02-003「子爵家の子女だが掃除で扱き使われる」
料理人が家に来て一月程経った頃である。
マクダクル子爵家の料理長セーラから他にも料理人を増やして欲しいとの要望があり、追加で五名の若い女性がやって来る事になった。
正直、朝から晩まで毎日ずっと食事を作り続けていたら休みも取れない訳で、ローテーションの為には複数人の料理人が必要になるのは当たり前なのである。
勿論それはメイド達にも言える事なのだが、マクダクル子爵家には人間のメイドが居なかったので誰も気が付かなかったのであった。
ではビャッ子ちゃんこと俺、白虎がマクダクル子爵家のメイド事情を話そう。
まず俺。
俺はメイドじゃなくて当主の妹だぞ?
確かに半永久的に働き続ける事が出来るがお断りだし、外聞的にも俺がメイドをやってるのはよろしく無い筈だ。
と、言うこともあって俺は無事メイドからは解放され、今ではお嬢様と呼ばれているんだな。
2日ほど前に普段用のドレス何かもモード登録して、今はそれをメイン着てに活動しているんだが、まあ長いスカートで歩きにくいんだよ。
セリカやカレンに愚痴って見たけど、あいつらって実は地方の弱小とは言え貴族の子女なもんだから、俺の方が我慢が足りないって言われたし、シルビアも長いスカートには慣れてるらしく問題ないと切って捨てられた。
グレイブルですら、「我慢して慣れるしかないよ」と言う始末だし、今日からの修行は精神的に長いスカートに慣れる事かな……
ま、そんな感じで俺はメイド対象外になった。
続いてシルビア。
シルビアは実はレイスって魔物らしく、本来であれば害のある悪霊扱いで除霊されて消される運命なんだが、既に俺の従魔になっていた事もあって普通に人の世で暮らしても良い事になった。
これには色々と大変な事があって、おかげさまで俺は冒険者登録することになったのだが、要するに冒険者の従魔なら仕方ないよね?って事にしたのである。
ただ、冒険者ギルドがテンプレで新人イビリやらライバル意識が高い奴等なんかが引っ切り無しに纏わり付いて来た。
仕方ないのでその都度ちぎって投げていたら、いつの間にか姐御って呼ばれるようになっていて、[ビャッコ・マクダクル]ファンクラブなるものが出来たらしい。
シルビアも俺の従魔だから一緒に冒険者ギルドに行く訳なんだけど、シルビア親衛隊とか言うのも出来ていた。
本当、ファンクラブとかはどうでも良い話んだけど、どういう活動をするつもりなのかは気になる所だ。
そうそう、シルビアは引き続きメイドやってくれるそうだ。
見習いだけど…
それを聞いたグレイブルが俺の専属にしてくれたから気兼ねが要らなくて助かった。
カレンの専属だったら研究目的に色々と体液取られたりと大変だろうし、セリカはセリカで夜間の素行に問題があるからな……
そして最後にフランソワ達の話になるんだが聞いて欲しい!
3号以降のケーキロボ達は「ベルモントシリーズ」と名付けられ、フランソワシリーズから外れたようだが、元々性別も不明なケーキ作成ロボなのでフランソワ達とは別物だったから、それで良いと思う。
それよりもだ。
1号と2号が解体された。
遠慮無く……。
なんと、フランソワシリーズは新型ニンフ素体へと移行する事になり、これに伴いマクダクル子爵家の既存オートマタはパーツ取り用に分解。
素体の変更に合わせて全台の名称体系を一新する事になった。
これまで男性名だった「フランソワ」は執事型のオートマタに付与されるモデルネームとなり、メイドタイプは女性名の「カトリーヌ」へと変更。
ローテーション用も含めて合計13体のカトリーヌが制作されたのだ。
しかも全部ステファニータイプだぞ?
全台「え? そんな所まで?」機能付きだ。
俺の存在意義を消すつもりか!?
