよ。あいつ、こういう絵はうまいんだ。設計図の美術館があってもいいと思うくらいだよ。一日眺めてても飽きないね。」


 アリスはミキの部屋でルカの書いた図面を眺めていた。


「何でないのかしら?」


「先ず、量が莫大。守秘義務とか、機密だったりして、公開出来ないのもあるけど、それはあっちゃんのアスキーアートと同じ。特許なんかで公開されてるものもあるけど、調べないと見れない。つうか、でけぇな。これじゃヤマネコだよ。」


「考えてるスペックを満たすセンサーとモーターの数も考えると、それくらいにはなってしまいそうよ。新たに開発してる時間はないから、SSDも市販品を入れるつもりみたい。これでも小さい方だわ。メインクーンくらいかしら。」


 アリスは両腕を広げて大きさをイメージしてみた。


「そっちは順調?」


「手は動かしてるけど、気が進まないわ。他人に掻き回されたコントロールを修正するなんて。」


 憂鬱そうに作業に戻ったアリスを見て、ミキが鼻で笑った。


「ルカの手紙は文字で書いてはいないけど、これもラブレターだと思うよ。あっちゃんが読むわけじゃないけどね。あっちゃんが辛いのは、今書いてるのが始末書か何かだからじゃないの?」


「どういうこと?」


「賢者の贈り物って知ってる?金がない若い夫婦の話だ。お互いの大切にしているものを大事に考えるあまり、お互いが大切なものを売り払ってしまうんだ。男性は時計を売った金で髪飾りを買って、女性は髪の毛を売って時計のチェーンを買う。お互いのプレゼントは何の意味もなさなくなったけど、二人はとてもお互いを思い合っていたことがわかるよね。」


「……ホワイトクイーンとレッドクイーンは記憶を共有してるわ。どこで分離させるか悩むわね…。こういう場合はコピーかしら?」


 アリスはAIの海馬となっているサーバーを参照していた。


「バイナリ?」


「3D動画になって保存される仕組みよ。」


 動画を再生しようとしたアリスをミキが止めた。


「よせ!見ていい事無い。責任という意味では君にも見る権利はあるけど……。」


「……何があったの?」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=675247922&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