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君と僕の間には④ ただそばに居たかった


 松見公園駐車場に車を停めて、ミキが言う。


「そんなに悩むなら、いっそのこと乗り換える?俺は全然気にしない。腹違いの妹も居るし。」


 ミキが午前中の出来事をルカにLINEで送ってから、アリスに妹の画像を見せた。


「雪見ちゃん。よくなついて可愛いんだけど、10歳しか違わない義理の母親がお母さん面してくんのが、正直、気持ち悪いんだよ。割りきって考えてくれればいいだけの事なのにさ。」


 ごねるミキをアリスがなだめる番となった。


「家、出た方がいいんじゃないですか?」


「ルカにもそう言われたよ。早く家出ろって。そう言われても、そこは俺の自由じゃん?俺の家だし。多分、雪見がすぐ俺の部屋に来るの気に入らないんだよ。何してるの?って変態見るような目。遊んでくれる人の所に来ちゃうだけだし、恋人より長い付き合いになるんだから邪険になんかしないよ、フツー。ガキじゃあるまいし。


後から来たくせに何でもかんでも手の内に入れようってのが気に入らないだけ。進学より早く就職して独立した方が良いとか心配するていで出てって欲しい雰囲気ダダ漏れだけど俺、長男だよ?後々、お前の面倒みるの俺と雪見だっつの。全然自分の立場分かってないんだよねー。あっちゃんも気に入らないなら、ちょっと揺さぶってみる?帰らないって手もあるよ。」


「…………。」


 ミキは黙ったアリスに揺さぶりをかけようとした。


「ルカの前でキスして愛してるって言ってくれないと帰さないって言ったら?」


「?」


 アリスはミキにキスをして笑った。あまりの事にミキの方が驚きを隠せなかった。


「それはあんまり難しい事じゃないの。愛してるわ。あなたが幸せじゃないと、ルカも幸せじゃないと思うから。」


 アリスは遠くを見つめながらぼやいた。


「でも、彼はそういう言葉を避けてる気がするの。何を言わせても無意味って言われそう。それは私もわかってはいるの。でも……こうなる事を彼は望んだ事かしら?」


「……つまんない事で悩んでると思うよ。将来、有望視されていたのはあっちゃんだって同じだ。奴がそうと決めたら、誰も何も言えないよ。何が問題なのか、全然わからないね。学生結婚してるカップルだってざらにいるよ。」


「……彼には別の人生があったんじゃないかしら……。」


 アリスの言葉はわからなくもなかったが、ミキが聞いてどうなるものでもなかった。


「それを考えてもしょうがないよ。つうか、今の奴は無敵だよ?あっちゃんとの関係示せる可能性あるのあいつだけだし。余程、何も考えてない命知らずか、殺される覚悟がない限り、誰も手が出せない。あっちゃんがNO(ノー)と言わない限りはね。その権利は君が握ってる。あっちゃんはどうしたいの?」


「……彼にとって何の利用価値もないのに、私にそんな権利があるはずないじゃない。」


「あるんだな、これが。あっちゃんが警察に駆け込めば、あいつ捕まるよ。本当かどうか試してみる?」


「私が原因で彼をおびやかす事があったら、今の私が最大の敵なんじゃないかしら。」


「居るか居ないか確認のしようもないままで居る方が困ると思うけど。いきなり居なくなって何十年も経ってから、突然、出てこられるほど迷惑な話もないよ。」


「……迷惑かける気なんて無かったわ。二度と会えなくても面影を探しながら抱きしめる度に幸せな気持ちになれると思ったの。今は触れ合おうとさえしないわ。何か……私だけ間違えたみたい……。」


 ミキのケータイにルカから通話が掛かってきた。


「奴、帰ってきたな。切ってやるか。」


 ミキはコールを切ってから、ケータイをドライブモードに切り替えた。


「仕返しはこのくらいにして、胃に穴があくまえに帰ってあげてよ。あいつ、英語はからっきしだから、言いにくい事は英語で言えばいいと思うよ。」


 ミキはアパートの前に車を付け、アリスを降ろすと、ルカの部屋の玄関が開いたのを確認して、車を出した。





「返還謝礼10万ドル……100万ドルなら考えてもいいけど、こっちも退路断たれてんだよ。向こうはそれでもいいのか……ややこしいな。」


 ミキは信号待ちの間、頻繁に届く英文メールを開いて、かいつまんで読んだ。


「威圧、懐柔、暫定候補者に父親、金!痛くもねぇ腹、探るような真似までしやがって……人格否定は反則だって学校で習ってねーのかよ。


俺にこれだけ来るって事は、相当食らってるだろ、あいつ……子供の気まぐれに付き合って人生狂わす気かってどの口が言うかね。その子供、利用しようとした癖に。」


 アームレストに肘をついて頭を抱えるように大きくため息をつくと、やり込められないもどかしさを口にした。


「わからなくもないけどさぁ。俺が言うわけにもいかないんだよねー。」


 ミキはルカにメッセージを打とうとしたが、信号が変わって小さく舌打ちしながら画面を閉じ、ケータイを助手席に投げると、そのまま車を走らせた。





「ただいま帰りました。」


 仏頂面のアリスが帰宅し、ルカが出迎えた。


「お帰り……ちょっと話あんだけど……。」




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