な~んてな。
言ってみただけ~。
実は新型のカトリーヌ達って超カワイイ。
見た目? 見た目は劇的に改善された。
俺の知識……いや、ウィッキーさんの知識を元に、この世界の素材から人工皮膚を作ってみたら大成功。
そのおかげで、新型のカトリーヌはまるで人と変わらない見た目をしているんだが、それだけじゃない。
ステファニータイプと言う位だから、スーパータキオンエンジン(STE)やフレキシブルアーマー(FA)が簡易版ながら採用されていて、ほぼ無限のエネルギーと自在な外装変更が可能となっている。
ただし、大脳型制御システムはコストの問題で廃止。
代わりに「魔導波連動中央管理方式」を採用する事になった。
これは地下に大型魔道演算装置を置き、それが魔導波を使って全てのカトリーヌ達を制御する方法である。
要するにカトリーヌ達は地下サーバーの端末って事だな。
それでカトリーヌの何がカワイイかと言うと、皆で俺を慕ってくれるところだろう。
そう、何の取り柄もなかった俺をだ。
多分グレイブル達がそういうふうに作ってくれたんだろうけどな……。
あ! ちなみにカトリーヌ達の造形はセリカとカレン、シルビアを参考に新規作成したらしい。
体型はランダムで決めた物をベースにしていて、顔や身長、体型なんかは皆同じだ。
で……だ。
何で新型がそんなに増えたのかというと、予算が入ったから。
簡単な話である。
何故かケーキの"店"が馬鹿売れらしいのだ。
ケーキも売れてるが、店自体が売れているのだそうだ。
俺がフランチャイズとかそういった仕組みをグレイブル達に教えたせいかも知れないけど、今、マクダクル子爵領では爆発的な勢いでケーキ屋が増えていて、その全てが家のフランチャイズと言う始末だ。
独占禁止法とか無くてよかったよな、ほんと。
金が手に入ったグレイブル達は、まず俺の代わりに新たなステファニータイプのオートマタを作った。
これは開発費を出して貰っていたカットマス伯爵家に献上するモノであり、プロトタイプモデルの『カトリーヌZERO』を献上した。
ZEROは概ね"カトリーヌ"と同じだが、大脳型制御システムを搭載しており自立稼働が可能となっている。
要するに本来のステファニータイプという訳だ。
カットマス伯爵はオートマタ至上これまでにない素晴らしい出来映えのカトリーヌZEROに大変感激し、追加の開発費をと言って来たのだが、これはグレイブル達がお断りしたとの事だった。
その代わりに何体かのメイド型オートマタを受注したようで、カトリーヌZEROの簡易版を大量に生産するようである。
ちなみに外販用の自立稼働型メイドには「ロクサーヌ」、魔導波連動中央管理型メイドは「シャルロット」という別のモデルネームが付与される事になった。
カトリーヌZEROからの変更点は、スーパータキオンエンジンを単発のマイクロタキオンエンジンに変更。
フレキシブルアーマーの記録スロットを2つに減らし頭髪は形状と色を固定、その他素材を安価な物に置き換えたりとコストを削減する方向での変更となるようだ。
これらの変更でロクサーヌシリーズの性能はかなり低下するが、それでも人間の男性程度の力はあるのでメイドとして働く分には問題ない。
逆に本来のステファニータイプ設計だと兵器レベルの性能があるため、ある意味自主規制と言った部分も含まれている。
尚、基本性能に関しては以下の通り。
カトリーヌZERO >> カトリーヌ >>>>>>>>>> ロクサーヌ >> シャルロット
と言った感じで、戦闘力もこれに倣う。
え? 俺の戦闘力?
グレイブル曰く、俺はステファニータイプ設計じゃ超えられない壁の向こう側に居るとの事だ。
なんでも各部制御効率とエネルギー変換効率が段違いであり、人工筋肉や伝達神経も全くの別素材になっていて、現時点ではこの世界の技術では再現不可能なんだとか。
ま、この世界最高のオートマタ技術と、元の世界の西暦3000年の最新テクノロジーが融合した結果が俺って所なんだろうけど、俺が自分の力でそうなった訳じゃないから自慢にはならないな。
現在のステファニータイプオートマタを纏めるとこうなる。
●プロトタイプモデル
・独立稼働型
ビャッ子(俺)
カトリーヌZERO(カットマス伯爵専用)
ベルモント1~X号(ケーキ店専用)
フランソワ1~X号(現状対象無し)
・魔導波連動中央管理型
カトリーヌ1~13号(マクダクル子爵家メイド)
●外販向け汎用モデル
・独立稼働型
ロクサーヌ1~X号(鋭意生産中)
・魔導波連動中央管理型
シャルロット1~X号(現状受注無し)
うん。
是非とも男性型の新型フランソワを作って欲しいよね?
執事じゃなくて小姓でいいと思うんだけど。
「ビャッ子ちゃん! 何ボーッとしてるんですか!? 早くしないと掃除が終わらないじゃないですか~」
ヌッと横の壁から半透明の上半身だけを生やした状態のシルビアに怒られた。
俺達が一体何をしているのかと聞かれれば掃除だ。
そしてどこを掃除しているのかと言うのであれば、住み込み用の別館だな。
料理人が増えた事で住み込みの人達はこちらで暮らす事になるんだが、何せ暫く使ってなかったらしくて掃除しないと引き渡せないんだよ。
それで手分けして掃除してるんだけど、カトリーヌ達の掃除の知識がグレイブルとセリカとカレンの知識なもんだから、全然捗らない事が分かった。
そこでシルビアと俺が手本を見せて学習させようって話になって、カトリーヌ達をシルビアに押し付けてボーッと考え事をして今に至る。
「なぁ、シルビア」
中途半端に部屋にはみ出しているシルビアに声を掛けると、シルビアは半透明のままこちらの部屋にやって来た。
もちろん壁からだ。
実はシルビアが半透明になるのは久しぶりで、マクダクル子爵家に来てからはメイド見習いとしての実務が多いので常に実体化したままだった。
久々に見たシルビアの半透明姿に、俺はあることを思い出したのだ。
「何ですか? 早く手伝って下さいよ~」
「あのな? お前の半透明の状態について言いたい事がある」
「はは~ん。もしかして羨ましいんですか? 便利ですよ~、この状態なら飛べますしね!」
(いや……そこじゃなくてな……)
「あ、飛べるのは確かに羨ましいんだが、そう言う話じゃなくてな……。ちょっと勿体ないから言うか迷ったんだけどさ……」
「勿体ない? 何が勿体ないんですか? 早く教えてくださいよ~」
何か良いことが聞けるのかと、シルビアは目をキラキラさせてこちらを見ている。
「いや……あのな? お前、全身全てを半透明にしてるだろ?」
「当たり前じゃないですか。それがどうしたんです?」
「あ、うん。半透明ってさ、重ねると後ろの半透明の物も見えるって知ってるか?」
「え? そうなんですか?」
それを聞いたシルビアは半透明のエプロンの胸辺りに、これまた半透明の手をいれてグーパーして真偽を確認する。
「本当ですね! 手が見えます!」
「だろ? でな……お前のスカートは透けてる訳だ……」
「はい。透けてますね? ……まさか!」
そのまさかである。
普通は気が付かない事なのだが、ビャッ子は気が付いてしまったのだ。
これは義体とステファニーの高性能な視覚機能と、ビャッ子本人のちょっとエロ目線な観察眼のおかげである。
「良ーく見ないと気が付かないかも知れないけど、良く見るとな? 全身丸見え……」
「ギャー-! スケベ! へへ、へ、変態!!」
胸や股を手で必死に隠しているようだが、半透明の手では意味がない。
「いや……お前が勝手に見せてる以上、変態はお前だが……まあ良いから実体化しろよ?」
俺がそう言うなり、対処法にハッと気が付いたシルビアが一瞬で実体化する。
「な、何でもっと早く教えてくれないんですか!」
「分かっててやってるなら余計なお世話かも知れないだろ。それに見れなくなるのも勿体ないし……」
「私は露出狂じゃありません!! それに私のを見たってしょうが無いじゃないですか!?」
「しょうが無くもないぞ? 少なくとも俺はだけど……」
「……」
暫く黙って俺をジッと見ていたシルビアだったが、やがて「はぁ……」と溜め息をつき、両手を持ち上げてヤレヤレとポーズをとった。
「ビャッ子ちゃんは15歳の煩悩溢れるドーテーの男の子ですし、私のような貧相な身体にも興味があるのは仕方ないですよね〜ドーテーですから…」
「おい、そこを2回繰り返すな! しょうが無いだろ? 死にかけてこんな身体になったし……それに元々モテないからな……」
(自分の不細工さは親父を見てるから十分に理解してる。何で親父が母さんみたいな超絶美女と結婚出来たのかと……あ、母さん馬鹿だもんな。そう言う縁もあるんだろう)
「な~に落ち込んでるんですか?」
そう言ってシルビアがガバッと後ろから抱き付いてきた。
顔の横から女の子の良い匂いがする。
「シルビアはどうしたいんだ?」
漠然な質問をしてしまったと後悔したが、シルビアはその質問に答えてくれた。
「……こうやってずっと……楽しく過ごしたいです……」
本当は「俺も」と答えたかったが、俺の口から出た言葉は別の物だった。
「でも、俺の本当の姿は見えてるんだろ? 元の世界に戻ったら、俺はまた不細工で何も出来ない人間に戻ってしまうのかも知れないだろ?」
そんな返答しか返せなかった俺を、シルビアは強くギュッと抱きしめてくれた。
「ほんと、男の子は馬鹿ですよね。不細工とか貧乏とか、私はそんな事はどうでも良いんです……ただ一緒に居たい人と一緒に居れるように頑張りたいだけなんですよ? だから……」
本当にその言葉がありがたかった。
次の台詞までは……。
第009話 チョークスリーパーと波動砲
「だ・か・ら! 早く掃除始めてくださいよ! 真面目にやらないとクビになっちゃうでしょ!?」
抱きついていた腕がいつの間にかチョークスリーパーになっていたが、呼吸しない俺に効果は無い。
「俺がシルビアを教える。シルビアがカトリーヌ達を教えるんだろ? じゃあ今はシルビアがカトリーヌ達を……ぐぇ」
「私はまだビャッ子ちゃんに何も教わってません! 言うなら動いてから言ってください!」
締まる首元を二回タップし、シルビアがチョークスリーパーを外す。
仕方ないので俺は「ステファニーモード」に切り替えて、今居る部屋の掃除を始めた。
意識はステファニーモードなんだが、知識はウィッキーさんモードだから掃除の知識も完璧だ。
まさに完璧な効率の掃除にシルビアが「おお」と感心する。
しかし、肝心のカトリーヌ達が誰も見ていなかった……とんだ無駄働きだった。
慌ててシルビアが来た部屋の方へ行ってみると、全台直立不動の姿勢で待機していた。
見た目はまるで人間なんだが、呼吸も身じろぎもしない立ち姿は蝋人形を彷彿させる。
「おい! お前ら何やってんだ!?」
俺がプチオコな声を出すと、カトリーヌ達が一斉にクルリと首だけをこちらに向けた。
(怖っ!)
「シルビアさんに待てと命令を受けましたので待機しておりました」×13
「……誰か一人だけ喋れば充分だぞ……」
「畏まりました。代表端末番号を指定してください。端末毎の特徴を1号機から……」×13
「ストーップ! 8号で!」
(危なかった……13台分の特徴説明をされる所だったな)
指定された8号がカトリーヌ達の間から抜け出し、一番前に移動して俺に向かって畏まった。
「カトリーヌ8号です。我々カトリーヌシリーズの製造コンセプト、及び8号特有の……」
「あーっ! 要らない! 説明要らないからな!?」
「畏まりました。御用件をお申し付けください」
「俺が掃除の手本を見せるから、誰か付いて来て手順を覚えてくれ。一人だけでいいからな? どうせ情報共有してるし」
「それでは随伴を希望する端末番号……」
「お前が来い……」
「随伴を承りました。私を除くカトリーヌシリーズは現状を維持します」
このやり取りを見れば分かるだろうが、カトリーヌ達はまだ融通が利かないので扱うのは大変なのだ。
例として8号の胸をつついてみる。
プニプニ。
「乳頭先端までの距離、凡そ18ミリメートルです。乳輪外周部に接触、性的刺激効率は約30%と予想されます」
(まさか!? てっきり無視されると思ったんだが……しかし誰だ? こんなくだらない回答考えたの……ってきっとセリカだろうけどな)
残念ながらこの機能を付けたのはカレンであった。
(乳輪の外側で30%か、どういうポイントでやってんだ? これで局部ビーンズを直撃なら波動砲みたいに120%とかになるのか?)
まんまとカレンの仕掛けたくだらない機能に引っ掛かったビャッ子は、早速試して見ようと8号のスカートへ手を伸ばす。
ガシッ!
ビャッ子の伸ばした手を誰かが掴んだ。
(なっ!? 誰だ!)
シルビアだった。
「何やろうとしてたんですか、この変態!! 良いから早く掃除に戻ってください! カトリーヌ……ええっと……」
「8号です。シルビアさん」
「そ、そう、8号もビャッ子ちゃんに好き勝手やらせちゃ駄目です!」
「いや、これは俺が悪いし、8号は何も悪くないぞ?」
「当たり前ですっ! 全部ビャッ子ちゃんが悪いに決まってるじゃないですか!」
この後、5分程ガミガミと怒られ、次の部屋に移動して8号に掃除を教えた。
8号はしっかりとコツが掴めたようで、無事他のカトリーヌ達への情報連携も完了。
残りの部屋はカトリーヌ達だけで掃除を終わらせる事が出来たのであった。
エロ…くはなりませんでした!




